カービーさん(小学6年生)
- 在籍
- NIJINアカデミー
- 好きなこと
- Scratchでのゲーム・アニメ制作、全校ホームルームの司会
- 今の挑戦
- 友だちの作品を守るための呼びかけを、仲間と一緒に形にすること
子どもが「これをやってみたい」と動き出すとき、その原動力はどこにあるのでしょうか。一人で黙々と好きなことに打ち込む姿も、とてもすてきです。でも、その「好き」が誰かとつながったとき、子どもは思いがけない力を発揮することがあります。
「うちの子は発表が苦手で、順番が近づくだけで固まってしまう」「一人で過ごすのが好きで、友達と何かをする姿が想像できない」。そんな心配を抱えている保護者の方へ。発表が苦手だった子が、2年かけて「仲間のために動きたい」と自分から言い出すまでの道のりを、担任である私の目線でお伝えします。主人公は、NIJINアカデミーに通う小学6年生です。
- 出発点は、一人で打ち込める「好き」——カービーさんは、ひたすらScratchでゲームやアニメの制作に打ち込んでいました。
- 小さなステップの積み重ねが自信になる——作ったものをクラスで発表し、みんなに遊んでもらい、感想をもらう。その繰り返しが今の姿につながっています。
- 転機は「一人ではできない」と相談できたこと——仲間の力を借りてガチャを作り上げた経験が、チームで頑張る楽しさを教えてくれました。
- 今は、仲間のために自分から動こうとしている——友だちの作品へのいたずらをなくしたいと、自分から提案を届けてくれました。
発表の順番が来るとパニックになっていた
一人で打ち込める「好き」はあったカービーさんは、ひたすらScratchでゲームやアニメの制作に打ち込むタイプ。でも、クラス会議で発表の順番がまわってくると、緊張してパニックになってしまう子でした。
伝えたいものがないわけではなかった発表が苦手なことと、伝えたいものがないことはまったく別の話。カービーさんには、打ち込んで作った作品がたくさんありました。
仲間と作り上げる経験を経て、仲間のために動き出す
「一人ではできない」と相談できた「カービー33周年記念ガチャを作りたい。でも一人ではできない」。仲間に協力をお願いして作り上げた経験が、チームで頑張る楽しさを教えてくれました。
今は仲間のために自分から動く友だちの作品へのいたずらをなくしたいと、提案をスライドにまとめて仲間に届けてくれました。「名司会ペンギンカービーさん」と呼ばれる今の姿です。
NIJINアカデミーは、全国から累計1000名を超える子どもたちが在籍する、不登校の小中学生のためのオルタナティブスクールです。8〜10人の少人数クラスと1対1の専任サポート担任が、一人ひとりの「やってみたい」に伴走します。
「名司会ペンギンカービーさん」と呼ばれる小学6年生
私たちのフリースクール「NIJINアカデミー」には、不登校を経験した子どもたちが、自分のペースで通っています。今日ご紹介するのは、仲間のために動きたい小学6年生の物語です。
私のクラスに、「名司会ペンギンカービーさん」と呼ばれる子がいます。彼はとても司会が上手で、全校ホームルームではみんなを笑わせながら場を盛り上げてくれます。
全校ホームルームでも、堂々とふざけ倒し、みんなの笑いを誘っていました。その姿は、まさにエンターテイナーです。
でも、私が彼と出会った2年前は、こんな姿はありませんでした。この記事のキャッチコピーは「みんなで作ると、楽しい!」。その言葉にたどり着くまでの歩みを、順を追って振り返ります。

2年前は、発表の順番がまわってくるとパニックになっていた
出会ったころのカービーさんは、発表がとても苦手な子でした。不登校を経験し、クラス会議で自分の発表の順番がまわってくると、緊張してパニックになってしまう。そんな子だったのです。
一人で打ち込める「好き」が、ちゃんとあった
当時の彼は、一人で好きなことをやっていたいタイプでした。ひたすらScratchでゲームやアニメの制作に打ち込んでいました。
発表が苦手なことと、伝えたいものがないことは、まったく別の話です。カービーさんには、打ち込んで作った作品がありました。それが、のちに仲間とつながるための入り口になっていきます。
作って、見せて、遊んでもらって、感想をもらう
作ったものをクラスで発表して、みんなに遊んでもらい、感想をもらう。カービーさんが続けてきたのは、この小さなステップです。
フリースクールという安心できる場所で、小さなステップをこつこつと積み重ねてきた結果が、今のあの堂々とした姿につながっています。自分の作品を仲間に届ける経験を、何度も重ねてきたのです。
