聴覚過敏とは、多くの人が気にならない音を、強く・不快に感じてしまう状態です。子どもにも大人にも起こります。12項目のセルフチェック、音がつらくなるしくみ、原因となる病気、受診する診療科と検査、治療の選択肢、そして学校や職場に頼める合理的配慮までを整理しました。

医学的な内容は、日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会の学会誌をはじめとする公開資料にもとづいて記載しています。診断・治療については医療機関にご相談ください。

この記事の結論
聴覚過敏で学校に行けない・学校だけつらいのは、教室のざわめきやチャイムから逃げられず、体力を大きく消耗することが一因と考えられます。下の12項目のセルフチェックは診断ではなく目安です。当てはまる数にかかわらず、気になるときは耳鼻咽喉科や小児科・発達外来などの医師、専門機関に相談してください。
学校では、耳栓・イヤーマフの使用や静かな別室などを合理的配慮として相談できます。中学生は教科ごとに先生が変わるため、困りごとを1枚にまとめて共有すると伝わりやすく、高校入試でも受検上の配慮を申請できる都道府県があります。
聴覚過敏は感覚過敏の一つです。視覚・嗅覚・触覚など感覚全体の過敏さと対処は、こちらで総合的に解説しています → 感覚過敏とは|症状チェックリスト・原因と五感別の対処法
聴覚過敏とは|音の「音量」だけの問題ではない
聴覚過敏とは、多くの人が気にならない音を、強く・不快に感じてしまう状態です。特定の高い音が刺さるように感じたり、複数の音が重なると内容を聞き分けられなくなったりします。
データ|感覚過敏の中でも聴覚の困りごとは多い
当事者調査では、もっとも困る感覚として「聴覚」を挙げる人が約55%と最多でした。自閉スペクトラム症のある子では、感覚処理の問題を抱える割合が高く、なかでも聴覚の過敏さは頻度が高いと報告されています。教室のような「音があふれる環境」が特につらいのは、こうした特性ゆえです。
出典:国立障害者リハビリテーションセンター研究所「発達障害のある人の感覚の問題」国立リハ
「聴覚過敏症」「音過敏症」との違い
調べていると「聴覚過敏」「聴覚過敏症」「音過敏症」「聴覚が敏感」など、いくつもの言い方が出てきます。どれもほぼ同じ状態を指す呼び方です。医学の分野では「聴覚過敏(hyperacusis)」と呼ばれることが多く、「音過敏症」は日常的な言い方として使われます。呼び方が違うだけで、お子さんに起きていることが変わるわけではありません。
発達障害・自閉スペクトラム症との関係
聴覚過敏は、自閉スペクトラム症(ASD)やADHDなど発達特性のあるお子さんに見られやすいことが報告されています。ただし、聴覚過敏があるから発達障害、とは限りません。特性のない子にも起こりますし、HSCと呼ばれる気質のお子さんにも見られます。診断がついているかどうかではなく、いま音でつらくなっているかどうかで対応を考えて差し支えありません。
急に音がつらくなったときは
これまで平気だった音が急につらくなった場合は、耳の不調や体調が関係していることがあります。片耳だけ聞こえ方が変わった、耳鳴りやめまいをともなう、というときは、早めに耳鼻咽喉科で相談してください。学校の環境を整えるのは、そのあとでも間に合います。
大人の聴覚過敏と、子どもの聴覚過敏
大人は「この音が苦手だ」と言葉にできます。けれど子どもは、つらさを言葉にできないまま、行動に出ることがほとんどです。耳をふさぐ、教室から出ていく、朝になると動けない、理由を聞いても「わからない」と答える。これらは、我慢が限界に来ているサインとして現れます。
聴覚過敏セルフチェック
聴覚過敏は、数値で測れる単一の検査があるわけではありません。「どの音が、どの場面で、どれだけ生活を妨げているか」で把握します。子どもにも大人にも当てはまる12項目です。
- ☐ ざわめきの中から、必要な声だけを聞き取るのが難しい
