夏休み明け、要注意 ―
ADHDの子どものSOSサインと、
家庭でできること
長期休み明けは、どんな子どもにとっても負担が大きい時期です。特にADHDタイプの子どもは、心も体も想像以上に疲れています。低学年・中学生それぞれのサインと対応のコツ、そしてある保護者の体験談をあわせて紹介します。
ADHDタイプの子どもが学校で疲れやすいのは、怠けではありません。音や光などの刺激を受け取りやすいことや、段取りを考え続ける負担が重なるためです。帰宅後に何もできない、朝起きられないといった様子は、休息が必要だというサインとして受け止めてください。
この記事は、全国から累計1000名を超える子どもたちが通うオルタナティブスクール「NIJINアカデミー」の知見も踏まえて構成しています。夏休み明けの環境変化は、子どもにとって大きな負担になることがあります。
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夏休み明けは要注意 ― 見逃したくないSOSのサイン
2学期がスタートし、元気に登校しているお子さんもいれば、なんとなく元気がないお子さんもいるかもしれません。この時期はどんな子どもにとっても、夏の疲れに加えて休みモードから学校生活へリズムを戻さなければならない、負担の大きい時期です。
ADHDタイプの子どもは、私たちの想像以上に心と体が疲れていることがあります。特に低学年ではなおさらです。以下のような様子に心当たりはないでしょうか。
朝起きにくい・寝つきが悪い
イライラ・ぐずぐずしている
ぼーっとしていることが増えた
低学年のうちは、自分の気持ちを言葉で表現することがまだ難しい時期です。そのため、こどものSOSは言葉ではなく、態度として現れやすいことを知っておくだけでも、見え方が変わってきます。
なぜ疲れやすいのか ― 感覚情報の処理の特性
ADHDタイプの子どもは、脳の発達の特性から、聞くこと・見ることに苦手さを感じていることが多いといわれています。私たちの耳は本来、聞きたい情報にフォーカスして音を拾うことができますが、その「フォーカスする力」が働きにくいと、目や耳から入ってくる情報のほとんどが、同じ強さで脳に届いてしまいます。
つまり、脳が受け取る情報量がとても多く、「今どの情報が大事か」を選び取る処理が追いつかなくなってしまうのです。壁の掲示物、友達がノートをめくる音、運動場からの声――授業に集中しようとしていても、ひとつひとつが気になってしまい、気づけば話についていけなくなっていることがあります。
休み時間も気は抜けません。会話のスピードに追いつけず遊びのルールを聞き逃したり、遊びに集中しすぎて切り上げられなかったりして、友達から注意されることも。ADHDタイプの子どもは感受性が豊かで傷つきやすく、集団になじむことに人一倍の努力が必要なのです。
ここまでの内容を、「見える様子」と「その背景」に分けて整理しました。同じ行動でも、背景を知っていると声のかけ方が変わります。
| 見える様子 | 背景にあること | 家庭での受け止め方 |
|---|---|---|
| 朝起きにくい・寝つきが悪い | 休みモードから、学校の生活リズムへ戻す負担が大きい | 起床・就寝の時間をできるだけ一定にし、朝日を浴びる |
| イライラ・ぐずぐずしている | 目や耳からの情報が同じ強さで届き、選び取る処理が追いつかない | 叱るより先に、おうちを安心して休める場所にする |
| ぼーっとしていることが増えた | 学校で集中し続けた疲れが、家で表に出ている | 「怠け」と決めつけず、休む時間を先に確保する |
| 予定どおりに動けない | 時間の見積もりが苦手(実行機能の特性) | 「やること」と「かける時間」だけを一緒に書き出す |
| 始めたことを中断できない | 行動の切り替えが難しい(実行機能の特性) | アラームやホワイトボードで、切り替えの合図を見える化する |
小学生・中学生の場合 ― 実行機能の弱さと生活リズム
小学生・中学生になると、夏休みのような長期休みは特に生活リズムが乱れやすくなります。背景にあるのは、ADHDの特性の一つである「実行機能の弱さ」です。
実行機能とは、計画を立てる、段取りを考える、行動を起こす、集中を維持する、感情や行動をコントロールするなど、生活の中で自分をマネジメントするために欠かせない脳の機能のことです。
- 時間の見積もりが苦手で、予定通りに動けない
- 行動を切り替えるのが難しく、一度集中したことを中断できない