発表が苦手な子にとって、「何も持たずに前に立つ」ことと「自分の作品を見てもらう」ことは、負担の大きさが違うことが多いものです。作品があると、話の中心が自分自身から作品へと移ります。これは一般的な傾向ですが、ご家庭でも取り入れやすい視点です。
小さなステップを積み重ねられる、NIJINアカデミーのしくみ
カービーさんが自分のペースで歩んでこられた背景には、NIJINアカデミーの環境があります。発表が苦手な子にとって大きいのは、「うまくいかなくても、もう一度やれる」と思える場があることです。
うまく話すことより先に、安心して試せることを大切にしています。
8〜10人の異年齢クラスです。ホームルームやクラス会議があり、同じ仲間に何度も作品を見てもらえます。
教員経験や不登校経験などを持つスタッフが伴走します。困ったときに相談できる相手が、いつも決まっています。
メタバース校舎にはアバターで登校します。カメラ・音声オフ、チャットやリアクションだけの参加もできます。
NIJINアカデミーのメタバース校舎は、全国どこからでも参加できるバーチャル校舎です。小学1年生から中学3年生までが、同じ校舎で過ごしています。
また、NIJINアカデミーには定期テストがありません。担任の所見による学びのポートフォリオで成長を記録していきます。点数では表しにくい「作品を発表できた」「仲間に協力をお願いできた」といった一歩も、その子の成長として残していけます。
授業は対話的で、現役・元教員など日本トップクラスの教師陣が担当します。一方的に聞くだけの時間ではないので、自分の考えを少しずつ言葉にする機会が、日々の中に自然とあります。
転機は「ひとりじゃできない」という相談だった
大きな転機になったのは、去年のある出来事でした。
「カービー33周年記念ガチャを作りたい。でも、一人ではできないからどうしよう。」
そう相談してくれたのです。ちょうどクラスにイラストが得意な子がいたので、その仲間に協力をお願いして、みんなでガチャを作り上げるという経験をしました。
この経験から学んだ、2つのこと
この経験から、カービーさんは大切なことを学びました。
- 「一人ではできないことでも、周りを巻き込めば達成できるんだ。」
- 「チームで頑張ることは、こんなに楽しいんだ。」
一人で作ることが好きだった子が、「一人ではできない」と言葉にして相談してくれた。ここが、大きな転機でした。
「やりたいこと」と「得意なこと」がつながった
このとき起きたのは、大人が答えを教えることではありませんでした。クラスにイラストが得意な子がいる。その仲間に協力をお願いする。それがきっかけです。
少人数のクラスでは、担任が一人ひとりの得意なことをよく知っています。だからこそ、「やりたいこと」を持つ子と「得意なこと」を持つ子を結びつけることができます。異年齢の仲間がいる環境では、得意なことの幅も広がります。
全校ホームルームで司会をするカービーさんの様子は、動画でもご覧いただけます。
仲間と一緒に、もっと楽しく|次々と生まれる新しい挑戦
あの日を境に、カービーさんは仲間と一緒に何かを作ることを、心から楽しむようになりました。
今では、仲間を巻き込みながら、次々と新しい挑戦を続けています。代表的なものを2つご紹介します。
| 挑戦 | 作りたいもの | 仲間の巻き込み方 |
|---|---|---|
| 敵キャラクターのアイデアコンテスト | ゲーム「唐揚げシューティング レモンスターズ」 | クラスでコンテストを開催して、アイデアを募集 |
| クイズのアイデア集め | カービークイズ | 全校ホームルームで呼びかけて、アイデアを集める |
どちらも、作品を作るのはカービーさん自身です。そのうえで、アイデアの部分を仲間に開いています。「自分の作品」が「みんなで作った作品」に変わっていく。その面白さを、彼は自分の手で広げています。
2年間の歩みを、5つのステップで振り返る
- 一人で作るScratchでゲームやアニメの制作に、ひたすら打ち込んでいました。
- クラスで発表する作ったものをクラスで発表し、みんなに遊んでもらい、感想をもらう経験を重ねました。
- 「一人ではできない」と相談するカービー33周年記念ガチャを作りたいと、担任に相談してくれました。
- 仲間と作り上げるイラストが得意な仲間に協力をお願いして、みんなでガチャを完成させました。
- 自分から仲間を巻き込むアイデアコンテストの開催や、全校ホームルームでの呼びかけへと広がっています。
NIJINアカデミーには、サークル活動や、子どもたちが行き先や内容を企画する行事(修学旅行・遠足)など、自分で考えて形にする機会があります。企業との共創プロジェクトや放課後プロジェクト塾のように、社会とつながる場もあります。「やってみたい」を実際に試せる場面が多いことも、特色のひとつです。