- ☐ チャイム、非常ベル、ドライヤー、掃除機の音がつらい
- ☐ 風船が割れる音や食器の音など、突然の音に体がびくっとする
- ☐ 人の多い場所で過ごしたあと、頭痛や強い疲れが出る
- ☐ 自分の声や呼吸音が大きく響いて聞こえる
- ☐ 特定の音を避けるために、その場所に行けなくなっている
- ☐ 音のせいで集中が切れ、作業や勉強が続かない
- ☐ 耳せんやイヤーマフがないと外出がつらい
- ☐ 耳鳴りやめまい、耳の詰まった感じを伴う
- ☐ 大きな音のあと、耳に痛みを感じる
- ☐ 音がつらいことを周囲に「気にしすぎ」と言われたことがある
- ☐ 音の問題で学校や仕事を休んだことがある
0〜2個|特定の場面でつらさが出るタイプ。その場面の音を減らす工夫から始めます。
3〜6個|生活の複数の場面に影響しています。学校や職場に配慮を相談する段階です。
7個以上|生活の広い範囲が制限されています。医療機関での相談をおすすめします。
このチェックは診断ではなく、つらさの程度をつかむための目安です。聴覚過敏は病名ではなく状態を指す言葉で、確立した診断基準はありません。気になるときは、当てはまる数にかかわらず医師や専門機関に相談してください。
子ども・中学生向け|保護者が見てわかるサイン
子どもは「音がつらい」と言葉にできないことが多いため、保護者や先生が様子から気づくことも大切です。次の表も診断ではなく、相談するときの目安として使ってください。
| 場面 | 見られやすい様子 | メモしておくとよいこと |
|---|---|---|
| 教室・休み時間 | 耳をふさぐ、教室から出ていく、休み時間に一人で静かな所へ行く | どの時間帯・どの音のときか |
| チャイム・放送・避難訓練 | びくっとする、泣く、固まる | 突然の音か、大きさか、高さか |
| 音楽・合唱・運動会 | 行事の前になると休みたがる、練習のあとにぐったりする | 行事の予定と体調の変化 |
| 下校後・朝 | 頭痛や強い疲れ、朝になると動けない、理由を聞いても「わからない」 | 学校のある日とない日の違い |
| 家庭 | 掃除機やドライヤーを嫌がる、人の多い店を避ける | 家では平気で学校だけつらいか |
「聴覚過敏の診断テスト」はあるの?
インターネット上のセルフチェックや診断テストで、聴覚過敏かどうかを決めることはできません。医療機関では、問診に加えて、聴力検査や、どの音量から不快に感じるかを測る検査などを組み合わせて状態を確かめます(くわしくは下の「診断と検査の流れ」)。チェックの結果は、受診や学校への相談のときに「いつ・どの音が・どれくらいつらいか」を伝えるメモとして役立ててください。
聴覚過敏が起こるしくみ
聴覚過敏の仕組みは、まだ完全には解明されていません。現在の考え方では、耳そのものの問題だけでなく、音の大きさを認識する脳の回路と、苦痛を感じる回路の反応が、通常とは異なっていると説明されています。
耳鳴りと混同されやすいのですが、耳鳴りは「実際には鳴っていない音が聞こえる」症状、聴覚過敏は「実際に鳴っている音を耐えがたく感じる」状態です。ただし、脳が音の大きさを認識する仕組みの変化が関わっている点は共通していると考えられており、治療の考え方にも重なりがあります。
聴覚過敏のある人の多くは、聴力検査の結果が正常です。聞こえすぎているのではなく、同じ大きさの音が、脳に届く段階で「うるさい」「痛い」と処理されてしまうことが問題になります。だから「我慢すれば慣れる」ものではありません。
出典:坂田俊文「聴覚過敏の診断と治療」日本耳鼻咽喉科学会会報 2017;120(9):1184-1185
聴覚過敏の原因|耳の病気・発達特性・ストレスの3方向から
聴覚過敏は、それ単独で起こることもあれば、別の病気や状態に伴って現れることもあります。耳鼻咽喉科の総説では、次のような疾患・病態が挙げられています。
- 耳の病気|急性低音障害型感音難聴、蝸牛型メニエール病の活動期、感音難聴、慢性の耳鳴りに伴うもの、補聴器の調整が合っていない場合