- やらなければいけないことは理解していても、なかなか行動に移せない
学校がある日は決まったスケジュールがあるため行動を切り替えやすいのですが、自由な時間が多い長期休みは、こうした課題が表面化しやすくなります。「叱る・注意する」だけでは改善しないことが多く、本人自身もそのことに困っていたり、あきらめてしまっていたりすることがあります。
家庭でできること ― 低学年向け3つのケア

低学年のお子さんには、次の3つを意識してみてください。
おうちでリラックスして過ごせるようにする
まずは、おうちが安心できる場所であることが大切です。宿題に取り組みやすいよう道具や時間割をそろえるサポートをしつつ、好きなおやつを一緒に食べたり、寝る前にスキンシップをとったりと、落ち着ける雰囲気づくりを意識してみましょう。
起きる時間と寝る時間を決め、生活リズムを整える
昼間元気に活動するためにも睡眠は重要です。起床・就寝の時間をできるだけ一定にし、朝日をたっぷり浴びる習慣をつけると、脳を活性化させるホルモンが分泌され、目がしっかり覚めやすくなります。
できていることに注目し、褒める
「できていないこと」ではなく「できていること」に目を向けて声をかけます。当たり前に思えることでも、積み重ねが子どもの自信につながります。
「早く着替えなさい」「まだ片方しか脱いでないの」
「おはよう、起きれたね」「もう片足脱いだの?あと片足だね」
家庭でできること ― 小学生・中学生向け2つのコツ
小学生・中学生には、本人の自己決定感を大切にした関わり方が有効です。
①自分で決めることを習慣づける
親が一方的に決めるのではなく、本人が自分のスケジュールを考え、決めるように促します。毎日の活動内容を一緒に見える化し、細かい時間割よりも「この時間帯はこれをやろう」というざっくりした流れにするのがポイントです。開始時刻を決めるのが苦手な場合は、「やること」と「それにかける時間」だけをリストアップするのも一つの方法です。
②リマインダーを活用する
「やろうと思っていたのに忘れてしまった」を減らすために、アラームやスマートフォンのリマインダー機能、カレンダーやホワイトボードなど、視覚的なリマインダーを活用しましょう。行動の切り替えのタイミングを知らせてくれる仕組みがあると、本人の負担が減ります。
それでも解決しないときに大事なこと
どれほど工夫しても、時間に遅れたり予定通りに進まなかったりすることはあるものです。最終的には「遅れそうなときにどう連絡するか」「自分の特性を相手にどう伝えるか」といった、コミュニケーション面のスキルを育てることが大切になります。
「苦手だから仕方ない」と開き直るのではなく、「苦手だから、助けてくれると嬉しい」というスタンスで伝える練習をしてみましょう。「大事な約束のときは、前日に確認の連絡をくれるとすごく助かる」など、相手に合わせた伝え方を一緒に考えていくとよいでしょう。
NIJINアカデミーで自分らしさを取り戻した子どもたちと保護者が、自分の言葉で語ったインタビューです。
小1で不登校に|生徒インタビュー「学校っていう場所が、自分には合ってなかったっぽい」かなでさんが見つけた、爽やかな毎日
小6|生徒インタビュー「苦しいんだったらちゃんとみんなに言う」不登校を経験した僕が、そのままの自分でいられるようになるまで
中1の母|保護者インタビューオンラインスクールを選んで正解だったのか――悩み続けた母が見た、娘の変化
2学期、担任に伝えておきたいこと|ADHDの子の「疲れ」を学校と共有する
2学期のはじめは、学校生活そのものが大きな負担になりやすい時期です。家庭での工夫と同じくらい大切なのが、担任の先生と「この子は何に疲れやすいか」を共有しておくことです。診断の有無にかかわらず、困っている場面と家でうまくいった工夫を具体的に伝えると、学校でも同じ対応をとってもらいやすくなります。
障害者差別解消法の改正により、2024年(令和6年)4月からは私立学校を含む事業者にも合理的配慮の提供が義務づけられました(公立学校はそれ以前から義務)。「特別扱いをお願いする」のではなく、「ほかの子と同じように学ぶための調整を一緒に考える」という伝え方で相談してみてください。
| ステップ | やること | ポイント |
|---|---|---|
| 1. 家で様子を記録する | 朝・昼・夜のどこで疲れが出るかをメモする | 「朝起きにくい」「帰宅後ぼーっとする」など、見えた行動をそのまま書く |
| 2. うまくいった工夫を書き出す | 声かけ、リマインダー、時間の区切り方など | 「できていること」も一緒に伝えると、話が前向きに進みやすい |