「いたずらをなくしたい」|仲間のために届いた一通のDM
そして、この記事を書く前日のこと。全校ホームルームのあとに、カービーさんからDMが届きました。
話を聞いてみると、次のような提案でした。
「友だちのマインクラフトの作品がいたずらされたと聞いた。自分もScratchで作品を作っているから、その辛い気持ちがとてもよくわかる。いたずらをなくすために、行動を起こしたい」
彼はこの提案をスライドにまとめ、その週のホームチームで3つのクラスを巻き込んで自分の意見をみんなに伝え、みんなで解決策を作っていく予定だと話してくれました。
かつて発表が苦手で、一人で過ごすことが多かった子が、今は仲間のために自分から動こうとしている。その成長に、私は胸が熱くなりました。
「作る人」だからこそ出てきた言葉
この提案の中には、「自分もScratchで作品を作っているから」という理由が書かれていました。自分も作品を作っているから、友だちの辛い気持ちがよくわかる。その理由を、彼自身が言葉にしてくれています。
そして彼が選んだ方法は、「みんなで解決策を作っていく」ことでした。一人で答えを出すのではなく、仲間を巻き込んで考える。ガチャ作りで学んだことが、ここでも生きています。
図解:一人の「好き」が、仲間のための行動に変わるまで
ここまでの歩みを、3つの場面にまとめます。
どの場面も、カービーさん自身の言葉と行動から始まっています。
Scratchで作ったゲームやアニメをクラスで発表。遊んでもらい、感想をもらう経験を重ねました。
「一人ではできない」と相談し、イラストが得意な仲間と記念ガチャを完成させました。
友だちの作品へのいたずらをなくしたいと、提案をスライドにまとめました。
3つの場面に共通しているのは、大人が課題を与えたのではない、という点です。作りたいものも、相談も、提案も、すべて本人の中から出てきました。まわりの大人と仲間は、それを受け止めて、一緒に形にしてきました。
「人前で話すのが苦手だけれど大丈夫?」という段階でかまいません。LINEでスタッフがお話をうかがいます。
発表が苦手な小学生に合う学びの場は?3つの選択肢を比較
全国の不登校の小中学生は34万人を超えています(文部科学省の調査)。学校に行きづらくなったときの学びの場は、ひとつではありません。発表や人前が苦手な子の目線で、一般的な傾向を整理しました。
優劣ではなく、お子さんの今の状態に合うかどうかの目安です。
| 在籍校の教室 | 家庭での個別学習 | NIJINアカデミー | |
|---|---|---|---|
| 声を出さずに参加できる | △ | ○ | ○ |
| 作品を仲間に見てもらえる | ○ | × | ○ |
| 8〜10人ほどの少人数で過ごせる | △ | × | ○ |
| 子どもが企画を立ち上げられる | △ | △ | ○ |
| 住んでいる地域に関係なく参加できる | × | ○ | ○ |
| 毎日通える校庭・給食がある | ○ | × | × |
○=対応 △=一部・学校や状況による ×=非対応 / ※一般的な傾向です。実際の内容は学校・ご家庭ごとに異なります。
NIJINアカデミーはメタバース校舎が中心なので、毎日通う校庭や給食はありません。そのかわり、リアル教室は全国52か所にあります。週1から通える特化型リアル校で、アート・体操・プログラミング・農園など、教室ごとに特色があります。オンラインとリアルの併用もできます。
在籍校はそのままで、学校との併用もできます。NIJINアカデミーは、学校に戻ることを目的にはしていません。戻る・戻らないのどちらも否定せず、その子が安心して学べる形を一緒に探します。
出席については、希望者の出席認定率が97%です(在籍校の出席扱い。最終判断は在籍校の校長が行います)。
家庭で今日からできること|発表が苦手な子の「小さなステップ」
カービーさんの歩みは、「作る→見せる→感想をもらう」という小さなステップの積み重ねでした。ご家庭でも取り入れやすい形に置きかえると、次のようになります。あくまで一般的な例です。お子さんの様子に合わせて、できそうなところから試してみてください。
| 段階 | お子さんがすること(一例) | 大人の関わり方(一例) |
|---|---|---|
| 1. 作る | ゲーム・絵・工作など、好きなものを作る | 口を出さず、時間と場所を確保する |
| 2. 家族に見せる | 完成したものを家族に見せる、遊んでもらう | 評価より先に「ここが面白かった」と感想を伝える |