- 神経の病気|顔面神経麻痺(耳の中の筋肉が働かず、音を弱める仕組みが落ちる)、多発性硬化症、頭部外傷
- 発達特性|自閉スペクトラム症をはじめとする発達障害。生まれつき音に敏感な場合が多い
- 頭痛・精神面|片頭痛、不安、抑うつ、うつ病、心的外傷後ストレス障害(PTSD)
- その他|ライム病、ウィリアムズ症候群、アジソン病など
出典:坂田俊文「聴覚過敏の診断と治療」日本耳鼻咽喉科学会会報 2017;120(9):1184-1185
以前は平気だった音が短期間で耐えられなくなった、片耳だけがつらい、耳鳴りやめまい・耳の詰まった感じを伴う――こうした場合は、治療できる耳の病気が背景にあることがあります。様子を見ずに耳鼻咽喉科を受診してください。
教室の「つらい音」の正体
- 大勢のざわめき・話し声が重なる音
- チャイム、椅子や机を引きずる音
- 運動会のピストル音、笛、突然の大きな音
- 休み時間や給食時間の、教室全体のがやがや
これらから逃げられない状態が続くと、頭がいっぱいになり、強い疲労や頭痛、めまいにつながることもあります。「うるさいと感じる」だけでなく、体力を根こそぎ奪われるのが聴覚過敏のつらさです。
| 場面 | つらくなりやすい音 | 相談できる工夫の例 |
|---|---|---|
| 授業中 | 椅子や机を引きずる音、話し声が重なる音 | 机や椅子の脚に緩衝材をつける/口頭の指示を板書や筆談でも伝えてもらう |
| チャイム・放送 | 突然鳴る大きな音 | イヤーマフや耳栓の使用を認めてもらう |
| 休み時間・給食 | 教室全体のがやがや | 静かな別室や、カームダウンできる場所で過ごす |
| 運動会・行事 | ピストル音、笛、突然の大きな音 | 予定を事前に知らせてもらい、参加のしかたを相談する |
「学校がにぎやかすぎて疲れる」|たぴたぴさんの物語
NIJINアカデミーの子どもたちの声
聴覚過敏の傾向がある小1のたぴたぴさんは、にぎやかな声や急に鳴る大きな音が苦手でした。通学路の階段の上からにぎやかな声が聞こえると「はぁ、ため息がでちゃう」と言い、校門までは行くものの足が止まって泣き出してしまうことも。「にぎやかすぎて、もう1時間たたない位で疲れちゃう」——そんな毎日でした。
お母さんはすぐに別の居場所を探し、オンラインで少人数の学びができるNIJINアカデミーへ。「自分の好きな時にパソコンを立ち上げ、にぎやかだと思ったらそっと閉じて離れられる」。自分の“ちょうどいい”環境を得て、今では顔出しで楽しそうに発言するまでに成長しています。
参考:NIJINアカデミー「学校がにぎやかすぎて疲れてしまう|聴覚過敏の小学1年生が見つけた学びの場所」NIJINアカデミー
オルタナティブスクールという選択肢学校に合わないからこそ、輝く個性がある。
NIJINアカデミーは、日本初、公教育を持ち運び可能にした
オルタナティブスクール(小中高一貫校)です。
- 累計入学 1000名超
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- 全国52か所のリアル教室
※出席扱いの最終判断は在籍校です。数字はNIJINアカデミー公式サイトの掲載値。
友だち追加は無料・相談だけでもOKです|デジタルパンフレットを見る
家庭・持ち物でできる
音の対策

音の刺激を減らす道具
- イヤーマフ・耳栓・デジタル耳栓:音量そのものを物理的に下げる
- ノイズキャンセリングイヤホン:ざわめきなどの環境音を抑える
- 静かな逃げ場:家庭に、音を避けてクールダウンできる場所をつくる
耳せんやイヤーマフは、とくに音の大きい場面で短時間使うぶんには役立ちます。一方で、日常的に音を遮り続けると、かえって音への過敏さが強まることがあると指摘されています。「つらい場面で使い、それ以外では外す」という使い分けが基本です。一日中つけていないと過ごせない状態が続く場合は、耳鼻咽喉科で使い方を相談してください。
