教室では、手を挙げられなかった。 不登校の子が、大人だらけの舞台でプレゼンした3日間。
2026年9月、NIJINアカデミーの子どもたちが、東北最大級のスタートアップイベントに出展しました。ブースに立ったのは、大人ではありません。学校ではなかなか手を挙げられなかった、不登校を経験した子どもたち自身です。
「宮城の不登校の子に、届けたい」と、その子は自分から言った
主人公は、うをまん小5。学校では、みんなと一緒に行動することにストレスを感じやすく、イライラしてしまうことも多かった子です。保護者の方も「自分から”これをやりたい”と言うタイプではなかった」と話していました。
その子が、今回はちがいました。仙台のある事実——宮城県は、中学校の不登校の割合が全国でもっとも高い——を知って、自分から課題意識を持ったのです。そして、こう言いました。
「自分はNIJINアカデミーに救われた。だから、不登校がいちばん多い宮城の子にも知ってほしい」
プレゼンの構成も、AIを使った情報集めも、すべて自分で。仙台の不登校問題を調べるうちに、「数」よりも「地域差」——地方には通えるフリースクールが少ないという課題に気づきます。そこから、うをまんが出した答えはユニークでした。
「働いている人の子どもが不登校になったら、親は仕事を辞めないといけなくなる。だから、会社の中にフリースクールがあったらいいと思いました」
発表を聞いた大人たちとの対話は、さらにアイデアを広げていきます。「電車の中にフリースクールがあってもいい」「大学と一緒に、教育そのものを研究する教室があってもいい」——子どもたち自身が、教育を考える。そんな未来まで、うをまんは自分の言葉で描いてみせました。
うまく話せるかどうか以前に、自分から手を挙げて「やる」と決めたこと。それが、この子にとっての、いちばん大きな一歩でした。
うをまんのプレゼン全編を見る(YouTube)
これは「遊び」ではなく、学校では出会えない「学び」でした
ブースに立った子どもたちは、来場する起業家や企業の担当者に、自分の言葉で語りかけました。やがて、こんな声が会場に広がっていきます。
「プレゼンが上手すぎる小中学生がいる」
あっという間に噂は会場中に回り、たくさんの大人が足を止めて、子どもたちの話を聞きに来てくれました。チラシを配り、呼び込みをし、名刺を交換する。その全部を、子どもたち自身がやりきります。
「勉強が嫌い」な子が、いちばん夢中になっていた
前日、3時間かけてプレゼンを作りこんだのはむーせい(小4)。自分では「勉強は嫌い」と言う子です。けれど、伝えたいことを考え、構成を練り、相手の気持ちを想像する——この一連の営みは、まぎれもなく新しい「学び」の形でした。学びは、決して教科の中だけにあるのではありません。
発表の直前、むーせいは不安そうでした。「まだ人、いないじゃん」。一番手で話すことに、ドキドキしていたのです。それでも自分で人を集め、聞いてくれる大人が増えていくと、その顔はみるみる得意げになっていきました。終わったあと、こう言ったそうです。「自分、営業うまいのかも」。
一人ひとり、ちがう輝き方をした
子どもたちの挑戦は、それぞれまったくちがう形をしていました。
「不登校支援なんて、いらない」。そんな一言から始まる、圧倒的なインパクトのプレゼンで会場を驚かせました。支援される側で終わるのではなく、自分で選び、自分で立つ——そんな強い意志のこもった発表でした。
りゅうとのプレゼンを見る
聞いてほしい相手に、あらかじめ手紙を書き、名刺とともに手渡す。個別アプローチの”営業の鉄則”を、小5にして実践する強者です。その手紙を受け取ったJR東日本スタートアップの社長が実際にブースを訪れ、さらに別の方まで連れてきてくださいました。プレゼンでは、イベント名「DATERISE!」の由来(仙台藩主・伊達政宗にちなんだ”伊達ライズ”)まで解説し、地元の歴史と結びつけて語っていました。
たまごずしのプレゼンを見る
「宮城だけ、不登校の数が飛び出して高い」——グラフを示しながら、自分の経験をもとに「本人が悪いわけじゃない、受け皿を作ればいい」と分析。その先で「日本全国の学校を、ぜんぶリアル校にしたい」「日本をNIJINアカデミーで変えるんだ」と、大きなビジョンまで自分の言葉に。大好きな鉄道の知識も生かし、宮城にリアル校を作るアイデアを具体的に語りました。
しゅんしゅんのプレゼンを見る
得意な子も、初めての子も、同じ舞台で、それぞれのペースで挑戦しました。中には、2025年のICC(大規模カンファレンス)に参加した経験を持つ子もいれば、この日が初めての大舞台だった子もいます。スタート地点はちがっても、一人ひとりが自分の一歩を踏み出しました。
「具体」と「抽象」を、行き来していた
手紙で大人を動かし、地元の歴史から発表のつかみを作り、自分の体験から「学び方」そのものを言葉にする。子どもたちがやっていたのは、目の前の具体的な体験から本質的な考えを引き出し、それをまた新しい行動に落とし込む——という行き来でした。
これは、NIJINアカデミーが教育の土台に置いている学びの形そのものです。教室で教わるのではなく、社会という本物の舞台で、子どもたちは自然にそれをやってのけていました。そしてこの行き来を通じて、その子と「本来の自分」、その子と「学び」、その子と「社会」が、少しずつ結び直されていきます。
きれいなプレゼンではなかった子も、たくさんいます。それでも「思いを、自分の言葉に変える」。その言語化の力こそ、いちばんの学びでした。― 引率スタッフ
大人が思っている以上に、子どもは自分で決めればちゃんとできる。だからこそ、大人が手を出しすぎないことも、同じくらい大切なのだと、この3日間があらためて教えてくれました。
大人たちも、子どもから学んでいた
子どもたちの発表を聞いた大人からは、こんな声が寄せられました。
「選択肢はあっていい、と頭では思っていた。でも実際に子どもたちの発表を聞くと、”こういう学び方が合う子がいる”と本当に実感した。企業の力で、何かできるかもしれない」
3日目には、子どもたち自身が主催するワークショップも開きました。JR東日本情報システムの方々が東京・秋田・仙台から駆けつけ、宮城の中学生や東北の大学生・大学院生とともに「仙台のこれから」を語り合いました。子どもたちのアイデアを生かしながら、みんなで考えたことを、最後はAIで1枚の絵にまとめあげました。
「子どもたちから、刺激を受けました。企業として何ができるかはこれから探っていきたい」― 参加企業の方より
もしかしたら、あなたのお子さんも。
集団行動が苦手だった子が、自分から手を挙げた。勉強が嫌いだった子が、夢中でプレゼンを作った。2泊3日、みんなと過ごせるか不安だった子が、自分のことは自分でやりきった。
学校という一つのものさしでは測りきれなかった力が、社会という舞台では、こんなにも輝く。お子さんに合う学びの形は、教室の中だけにあるとは限りません。
NIJINアカデミーは、オンラインとリアルを組み合わせ、一人ひとりのペースで「好き」や「得意」を社会につなげていく学びの場です。まずは、どんな場所なのか知ることからはじめてみませんか。