| 3. 担任に相談の時間をもらう | 連絡帳や電話で、短い面談をお願いする | 特別支援教育コーディネーターやスクールカウンセラーの同席も相談できる |
| 4. 学校での工夫を一緒に決める | 座席、指示の出し方、休憩のとり方など | しばらく続けたら、合っているかを一緒に振り返る |
| チェック | 伝えること | 伝え方の例 |
|---|---|---|
| □ | 疲れが出やすい時間帯 | 「月曜の朝と、午後の授業のあとに崩れやすいです」 |
| □ | 苦手な刺激 | 「教室のざわざわや、掲示物が気になりやすいです」 |
| □ | 家で効いた声かけ | 「『早く』より『あと片足だね』と伝えると動けます」 |
| □ | 切り替えの合図 | 「次の活動の少し前に、一声かけてもらえると助かります」 |
| □ | 困ったときの伝え方 | 「本人が『助けてほしい』と言えたら、受け止めてもらえると嬉しいです」 |
| □ | 家での様子の変化 | 「帰宅後に長く眠る日が続いています」 |
朝の支度でつまずいているならADHDの行き渋りの記事、音やざわめきがとくにつらそうなら聴覚過敏で学校がつらい子への対応、診断がついていない場合は発達障害グレーゾーンの小学生の記事もあわせて読んでみてください。
保護者の体験談 ― ゲームが「心の基地」になった話

ここまでは日々のケアの工夫を紹介してきましたが、生活リズムの乱れが長期化し、ゲームやインターネットへの没頭が心配になるケースもあります。そんな中、ある保護者の体験談を紹介します。
夫婦とも高校教員というこのご家庭では、子どもが小学校高学年で不登校になったことをきっかけに、生活面で叱ることを一切やめ、見守ることに徹する選択をしました。しかしそれは同時に、ゲームやインターネットに没頭する時間が際限なく伸びていくことも意味していました。
パスワード変更や端末没収など、思いつく対策をあらゆる形で試し、専門家にも数えきれないほど相談しましたが、状況はなかなか変わりませんでした。無理に取り上げれば、不登校初期のような不安定な状態に逆戻りしてしまうかもしれない――その恐怖の方が、ゲームを続けさせることへの不安よりも大きかったといいます。
そんなある日、子どもたちが画面の向こうで、共通のゲームを楽しむ友人と心から笑い合っている姿に気づきます。学校という同一性が求められる空間では見せられなかった、飾らない自分でいられる関係が、そこにはありました。時にはぶつかり合いながらも、自分たちなりに折り合いをつける経験を重ねていたのです。
それから子どもたちは、タイピングやデータ分析、動画編集、プログラミングなどを自ら学び始め、ITスキルは親の理解を超えるほどに。「安心できる居場所」を得たことで、「もっと知りたい」という気持ちが自然と動き出したのだといいます。
この体験談からのポイント
- 一方的で管理的な介入は、子どもの安心を奪い逆効果になることがある
- 子どもが何を楽しんでいるかを知り、それが心の回復や成長の場になっていることを認める
- 生活リズムを整えることは大切だが、まずは「安心できる基地」があることが土台になる
まとめ
- 長期休み明けは、ADHDタイプの子どものSOSサイン(朝起きにくい・イライラ・ぼーっとする)を見逃さないことが大切
- 感覚情報の処理の特性から、学校生活そのものが疲れやすい環境になっていることがある
- 小学生・中学生は「実行機能の弱さ」から、自由な時間が多いほど生活リズムが乱れやすい
- 低学年には「安心できる環境・生活リズム・できていることを褒める」の3つのケアを
- 小学生・中学生には「自分で決める・リマインダーを使う・伝え方を身につける」の後押しを
- どうしても難しいときは、まず「安心できる基地」があることを優先する視点も大切
子どもたちはいつも一生懸命で、ゆっくりでも確実に成長しています。周りと比べず、その子のペースに合わせたケアを続けていきましょう。
「明るくない子どもなんていない。問題児なんてたったの一人もいない」——これは、公立小学校の教員だった星野達郎(タツロー)校長がNIJINアカデミーを設立した原点にある言葉です。学校という枠組みが合わないだけで、本来は人懐っこく、好奇心にあふれた子どもたち。夏休み明けの変化にも、同じことが言えるのかもしれません。
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