出典:坂田俊文「聴覚過敏の診断と治療」日本耳鼻咽喉科学会会報 2017;120(9):1184-1185
▶ 感覚過敏(聴覚過敏を含む)と不登校のつながりを専門家が解説(脱・学校のタツロー校長)
| チェック | 確認すること |
|---|---|
| □ | イヤーマフや耳栓など、使い慣れた道具を持ったか |
| □ | 学校で道具を使ってよいか、担任と確認できているか |
| □ | つらくなったときに行ける場所(別室・保健室など)を、本人が知っているか |
| □ | 「音がしんどい」と伝える方法(合図やカードなど)を決めているか |
| □ | 行事や避難訓練など、大きな音が出る予定を事前に知っているか |
| □ | 帰宅後に、静かに休める場所と時間があるか |
耳栓やイヤーマフを実際に学校で使うときは、選び方と先生への頼み方で結果が変わります。
学校で耳栓・イヤーマフを使うための選び方と相談のしかた →
学校にお願いできる
合理的配慮
聴覚過敏への配慮は、学校に相談できる「合理的配慮」です。内閣府の事例集にも具体策が示されています。
学校での配慮の例
- 机や椅子の脚に緩衝材(テニスボール等)をつけ、雑音を軽減する
- イヤーマフや耳栓の使用を認める
- 口頭指示だけでなく、ホワイトボードや筆談など視覚的にも伝える
- 行事や休み時間に、静かな別室・カームダウンできる場所を用意する
参考:内閣府「合理的配慮等具体例データ集(教育分野)」内閣府/厚生労働省「発達障害の特性」
2024年(令和6年)4月から、学校を含む事業者にも合理的配慮の提供が義務づけられました。「困っていること」と「してほしい工夫」を具体的に伝えれば、学校も動きやすくなります。周囲の理解を得るためにヘルプマークを活用するのも一つの方法です。
学校以外の「居場所」を先に用意しておく
NIJINアカデミーは、午前でも午後からでも参加できるオンラインのオルタナティブスクールです。在籍校の出席扱いになる例も多く、まずは体験会で雰囲気を見てから決められます。
LINEで情報を受け取る学校への伝え方|聴覚過敏の配慮をお願いするときの手順
合理的配慮は、本人・保護者から「困っていること」と「してほしい工夫」を伝え、学校と話し合って決めていくものです。いきなりすべてをお願いするより、困りごとが大きい場面から一つずつ始めるほうが、学校も対応しやすくなります。
家では音を気にしないのに学校だけつらい、という子も少なくありません。先生から見えている姿と家庭での様子が違うことも多いので、帰宅後の様子もあわせて伝えましょう。
| ステップ | やること | ポイント |
|---|---|---|
| 1. つらい場面を記録する | どの時間に、どの音で疲れたか | 帰宅後の様子(頭痛、ぐったりしている など)も一緒に書く |
| 2. 担任に相談の時間をもらう | 連絡帳や電話で面談をお願いする | 特別支援教育コーディネーターやスクールカウンセラーの同席も相談できる |
| 3. 「困りごと」と「してほしい工夫」を1枚にまとめる | 例:チャイムの音がつらい → イヤーマフを使わせてほしい | 内閣府の「合理的配慮等具体例データ集」を参考にすると具体的に伝えやすい |
| 4. 試してみて、見直す | 実際に使ってどうだったかを本人に聞く | 合わなければ、別の工夫に切り替える |
夏休み明けなどに疲れが強く出る場合はADHDの子の夏休み明け、学びの場から考え直したい場合は特別支援学校とは、特定の音をきっかけに過去のつらい記憶がよみがえる様子がある場合はフラッシュバックが起きたときの対応の記事も参考にしてください。
聴覚過敏の中学生|学校で起こりやすい困りごとと相談のしかた
中学校では、小学校と比べて環境が大きく変わります。教科ごとに先生が変わる、音楽や合唱コンクール・部活動など音の大きい活動がある、定期テストや高校入試がある、といった点で、小学校のときとは違う相談が必要になることがあります。
