不登校の子にかける言葉5例|避けたいNGワードと言い換え

不登校の子どもへの声かけは、たった一言で子どもの気持ちが軽くなることも、逆に深く傷つけてしまうこともあります。良かれと思ったひと言が、子どもにはプレッシャーになっていた——ということも少なくありません。この記事では、言ってはいけないNGワードと、子どもが安心できる声かけを、場面別のフレーズ集つきで紹介します。今日から使える言い換えを、ぜひ持ち帰ってください。声かけに「正解」はありませんが、子どもの気持ちを尊重する基本を知っておくだけで、迷ったときの支えになります。完璧を目指さず、できるところから少しずつ試してみてください。

朝、玄関で外を見る子どものイラスト(水彩)
ひとりで抱え込まず、いっしょに一歩ずつ。

この記事の結論

不登校の子への声かけで大切なのは、登校を促すことではなく安心を渡すことです。「なんで行けないの」「みんな行ってる」といった言葉は避け、「話してくれてありがとう」「一緒に考えよう」と、存在そのものを認める言葉に置き換えていきましょう。混乱期・休養期など回復の段階によって合う言葉は変わります。この記事では、NGワードの言い換え、場面別のフレーズ集、段階ごとの声かけ表を紹介します。

声かけが子どもに与える影響

不登校の子どもは、「学校に行けない自分はダメだ」と自分を責めていることが多くあります。文部科学省の調査でも、不登校のきっかけとして「不安・抑うつ」「やる気が出ない等」が上位に挙がっています。そんな状態の子に、励ましのつもりの言葉が「もっと頑張れ」と聞こえてしまうと、さらに追い込んでしまうのです。声かけの目的は「登校させること」ではなく、「あなたは大切」と伝えて安心を渡すことだと考えましょう。

出典:文部科学省「令和6年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果」文部科学省

言ってはいけないNGワード

【図解1】NGワード → 言い換え 比較表|同じ意図でも受け取り方がここまで変わる

つい言ってしまう言葉子どもに届いている意味言い換え
「なんで行けないの?」責められている。理由を言えない自分が悪い「今、体はどんな感じ?」(気持ちより先に体を聞く)
「みんな行ってるよ」自分だけができていない「あなたのペースで決めていいよ」
「明日は行けるよね?」明日も失敗することが決まっている「明日のことは、今日の夜に一緒に決めよう」
「甘えてるだけでしょ」この人には話せない「そう感じるくらい、しんどかったんだね」
「行けば楽しいから」この人は分かってくれない「行っても行かなくても、ごはんは用意してあるからね」
「将来どうするの?」今この瞬間も否定されている「今日をどう過ごすかだけ考えよう」
NGワードなぜ避けたいか
「なんで行けないの?」理由を説明できない子を追い詰め、責められていると感じさせる
「みんな行ってるよ」比較され、「自分だけおかしい」と孤立感を強める
「甘えてるだけ」本人のつらさを否定し、SOSを閉じさせてしまう
「行かないと将来困るよ」不安をあおるだけで、今のしんどさに寄り添えていない
「いつになったら行けるの?」回復を急かし、プレッシャーになる

共通する落とし穴

NGワードに共通するのは、「登校」をゴールにして、子どもを動かそうとする点です。焦りから出る言葉ほど、子どもには「今の自分ではダメ」というメッセージとして届いてしまいます。

子どもが安心できる声かけ

基本の3フレーズ

  • 「話してくれてありがとう」……打ち明けてくれたこと自体を認める
  • 「あなたが元気でいてくれるのが一番」……登校より存在を大切に思っていると伝える
  • 「一緒に考えよう」……ひとりじゃないと感じてもらう
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場面別・声かけフレーズ集

【図解2】場面別 声かけ早見表|その場で何を言うか・何を言わないか

場面まず言う一言言わない方がいいこと
朝、玄関で止まっている「今日はここまででいいよ」「あと5分だけ頑張ってみたら?」
布団から出てこない「起きられたら教えてね。朝ごはん置いとくね」布団をはがす/カーテンを開けて急かす
家で元気がない「何もしない日があってもいいよ」「暇なら勉強でもしたら?」
自分を責めている「そう思わせちゃってごめんね。あなたは悪くないよ」「そんなことないよ」だけで終わらせる
少し元気が戻ってきた「何かやってみたいことある?」「じゃあ明日から学校ね」
ゲームや動画ばかり「それ面白そうだね、どんなの?」時間を取り上げる/取り引きの材料にする

