不登校の子どもへの声かけは、たった一言で子どもの気持ちが軽くなることも、逆に深く傷つけてしまうこともあります。良かれと思ったひと言が、子どもにはプレッシャーになっていた——ということも少なくありません。この記事では、言ってはいけないNGワードと、子どもが安心できる声かけを、場面別のフレーズ集つきで紹介します。今日から使える言い換えを、ぜひ持ち帰ってください。声かけに「正解」はありませんが、子どもの気持ちを尊重する基本を知っておくだけで、迷ったときの支えになります。完璧を目指さず、できるところから少しずつ試してみてください。

声かけが子どもに与える影響
不登校の子どもは、「学校に行けない自分はダメだ」と自分を責めていることが多くあります。文部科学省の調査でも、不登校のきっかけとして「不安・抑うつ」「やる気が出ない等」が上位に挙がっています。そんな状態の子に、励ましのつもりの言葉が「もっと頑張れ」と聞こえてしまうと、さらに追い込んでしまうのです。声かけの目的は「登校させること」ではなく、「あなたは大切」と伝えて安心を渡すことだと考えましょう。
出典:文部科学省「令和6年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果」文部科学省
言ってはいけないNGワード
| NGワード | なぜ避けたいか |
|---|---|
| 「なんで行けないの?」 | 理由を説明できない子を追い詰め、責められていると感じさせる |
| 「みんな行ってるよ」 | 比較され、「自分だけおかしい」と孤立感を強める |
| 「甘えてるだけ」 | 本人のつらさを否定し、SOSを閉じさせてしまう |
| 「行かないと将来困るよ」 | 不安をあおるだけで、今のしんどさに寄り添えていない |
| 「いつになったら行けるの?」 | 回復を急かし、プレッシャーになる |
共通する落とし穴
NGワードに共通するのは、「登校」をゴールにして、子どもを動かそうとする点です。焦りから出る言葉ほど、子どもには「今の自分ではダメ」というメッセージとして届いてしまいます。
子どもが安心できる声かけ
基本の3フレーズ
- 「話してくれてありがとう」……打ち明けてくれたこと自体を認める
- 「あなたが元気でいてくれるのが一番」……登校より存在を大切に思っていると伝える
- 「一緒に考えよう」……ひとりじゃないと感じてもらう
場面別・声かけフレーズ集
朝、行き渋っているとき
「今日はしんどそうだね。無理しなくていいよ」「どうしたいか、一緒に決めよう」。追い立てず、選択肢を一緒に探します。
家で元気がないとき
「そばにいるからね」「話したくなったらいつでも聞くよ」。無理に話させず、安心できる距離で見守ります。
本人が自分を責めているとき
「行けないのはあなたのせいじゃないよ」「休むことも大事なことだよ」。自己否定をやわらげ、休養を肯定します。
少し元気が戻ってきたとき
「あなたのペースで大丈夫」「やってみたいことがあったら教えてね」。回復を急かさず、本人の意欲を尊重します。
ポイント:沈黙も立派な声かけ
うまい言葉が見つからないときは、無理に話さなくても大丈夫。隣で一緒にご飯を食べる、好きなことを一緒にする——そんな「言葉のない時間」も、子どもには「受け入れられている」という安心として届きます。
安心できる言葉と、安心できる居場所を
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回復の段階に合わせて声かけを変える
同じ子どもでも、心の状態によって届く言葉は変わります。回復の段階に合わせて、声かけのトーンを調整しましょう。
| 段階 | 子どもの状態 | 合う声かけ |
|---|---|---|
| 休養期 | エネルギー切れ。動けない | 「今はゆっくり休もう」「そばにいるよ」 |
| 安定期 | 家では落ち着いて過ごせる | 「一緒に◯◯しようか」「どうしたい?」 |
| 回復期 | やりたいことが出てくる | 「やってみたいことある?」「応援してるよ」 |
特に注意したいのは、休養期に回復期の声かけをしてしまうことです。まだ動けない子に「何かやってみたら?」と促すと、プレッシャーになります。子どもの今の段階を見極め、焦らず言葉を選びましょう。
家族で声かけを「そろえる」大切さ
母親は受け止めているのに、父親や祖父母が「甘やかすな」と正反対の声をかける——これは子どもを混乱させ、板ばさみにしてしまいます。可能な範囲で、家族の間で「今はどう関わるか」の方針を共有しておきましょう。すぐに全員の理解が得られなくても大丈夫です。まずは主に関わる大人が一貫した姿勢を保つだけでも、子どもの安心は大きく変わります。祖父母など離れて暮らす家族には、専門家の資料やこうした記事を共有して、理解の助けにするのも一つの方法です。
言葉が届かない日があってもいい
どんなに丁寧に声をかけても、子どもが反応しない日はあります。それは声かけが間違っているのではなく、まだ言葉を受け取る余裕がないだけのことが多いのです。そんな日は、無理に会話しようとせず、同じ空間で穏やかに過ごすだけで十分。「いつでも味方でいる」という姿勢を持ち続けることが、言葉以上に子どもへ伝わっていきます。声かけは一度きりの魔法ではなく、日々積み重ねる信頼づくりだと考えましょう。

▶ 動画でも解説|タツロー校長(NIJIN代表・星野達郎)
動画:脱・学校のタツロー校長「【場面緘黙】学校で話せない理由を専門家が解説」
まとめ
不登校の子への声かけで大切なのは、登校を促すことではなく、安心を渡すことです。「なんで行けないの」「みんな行ってる」といったNGワードは避け、「話してくれてありがとう」「一緒に考えよう」と、存在そのものを認める言葉に置き換えていきましょう。うまく話せない日は、隣にいるだけでも十分です。言葉は、子どもとの信頼をつなぐいちばん身近な支えになります。
よくある質問
- Q. 励ましてはいけないのですか?
- A. 励まし自体が悪いわけではありません。ただ「頑張れ=今のままではダメ」と伝わることがあります。まず気持ちを受け止めてから、本人が前を向いたタイミングで応援するのが効果的です。
- Q. つい責める言葉が出てしまいます。
- A. 保護者も不安の中で必死です。責めてしまった日は「さっきは言いすぎた、ごめんね」と伝え直せば十分。完璧でなくても、修復しようとする姿勢が信頼を育てます。
- Q. 何を言っても「別に」「うるさい」としか返ってきません。
- A. 反応が薄い時期は、言葉を受け取る余裕がないだけのことが多いです。無理に会話を続けず、同じ空間で穏やかに過ごしましょう。「そばにいる」こと自体が声かけになります。
- Q. 学校や登校の話題は、いっさい出さないほうがいいですか?
- A. 完全にタブーにする必要はありませんが、休養期は避けるのが無難です。本人が学校の話をし始めたら、否定せずに聞く。回復のサインとして受け止め、こちらから急かさないのがポイントです。
- Q. 良かれと思った言葉で泣かせてしまいました。
- A. 涙は気持ちがゆるんだサインでもあります。責める意図がなかったことを伝え、「つらかったね」と受け止め直せば大丈夫。一度の言葉で関係が壊れることはありません。積み重ねが信頼をつくります。