| 中学校の場面 | つらくなりやすいこと | 相談できる工夫の例 |
|---|---|---|
| 教科担任制 | 先生ごとに配慮の伝わり方が違う | 困りごとと必要な工夫を1枚にまとめ、担任から教科の先生へ共有してもらう |
| 音楽・合唱コンクール | 大勢の声や楽器の音が重なる | 参加のしかた(立つ位置、時間、イヤーマフの使用など)を事前に相談する |
| 部活動 | 体育館や吹奏楽などの反響音 | 休憩のとり方や活動場所を顧問の先生と相談する |
| 定期テスト | 周りの物音で集中が切れる | 座席の位置や受け方について、受けられる配慮がないか学校に相談する |
| 高校入試 | 試験会場の音が心配 | 受検上の配慮を申請できるか、在籍中学校の先生に早めに相談する |
高校入試では、障害のある受検者に対して検査方法や検査会場などの配慮を申請できる仕組みがある都道府県があります。たとえば東京都立高校では、発達障害のある受検者の配慮の例として別室受検や検査時間の延長が示され、在学中の中学校を通して事前に申請します。内容は中学校で受けている配慮を参考に個別に決まるため、ふだんの配慮を記録しておくことが役立ちます。申請の時期や方法は都道府県ごとに違うので、志望先の教育委員会の案内で確かめてください。
出典:東京都教育委員会「障害のある受検者に対する配慮」東京都教育委員会
耳栓・イヤーマフを学校で使うときのポイント
- どの場面で使うか(チャイム、休み時間、音楽、行事など)を担任と決めておく
- 本人が使いたいかどうかを大切にする。周りの目が気になって嫌がる子もいるので、無理に使わせない
- クラスへの説明が必要かどうか、どう説明するかを本人と一緒に決める
- つらい場面で使い、それ以外では外す。一日中つけていないと過ごせない状態が続くときは、耳鼻咽喉科で相談する
埼玉県発達障害総合支援センターは、苦手な感覚を無理に克服させると苦痛やストレスが増し、感覚過敏の悪化につながるとして、無理強いせずに刺激を取り除くことや、耳栓・イヤーマフなどで刺激を減らす方法を紹介しています。効果の感じ方には個人差があるとされているので、合わなければ別の工夫に切り替えましょう。
出典:埼玉県「感覚過敏のある人に対する優しい社会環境づくり」埼玉県
診断と検査の流れ|何科を受診するか
「聴覚過敏科」という診療科はありません。何が一番つらいか、年齢はいくつかによって入口が変わります。
- 音だけがつらい・急に始まった・耳鳴りやめまいを伴う|耳鼻咽喉科
- 子どもで、音以外の感覚もつらい・発達特性が気になる|小児科、児童精神科、小児神経科、発達外来
- 大人で、不安や気分の落ち込みを伴う|精神科、心療内科
- 医療以外の相談先|発達障害者支援センター、教育支援センター、スクールカウンセラー、自治体の相談窓口
耳鼻咽喉科で行われる検査
- 問診|いつから、どの音が、どの場面でつらいか。子どものころからの経過も確認します
- 純音聴力検査|聞こえの程度を調べます。聴覚過敏では正常なことが多くあります
- 不快閾値(UCL)検査|どの音量から不快に感じるかを測ります
- アブミ骨筋反射検査|大きな音から耳を守る筋肉が働いているかを調べます
- 原因となる病気の診察|難聴、メニエール病、顔面神経麻痺などの有無を確認します
いつから/どの音が(チャイム、食器、人の声)/どの場面で/生活への影響(学校や仕事を休んだ、眠れない)/試して効いたもの・効かなかったもの。1〜2週間分のメモがあると、短い診察でも状況が伝わります。
治療とリハビリテーション
聴覚過敏そのものを消す薬はありません。治療は「音への感じ方を少しずつ戻していく」「背景にある病気や不調を治す」「生活のしづらさを減らす」の3方向から進めます。
音響療法
耳鳴りの再訓練療法(TRT)に準じた方法で、補聴器やサウンドジェネレーターを使い、小さな音を聞き続けることで音量の認識を少しずつ整えていきます。耳鼻咽喉科で相談できます。
原因となる病気の治療