朝、行き渋っているとき

「今日はしんどそうだね。無理しなくていいよ」「どうしたいか、一緒に決めよう」。追い立てず、選択肢を一緒に探します。

家で元気がないとき

「そばにいるからね」「話したくなったらいつでも聞くよ」。無理に話させず、安心できる距離で見守ります。

本人が自分を責めているとき

「行けないのはあなたのせいじゃないよ」「休むことも大事なことだよ」。自己否定をやわらげ、休養を肯定します。

少し元気が戻ってきたとき

「あなたのペースで大丈夫」「やってみたいことがあったら教えてね」。回復を急かさず、本人の意欲を尊重します。

ポイント:沈黙も立派な声かけ

うまい言葉が見つからないときは、無理に話さなくても大丈夫。隣で一緒にご飯を食べる、好きなことを一緒にする——そんな「言葉のない時間」も、子どもには「受け入れられている」という安心として届きます。

回復の段階に合わせて声かけを変える

【図解3】回復の段階別 ステップ表|今どこにいるか・何を言うか

段階子どもの様子この時期の声かけしてはいけないこと
①混乱期登校を強く拒む/腹痛・頭痛/感情が激しく揺れる「休んでいいよ」だけを伝える原因を問い詰める
②休養期一日じゅう家にいる/昼夜が逆転しがち生活の話だけにする(ごはん・睡眠)学校や勉強の話を出す
③回復期家族と話す/好きなことに手が伸びる「やってみたいことある?」と選択肢を出す一気に予定を詰める
④試行期外出できる/短時間なら学校の話も聞ける「どこまでならできそう?」と本人に決めさせるうまくいった日を基準にする
⑤安定期自分で予定を立てられる見守りに戻る。日常の雑談を増やす「もう大丈夫だね」と言い切る

同じ子どもでも、心の状態によって届く言葉は変わります。回復の段階に合わせて、声かけのトーンを調整しましょう。

段階子どもの状態合う声かけ
休養期エネルギー切れ。動けない「今はゆっくり休もう」「そばにいるよ」
安定期家では落ち着いて過ごせる「一緒に◯◯しようか」「どうしたい?」
回復期やりたいことが出てくる「やってみたいことある?」「応援してるよ」

特に注意したいのは、休養期に回復期の声かけをしてしまうことです。まだ動けない子に「何かやってみたら?」と促すと、プレッシャーになります。子どもの今の段階を見極め、焦らず言葉を選びましょう。

学校以外の「居場所」を先に用意しておく

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家族で声かけを「そろえる」大切さ

母親は受け止めているのに、父親や祖父母が「甘やかすな」と正反対の声をかける——これは子どもを混乱させ、板ばさみにしてしまいます。可能な範囲で、家族の間で「今はどう関わるか」の方針を共有しておきましょう。すぐに全員の理解が得られなくても大丈夫です。まずは主に関わる大人が一貫した姿勢を保つだけでも、子どもの安心は大きく変わります。祖父母など離れて暮らす家族には、専門家の資料やこうした記事を共有して、理解の助けにするのも一つの方法です。

言葉が届かない日があってもいい

どんなに丁寧に声をかけても、子どもが反応しない日はあります。それは声かけが間違っているのではなく、まだ言葉を受け取る余裕がないだけのことが多いのです。そんな日は、無理に会話しようとせず、同じ空間で穏やかに過ごすだけで十分。「いつでも味方でいる」という姿勢を持ち続けることが、言葉以上に子どもへ伝わっていきます。声かけは一度きりの魔法ではなく、日々積み重ねる信頼づくりだと考えましょう。

朝のリビングで保護者が子どもに寄り添うイラスト(水彩)
安心できる家庭が、回復の土台になります。

▶ 動画でも解説|タツロー校長(NIJIN代表・星野達郎)

