「家で勉強を教えると、いつも喧嘩になってしまう」——学習障害(LD)の子の家庭学習は、その子の苦手タイプに合わせることがうまくいく最大のコツです。読む・書く・計算では、つまずきの理由も有効な方法もまったく違います。この記事では、タイプ別の教え方・教材・声かけを、スモールステップの考え方とあわせて具体的に解説します。

大前提|「合わせる」から始める
LDは、聞く・話す・読む・書く・計算する・推論するのうち特定のものだけに著しい困難が出る特性です(文部科学省の定義)。だからこそ、家庭学習では「みんなと同じやり方」ではなく、その子の苦手を避け、得意を使う方法に切り替えます。
まず押さえたい考え方
LDの子の家庭学習で共通して効くのは、①スモールステップ(小さく分けて達成)②即時のほめ(成功体験)③マルチモーダル(見る・聞く・触るを組み合わせる)の3つ。この土台の上に、タイプ別の工夫を重ねます。
参考:文部科学省「学習障害児に対する指導について(報告)」文部科学省
タイプ別・家庭学習の進め方
「読む」が苦手な子
- 定規やスリット入りの厚紙で、今読む1行だけを見せる
- 文の切れ目に「/」を入れ、拡大コピーや行間を広げて読みやすくする
- 読みやすいフォント(UDデジタル教科書体)に変える
- 親が先に読み聞かせてから本人が読む/音声読み上げやオーディオブックを使う
「書く」が苦手な子
- 大きなマス目+補助線つきのノートを使う
- 漢字は「へん」「つくり」などパーツに分け、意味とセットで覚える
- 書く量そのものを減らす(板書は写真、キーボードや音声入力で代替)
「計算・数」が苦手な子
- 買い物や料理など、生活場面で数の感覚を育てる
- 九九表やヒントカードを子ども自身に作らせ、使ってよいことにする
- 筆算はマス目で位をそろえ、手順を1ステップずつ確認する
| 苦手タイプ | 家庭でのいちばんの工夫 |
|---|---|
| 読む | 「今読む行」に集中させ、耳からも入れる |
| 書く | 書く量を減らし、入力で代替してよいと決める |
| 計算・数 | 生活の中で数に触れ、道具(表・カード)を許可する |
声かけのコツ|やる気は「安心」から生まれる
子どもが前向きになる声かけ
- 過程をほめる:「最後まで座って取り組めたね」「昨日より1問多くできたね」
- 選ばせる:「どっちから始める?」と本人に主導権を渡す
- 感情を代弁する:「これは読みにくいよね、道具を使おう」と困りごとを一緒に扱う
逆効果になりやすい声かけ
- 「なんでこんな簡単なことができないの」
- 「もっと集中して」「やる気を出して」(方法の問題を気持ちのせいにする)
- 正解するまでやり直させる(失敗の上塗りになる)
▶ 学校とは違う学びの環境で、自分の得意を伸ばした子の事例(脱・学校のタツロー校長)
親だけで抱え込まないために
家庭学習がうまくいかない日があって当然です。大切なのは「毎日完璧に」ではなく「安心して続けられること」。学校の通級指導や特別支援コーディネーター、自治体の教育相談、オンラインの学びの場などを組み合わせ、親は「環境を整えて見守る」役割に軸足を置きましょう。第三者が関わることで、親子だけでは煮詰まりやすい関係もほぐれます。

その子に合う学び方を、一緒に見つける
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「できない日」があって当たり前
家庭学習は、毎日きっちり計画どおりに進むものではありません。子どもの体調や気分、その日の出来事によって、集中できる日もできない日もあります。「今日はできなかった」と落ち込む必要はありません。大切なのは、長い目で見て学びが途切れずに続いていることです。できない日は思い切って休み、できそうな日にまた再開すればいい。親が「毎日やらせなければ」と気負いすぎると、その緊張が子どもにも伝わり、学習が“つらいもの”になってしまいます。ゆるやかに、でも途切れさせずに——このバランスが、家庭学習を長く続ける秘訣です。
得意を伸ばすことも、立派な学習
学習障害の子は、苦手な領域がある一方で、驚くような得意分野を持っていることがよくあります。絵、工作、生き物、機械、ゲーム、話すこと——何でもかまいません。苦手の克服にばかり時間を使うのではなく、得意なことに思いきり打ち込む時間を大切にしましょう。得意分野での成功体験は自己肯定感を育て、その自信が「苦手にも挑戦してみよう」という気持ちの土台になります。好きなことを入り口に、読む・書く・調べるといった学びが自然と広がっていくことも少なくありません。「苦手をなくす」より「得意を伸ばす」を軸にするほうが、その子はのびのびと力を発揮できます。
まとめ
学習障害の子の家庭学習は、「その子の苦手タイプに合わせる」ことがすべての出発点です。読む・書く・計算では有効な工夫が異なり、共通するのはスモールステップ・即時のほめ・マルチモーダルという3つの土台。声かけは「過程をほめる・選ばせる・気持ちを代弁する」を基本にし、方法の問題を気持ちのせいにしないことが大切です。毎日完璧を目指さず、外部の支援も頼りながら、安心して続けられる学びを一緒につくっていきましょう。
よくある質問
- Q. 1日どれくらい家庭学習すればよいですか?
- A. 時間の長さより「集中して達成できたか」を大切に。短時間でも「できた」で終えるほうが、翌日への意欲が続きます。その子の集中が続く時間から始めましょう。
- Q. 教えているとつい怒ってしまいます。
- A. 親が教える役と見守る役を兼ねると衝突しやすくなります。教える部分はICT教材やオンラインの学びに任せ、親は「できたね」を伝える役に回ると、関係が保ちやすくなります。
- Q. 市販の教材はどれを選べばよいですか?
- A. その子の苦手タイプ(読む・書く・計算)に合うか、読み上げなどの支援機能があるか、無料で試せるかを基準に。本人が「これならやれそう」と感じるかを一緒に確かめましょう。
- Q. きょうだいと同じように教えてはいけませんか?
- A. 同じ方法が全員に合うとは限りません。「その子に合う方法」を選ぶのは特別扱いではなく、必要な配慮です。きょうだいにも、その子なりの得意・苦手があると伝えられると家庭が安定します。
- Q. 共働きで、家庭学習にあまり時間を取れません。
- A. 親がつきっきりで教える必要はありません。ICT教材やオンラインの学びに任せられる部分は任せ、親は「できたね」と声をかける短い時間を大切にすれば十分です。量より、安心して続けられることを優先しましょう。
- Q. 家庭学習だけで、学校の勉強に追いつけますか?
- A. その子のペースで理解を積み上げていけば、追いつくことは十分可能です。すべての単元を完璧にするより、「わかる・できる」を増やして学びを好きになることが、結果的に学力の土台になります。
- Q. 途中でやり方を変えてもいいですか?
- A. もちろんです。成長や状態に応じて、合う方法は変わります。「これは合わなかった」と気づけたこと自体が前進です。柔軟に見直しながら、その子に合う形を探していきましょう。
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