難聴、メニエール病、顔面神経麻痺、片頭痛など、背景に治療できる病気がある場合は、その治療が最優先になります。不眠は症状を悪化させるため、眠れていない場合は睡眠の治療も並行します。
認知行動療法
「この音が鳴ったらまた耐えられない」という予期不安が、つらさをさらに強めることがあります。認知行動療法は、その思考と行動のパターンに気づき、調整していく方法です。音響療法が難しい場合にも用いられます。
環境調整と道具
耳せん、イヤーマフ、ノイズキャンセリングイヤホン、座席の変更、休憩の確保など。医療というより、生活を回すための手当てです。下の「家庭・持ち物でできる音の対策」で具体的に紹介します。
出典:坂田俊文「聴覚過敏の診断と治療」日本耳鼻咽喉科学会会報 2017;120(9):1184-1185
大人の聴覚過敏|職場での現れ方と対処
聴覚過敏は子ども特有のものではありません。子どものころからの特性が続いている人もいれば、大人になってから強く出る人もいます。大人の場合、我慢する方法を身につけているぶん周囲に気づかれにくく、つらさが疲労や頭痛として現れるのが特徴です。
職場でつらくなる場面
- 電話の呼び出し音、キーボードの音、空調音が重なり、目の前の作業に集中できない
- 長い会議や立ち話のあと、何もできないほど消耗する
- 満員電車やオフィスのざわめきで、出社前にすでに疲れている
- 飲み会や人の多い場所を避けるようになり、人間関係が狭くなる
仕事中にできる対処
- ノイズキャンセリングイヤホンやデジタル耳せんを、必要な場面だけ使う
- 座席を壁側・出入口から遠い位置へ変えてもらう
- 1〜2時間に一度、静かな場所で数分休む
- 在宅勤務や時差出勤を組み合わせ、通勤の音を減らす
職場に相談するという選択肢
障害者差別解消法の改正により、2024年4月から民間事業者にも合理的配慮の提供が義務づけられました。診断名がなくても、困っている具体的な場面と必要な手段をセットで伝えることで、座席の配置や道具の使用を認めてもらえる場合があります。「音がつらい」ではなく「電話が鳴る席だと処理が止まるので、窓側に移りたい」という伝え方が通りやすくなります。
それでもつらいなら、環境を変える選択
道具や配慮で負担を減らしても、教室そのものが刺激の多い環境であることは変わりません。無理を重ねる前に、静かな環境で学ぶという選択肢も検討できます。在宅・オンラインの学びなら、音量を自分で調整でき、つらくなったらそっと離れられます。「音に耐える」ことにエネルギーを使わずにすめば、学びや興味にエネルギーを向けられます。

本人が「自分を守る方法」を持てるように
聴覚過敏との付き合い方で大切なのは、子ども自身が「つらくなったら、こうすればいい」という対処法を持てるようにすることです。イヤーマフを使う、静かな場所に移動する、深呼吸する——どんな方法でも、本人が「自分で自分を守れる」という感覚を持てると、不安が大きく減ります。家庭では「今、音がしんどい?」と気持ちを言葉にする練習をしたり、「どうしたらラクになりそう?」と一緒に対処法を考えたりしましょう。大人が先回りしてすべてを取り除くのではなく、本人が自分の特性を理解し、対処のレパートリーを増やしていくこと。それが、これから先の長い人生を生きやすくする力になります。
音以外の刺激もつらそうなときは、HSCという気質の可能性もあります。
HSC(ひといちばい敏感な子)とは|特徴23項目のチェックと学校の配慮 →
まとめ
聴覚過敏は、音を強く不快に感じ、体力を奪われてしまう脳の特性です。教室はざわめき・チャイム・突然の大きな音であふれ、逃げられないことが大きな負担になります。まずはイヤーマフやノイズキャンセリングなどの道具で守り、机の緩衝材・別室・視覚での伝達といった合理的配慮を学校にお願いしましょう。それでもつらいなら、静かな環境で学べる在宅・オンラインの学びが有力な選択肢です。たぴたぴさんのように、自分の“ちょうどいい”環境を得ることで、その子は本来の力と笑顔を取り戻せます。