動画:脱・学校のタツロー校長「【場面緘黙】学校で話せない理由を専門家が解説」

2学期の朝、玄関で止まってしまったとき|その場の30秒で何を言うか

夏休みが明けてからの数週間は、一年でいちばん「朝の玄関」が難所になる時期です。前の晩まで「明日は行く」と言っていた子が、当日の朝になって動けなくなる。ここで何を言うかで、その日一日と、次の日の朝が変わります。

朝は交渉の時間ではない

いちばんやってはいけないのは、玄関で説得を始めることです。朝の子どもは、理由を言葉にできる状態にありません。「なんで」「どうして」と聞かれるほど、答えられない自分を責めて固まっていきます。朝にやることは説得ではなく、その日の終わりを決めてあげることだけです。

玄関の30秒でやる3つ:①体を聞く(「頭とお腹、どっちがしんどい?」) ②選択肢を2つだけ出す(「今日は休む? 遅れて行ってみる?」) ③終わりを親が決める(「じゃあ今日はここまでにしよう」)。③を子どもに決めさせると、決められなかったこと自体が翌朝の負担になります。

「行けなかった日」の締めくくり方

休むと決めたあと、家の中の空気が重いままだと、子どもは「休んだせいで家がこうなった」と受け取ります。決めたあとは、いつもどおりに戻す。朝ごはんを出す、洗濯物をたたむ、普通に話しかける。「休んでもこの家は変わらない」と体で分かることが、次に動き出すための土台になります。

夜のうちに決めておくと、朝が楽になる

前の晩に「明日の朝、起きられなかったらどうする?」まで一緒に決めておきます。行く・行かないではなく、行けなかったときの手順を先に決めておくのがコツです。連絡は誰がするか、何時まで待つか、起きられたら何をするか。ここが決まっていると、朝の玄関で言葉を探さずに済みます。

休ませる判断そのものに迷っている方は学校 休ませていいのかを、何も言わなくなった・動かなくなったという段階なら子ども 無気力を、2学期の入り口の全体像は夏休み明け 不登校 対応をあわせてご覧ください。

まとめ

不登校の子への声かけで大切なのは、登校を促すことではなく、安心を渡すことです。「なんで行けないの」「みんな行ってる」といったNGワードは避け、「話してくれてありがとう」「一緒に考えよう」と、存在そのものを認める言葉に置き換えていきましょう。うまく話せない日は、隣にいるだけでも十分です。言葉は、子どもとの信頼をつなぐいちばん身近な支えになります。

よくある質問

Q. 励ましてはいけないのですか?
A. 励まし自体が悪いわけではありません。ただ「頑張れ=今のままではダメ」と伝わることがあります。まず気持ちを受け止めてから、本人が前を向いたタイミングで応援するのが効果的です。
Q. つい責める言葉が出てしまいます。
A. 保護者も不安の中で必死です。責めてしまった日は「さっきは言いすぎた、ごめんね」と伝え直せば十分。完璧でなくても、修復しようとする姿勢が信頼を育てます。
Q. 何を言っても「別に」「うるさい」としか返ってきません。
A. 反応が薄い時期は、言葉を受け取る余裕がないだけのことが多いです。無理に会話を続けず、同じ空間で穏やかに過ごしましょう。「そばにいる」こと自体が声かけになります。
Q. 学校や登校の話題は、いっさい出さないほうがいいですか?
A. 完全にタブーにする必要はありませんが、休養期は避けるのが無難です。本人が学校の話をし始めたら、否定せずに聞く。回復のサインとして受け止め、こちらから急かさないのがポイントです。
Q. 良かれと思った言葉で泣かせてしまいました。
A. 涙は気持ちがゆるんだサインでもあります。責める意図がなかったことを伝え、「つらかったね」と受け止め直せば大丈夫。一度の言葉で関係が壊れることはありません。積み重ねが信頼をつくります。

進級して1週間ほど経ったある朝、涙があふれて止まらなくなった小学6年生の男の子がいました。お母さんはその様子を見て、たまらず「無理して行かなくていい」と伝えたそうです。「行かなきゃ」と本人も頑張ろうとしていた気持ちを、まず受け止めてもらえたことが、次の一歩につながりました。
※本エピソードは、NIJINアカデミー在籍者へのインタビュー記事を基に構成しています。

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