| 3. 説明する | 作り方や工夫したところを話す | 「どうやって作ったの?」と質問して聞き役になる |
| 4. 頼る | 一人では難しいところを相談する | 答えを教えず、得意な人や方法を一緒に探す |
| 5. 家族以外に届ける | 安心できる相手に見てもらう | 相手や方法は本人に選んでもらう |
「順番が来るとつらい」子への関わり方チェックリスト
発表の場面で緊張が強くなる子は少なくありません。次のような関わり方が、負担を軽くする助けになることがあります。
- 発表の「形」を選べるようにする(声、文字、作品を見せるだけ、など)
- いきなり大人数ではなく、少ない人数の前から始める
- うまく話せたかどうかより、「見せてくれたこと」に目を向ける
- うまくいかなかった日は、理由を問いつめずに休む
- 「一人でできない」と言えたときは、頼れたこと自体を認める
- 本人が「やる」と言うまで、先回りして予定を入れない
全部をやろうとしなくて大丈夫です。ひとつ試して、お子さんの表情を見てみてください。
人前での緊張は、多くの子に見られるものです。ただ、強い不安や体の不調が長く続くなど、気になる様子がある場合は、専門機関への相談も選択肢のひとつです。この記事は、診断や治療の代わりになるものではありません。
私が大切にしたい「子どもの主体」
仲間と共に何かを頑張りたい。みんなの役に立ちたい。楽しませたい。それが、エンターテイナー「ペンギンカービーさん」のありたい姿です。
大人が「こうしなさい」と答えを与えるのではなく、子ども自身が「やってみたい」と思えることを見つけ、仲間とつながりながら、自分の意思で次の一歩を踏み出していく。そのプロセスにこそ、本当の学びと成長があるのだと思います。
不登校は、決して後ろ向きなことではありません。フリースクールという安心できる場所があるからこそ、子どもは失敗を恐れずに「もう一回やってみよう」と前を向くことができます。
カービーさんが小さなステップを積み重ね、今のように仲間を巻き込んで挑戦できるようになったのも、そんな安心できる居場所があったからだと思います。
これからも彼は、仲間と一緒に、NIJINアカデミーを盛り上げていってくれることでしょう。その成長を、私はこれからも隣で見守り続けたいと思います。
不登校の子どもたちの「やってみたい」を大切にするフリースクール
NIJINアカデミーは、不登校の子どもたちが安心して過ごせるオンラインフリースクールです。一人ひとりの「知りたい」「やってみたい」という気持ちを大切にし、仲間とつながりながら主体的に学べる居場所を目指しています。安心できる場所だからこそ、子どもたちは何度でも挑戦できます。
理念は「不登校が希望に変わる」。学習面では、AI型学習ドリル「navima」が使い放題です。小学1年生から中学3年生までの内容を、学び直しも先取りも、自分のペースで進められます。企業・専門家による特別授業や、教育展示会EDIXでの登壇、海外留学プログラムなど、校舎の外の世界に触れる機会もあります。
NIJINアカデミーの校長・星野達郎(タツロー校長)は、2021年度まで公立小学校の教員でした。設立の原点には、「明るくない子どもなんていない。問題児なんてたったの一人もいない」という言葉があります。発表の順番が来るとパニックになっていた子が、今は全校ホームルームでみんなを笑わせている。カービーさんの歩みは、この言葉をそのまま形にしたような物語です。
よくある質問
まとめ
2年前、クラス会議で発表の順番がまわってくると、緊張してパニックになっていたカービーさん。一人でScratchの制作に打ち込みながら、作ったものをクラスで発表し、遊んでもらい、感想をもらう。その小さなステップを、こつこつと積み重ねてきました。
去年、「一人ではできないからどうしよう」と相談してくれたことが転機になりました。イラストが得意な仲間と記念ガチャを作り上げ、チームで頑張る楽しさを知りました。今ではアイデアコンテストを開いたり、全校ホームルームで呼びかけたりと、自分から仲間を巻き込んでいます。
そして、友だちの作品へのいたずらをなくしたいと、仲間のために動き出そうとしています。「名司会ペンギンカービーさん」と呼ばれる今の姿は、安心できる居場所と、受け止めてくれる仲間の中で育ってきたものです。
発表が苦手なことは、その子の可能性を小さくするものではありません。まずは今日、お子さんが作ったものや夢中になっているものについて、「それ、見せて」と声をかけるところから始めてみませんか。
保護者の方だけのご参加も大丈夫です

