「学校に行きたくない」
そう口にする子どもに、なんと声をかければいいのかわからない——そんな保護者の方は、少なくないのではないでしょうか。
茨城県下妻市の書店&カフェ「TOKU BOOKS」は、棚を借りた人が”自分の本屋”を持てるユニークな仕組みや、翻訳絵本の品揃えで知られる小さな本屋です。この本屋が2026年9月23日より、NIJINアカデミーと連携した週1回のリアル校(フリースクール)をスタートします。
仕掛け人は、教室長を務めるしのぶー先生(平良忍)。かつて学校司書として10年、図書館司書として3年勤めた経験を持ち、その後「チャイルドカウンセラー」の資格も取得した人物です。学校という場所の中で、うまく言葉にできない苦しさを抱えた子どもたちと向き合い続けてきたからこそ見えてきた景色があると言います。
なぜ本屋がフリースクールを?なぜ司書からカウンセラーの資格取得へ?そして、この教室で本当に大切にしたいこととは——。教室づくりへの想いを、しのぶーさんご本人にじっくり伺いました。
「学校に行けない・行きたくない」というお子さんを持つ保護者の方はもちろん、地域とのつながりを模索している方にもぜひ読んでいただきたい内容です。

① どんな教室ですか?
TOKU BOOKS(トクブックス)という本屋の中で、週に1回開くフリースクールです。教室長であるしのぶー先生は元々教育関係者ではありません。「教える・教わる」という姿勢ではなく「一緒に考えてみる」ことを大切にしています。茨城県下妻校は勉強を教える塾でもなく、行事を詰め込む施設でもなく、まずは「ここにいていいんだ」と思える時間を積み重ねる場所にしたいと思っています。本屋なので、静かに本を読んでいてもいいし、何もしなくてもいい。そういう自由さを大事にしています。
② 教室を開いたきっかけは?
実は、この教室の原点は前職での経験にあります。私が学校司書として勤めていたのは「小規模特認校」という、市内であればどこからでも通える少し間口の広い小学校でした。そこには、大規模校では合わないと感じる子や、少しはみ出してしまう特性を持つ子がたくさん通っていたんです。
でも、そういう環境にいてもなお、学校のスピード感や団体行動の中で自分のペースを崩してしまう子をたくさん見てきました。私がいたのは学校図書館でしたが、そこでぽつりぽつりと、うまく言葉にならないまま苦しい胸の内を話してくれる子が何人もいて。そのたびに、学校司書という立場でできることの少なさを痛感していました。
その悔しさから、いつか子どもたちの力になれればと「チャイルドカウンセラー」の資格を取りました。今回、NIJINアカデミーさんとご縁があり、その学びをようやく形にできると思って、この教室を始めることにしました。

③ 教室で大切にしていることは何ですか?
「できる・できない」で子どもを評価しないことです。学校図書館で子どもたちの声にならない声を聞いてきた経験から、子どもを急かさない・変えようとしないことの大切さを実感してきました。今日来られた、今日は少し話せた、今日は好きな本を見つけられた——そのひとつひとつを、ちゃんと価値のあることだと思っています。

④ 地域のつながりについてはどうお考えですか?
地域や社会とのつながりを持つ装置として、店内にある「シェア型本棚」がその象徴として挙げられると思います。
40ある棚それぞれにオーナーさんがいて、大人たちが自分の棚で「自分を表現する」ということに日々挑戦しています。普通の本棚でありながら、大人たちとのつながりを感じることのできる空間です。実はこの本棚を、今回の教室にも活かせたらと考えていて。棚のひとつを「ニジアカ生」専用にして、子どもたちにも”自分を表現する”ことにチャレンジしてもらう——そんな仕掛けを用意する予定です。
そして、教室の中だけで学びを完結させるのではなく、地域の中に子どもたちの居場所が増えていくことが理想だと思っています。実は立地も味方してくれています。お隣が大型スーパーなので、みんなでお昼ご飯を調達しに出かけることもできますし、少し足をのばせば多賀谷城跡公園でピクニックも楽しめます。教室の中だけでなく、本屋の外にも自然と関わりが広がっていく——そんな環境も、この場所ならではの強みだと思っています。
学校でも家でもない、子どもたちが安心して過ごせる場所が地域にあることは、子どもにとっても保護者にとっても、選択肢が増えるという意味で大きな価値があると感じています。

⑤ NIJINアカデミーならではの特色を教えて下さい
NIJINアカデミーの最大の特色は、リアル×メタバースの「ハイブリット型」オルタナティブスクールであるという事。メタバースでしっかりと授業を受けながら、それぞれの特色を持つリアル校で自分らしい学びを見つける。リアル校である茨城下妻校としては、一つの型にはめず、勉強したい日は勉強していいし、話したくない日は話さなくていい。その子にとっての「安心」がまず土台にあって、そこから少しずつ興味や関わりが広がっていく——そんな柔軟さを大事にしています。TOKU BOOKSとの連携では、本を通じて自分の気持ちや考えを表現する時間も取り入れていく予定です。
⑥ どんなお子さんにおすすめですか?
学校に行きづらさを感じているお子さん、集団の中だと疲れてしまうお子さん、自分のペースを大事にしたいお子さんにおすすめです。逆に言うと、「こうあるべき」に少ししんどさを感じているお子さんなら、誰でも来てもらえる場所にしたいと思っています。

⑦ 保護者の方にメッセージをお願いします
お子さんが学校に行けないことを、ご自身を責める理由にしないでほしいと思います。学校以外にも居場所はありますし、それを探すこと自体が悪いことでは決してありません。子どもがその子らしくいられる、安心できる場所づくりを目指しています。また、保護者の皆さんにとっても心がほぐれる場所になれたらと考えています。TOKU BOOKSという本屋の場所が、「ここに来ればいい」と思っていただける選択肢の一つになれたら嬉しいです。
学校のスピード感や団体行動の中で、自分のペースを崩してしまう子どもたち。学校図書館で交わした小さな会話の積み重ねが、この教室の原点になっています。
学校に行く・行かないという二択ではなく、「安心できる場所」を地域の中に増やしていくこと。それが本屋発フリースクールが目指すかたちです。