よくある質問
- Q. なぜ聴覚過敏になるのですか
- A. 原因はまだ完全には解明されていません。耳そのものだけでなく、音の大きさを認識する脳の回路と、苦痛を感じる回路の反応が通常と異なっていると考えられています。難聴やメニエール病、顔面神経麻痺、片頭痛、自閉スペクトラム症、不安やうつ、PTSDなどに伴って現れることもあります。
- Q. 聴覚過敏になると、どんな音が聞こえますか
- A. 聞こえる音そのものが変わるわけではありません。多くの人が気に留めない音が、耐えがたいほど大きく、刺さるように届きます。チャイム、食器のぶつかる音、ドライヤー、掃除機、子どもの高い声、ざわめきなどが挙がることが多く、自分の声や呼吸音が響いて聞こえる人もいます。
- Q. 聴覚過敏の人にはどんな特徴がありますか
- A. 人の多い場所のあとに強く疲れる、特定の音を避けて行動範囲が狭くなる、音で集中が切れて作業が続かない、といった形で現れます。聴力検査は正常なことが多く、外からは見えにくいため「気にしすぎ」と誤解されやすいのが特徴です。
- Q. イヤーマフを学校でつけると目立ちませんか?
- A. 近年は聴覚過敏への理解が広がり、使用を認める学校が増えています。クラスに事前に説明してもらう、ヘルプマークを併用するなどで、周囲の理解を得やすくなります。合理的配慮として堂々と相談してよいものです。
- Q. 聴覚過敏は治りますか?
- A. 聴覚過敏そのものを消す薬はありません。ただし、背景に治療できる病気がある場合はその治療で改善します。音響療法や認知行動療法、環境の調整によって、生活のしづらさを減らすことはできます。発達特性にともなう聴覚過敏は「治す」より「付き合う」という考え方が現実的です。
- Q. 受診したほうがよいですか?何科ですか?
- A. 音だけがつらい場合や急に始まった場合は耳鼻咽喉科、子どもで音以外の感覚もつらい場合は小児科・児童精神科・発達外来、大人で不安や気分の落ち込みを伴う場合は精神科・心療内科が入口になります。学校や自治体の相談窓口から紹介してもらう方法もあります。
- Q. きょうだいや家族に「うるさいだけでは」と言われます。
- A. 聴覚過敏は本人にしか分からないつらさで、体力を奪う実害があります。国の資料でも特性として認められています。家族で正しい理解を共有することが、本人の安心につながります。
- Q. 家では音を気にしないのに、学校だけつらいのはなぜ?
- A. 家は音量や環境を自分で調整でき、逃げ場もあります。一方、学校は多くの音が同時に鳴り、逃げられません。同じ子でも、環境によってつらさが大きく変わるのは自然なことです。
- Q. 聴覚過敏のセルフチェックで多く当てはまったら、聴覚過敏と診断されますか?
- A. セルフチェックは診断ではなく、つらさの大きさをつかむための目安です。当てはまる数が多いときや、耳鳴り・めまいを伴うとき、急に始まったときは、耳鼻咽喉科や小児科・発達外来などの医師、専門機関に相談してください。チェックの結果は、相談のときのメモとして役立ちます。
- Q. 中学生でも、学校で耳栓やイヤーマフを使えますか?
- A. 学校に相談できる合理的配慮の一つです。使う場面を担任の先生と決め、教科の先生にも共有してもらうと安心です。本人が周りの目を気にして嫌がる場合もあるので、使うかどうかは本人の気持ちを大切にして決めましょう。
- Q. 聴覚過敏があり、高校入試の会場の音が心配です。
- A. 都道府県によっては、障害のある受検者が検査方法や検査会場などの配慮を申請できます。たとえば東京都立高校では、発達障害の配慮の例に別室受検があり、在学中の中学校を通して申請します。耳栓やイヤーマフを使えるかは案内に書かれていないことがあるため、在籍中学校の先生や志望先の教育委員会に早めに確かめてください。
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