- 就学先を最終的に決めるのは誰か(校長でも医師でもありません)
- 法定の期日と、自治体の実際の締切が1年近くずれていること
- 自治体が公表している「対象」の書き方の共通点と違い
- 「情緒学級には入れません」と言われるときの6つの理由
- 入ったあとに効いてくる、週の半分以上というルール
この記事は、全国から累計1000名を超える子どもたちが通うオルタナティブスクール「NIJINアカデミー」の知見も踏まえて構成しています。在籍している子の中には、就学相談を経て情緒学級を選んだご家庭も、相談の結果として別の学び方を選んだご家庭もいます。
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決めるのは市町村教育委員会です——関係者の役割を先に整理する
ここがあいまいなまま相談を始めると、誰にお願いすればいいのかが分からないまま時間が過ぎてしまいます。文部科学省は、はっきりこう書いています。
「最終的には市町村教育委員会が児童生徒の就学先を決定することになります」
もう少し詳しい表現は、学校教育法施行令の改正通知(平成25年9月1日/25文科初第655号)にあります。
「市町村教育委員会が、本人・保護者に対し十分情報提供をしつつ、本人・保護者の意見を最大限尊重し、本人・保護者と市町村教育委員会、学校等が教育的ニーズと必要な支援について合意形成を行うことを原則とし、最終的には市町村教育委員会が決定する」
関係者の役割を並べると、次のようになります。
| 誰 | 役割 |
|---|---|
| 市町村教育委員会 | 就学先を最終的に決定する(唯一の決定権者) |
| 教育支援委員会 (就学支援委員会) | 専門的な見地から意見を述べる。決定機関ではない |
| 医師 | 診断を行う。就学先は決めない。自治体によっては診断書が申請の必要書類 |
| 校長・在籍校 | 相談窓口。校内委員会での検討と、保護者への説明・合意形成 |
| 保護者 | 意見を述べる法令上の権利がある(学校教育法施行令第18条の2)。「最大限尊重」「合意形成が原則」 |
保護者の意見を聴くことは、市町村教育委員会にとって法令上の義務です。ただし、保護者に同意権や拒否権があると書いた公的資料は確認できませんでした。「最大限尊重」「合意形成を原則」という強い言葉は使われていますが、決定権者は市町村教育委員会です。ここは正確に知っておいたほうが、話し合いの組み立て方が変わります。
いつ動くのか——法定の期日と、実際の締切は1年近くずれています
法律で決まっている期日
小学校入学の場合、文部科学省が示している法定のスケジュールはこうです。
10月31日 学齢簿の作成 → 11月30日 就学時健康診断の実施 → 12月31日 特別支援学校対象者を都道府県へ通知 → 1月31日 保護者へ入学期日・就学先を通知
この表だけを見ると、「11月の就学時健康診断のときに相談すればいい」と読めます。ところが、実際の自治体の締切はまったく違います。
自治体の実際の締切は、夏に閉まります
| 自治体 | 締切・相談時期 |
|---|---|
| 横浜市 | 特別支援学校を検討=6月30日必着/個別支援学級・通級指導教室を検討=7月31日必着 |
| 立川市 | 申込開始は3月25日。自閉症・情緒障害特別支援学級を検討している場合は8月31日締切、その他は9月30日締切 |
| 台東区 | 転学希望は5月1日〜6月30日に在籍校へ相談。WISC知能検査結果報告書および医師の診断書が必要 |
立川市のように、情緒学級だけ締切が1か月早い自治体があります。横浜市は7月末、台東区の転学相談は6月末で閉まります。就学時健康診断(11月)を起点に考えていると、どこも間に合いません。
お住まいの自治体の名前と「就学相談」で検索し、今年度の日程表(PDF)を見つけてください。探すときは、自治体によって学級の呼び名が違う点に注意します(横浜市は「個別支援学級」、東京都の通級は「特別支援教室」)。日程表が見つからないときは、市役所の代表番号から「教育委員会 学校教育課」または「特別支援教育相談」の窓口につないでもらうのが早いです。まだ何も決めていない段階で電話してかまいません。年度の途中に相談が始まると、翌年度まで待つことになる場合があります。
判定の目安——自治体が公表している「対象」の書き方
共通しているのは、通知の二本立て
どの自治体の資料も、出発点は文部科学省の通知(平成25年10月4日/25文科初第756号)です。
「一 自閉症又はそれに類するもので、他人との意思疎通及び対人関係の形成が困難である程度のもの
二 主として心理的な要因による選択性かん黙等があるもので、社会生活への適応が困難である程度のもの」
自閉スペクトラム症などの特性によるルートと、選択性かん黙など心理的な要因によるルート。この2つが並んでいることは、全国共通です。
自治体によって違うところが3つあります
1. 「知的障害がないこと」を明記するかどうか
東京都教育委員会は「自閉症・情緒障害特別支援学級の対象は知的障害のない自閉症等の児童・生徒としています」と明記しています。台東区も「全般的な知的発達の遅れはなく、自閉スペクトラム症や情緒障害(選択性かん黙等)により、通常の学級での指導ではその効果が十分に現れにくい児童」としています。文部科学省の通知には、この条件は書かれていません。自治体の運用です。
2. 診断書を求めるかどうか
墨田区は「医師の診断書の提出が必要」とし、心理検査結果がある場合は提出を求めています。台東区も診断書とWISCの結果報告書を必要書類に挙げています。これも通知にはない自治体運用です。
3. 学級が実際に開設されるかどうか
さいたま市は全ての市立小・中学校に知的障害学級と自閉症・情緒障害学級を整備していますが、「年度当初に児童生徒が在籍していない場合には、設置されておりません」と明記しています。「制度としてはある」と「今年その学校で開いている」は別の話です。
台東区は学級の中身についても具体的に書いています。「1学級8名以内の小集団のなかで、学年相応の教科学習を行いながら、個々の特性や状態に応じた集団適応や対人関係の安定を図り、自立活動の指導を実施」。ここまで書いてくれている自治体の資料は、判断材料として非常に役に立ちます。
「情緒学級には入れません」と言われるのは、どんなときか
断られる理由は、感覚的なものではなく、たいてい制度上の理由があります。公的資料から説明できるものを並べます。
1. 知的な遅れがある場合は、知的障害学級が対象になる
東京都・台東区のように対象を「知的障害のない」児童生徒と定めている自治体では、知的な遅れがある場合の受け皿は知的障害特別支援学級になります。
2. 通常学級で大半の時間を過ごせると判断された場合
令和4年の通知(4文科初第375号)は「特別支援学級に在籍している児童生徒が、大半の時間を交流及び共同学習として通常の学級で学んでいる場合には、学びの場の変更を検討するべきであること」としています。文部科学省のQ&Aも「半分以上学ぶ必要のない児童生徒については、通常の学級に在籍を変更することを促す」と説明しています。
3. 通級(特別支援教室)で対応できると判断された場合
墨田区は固定学級の対象を「特別支援教室の指導では改善が難しい児童・生徒」と定義しています。つまり通級で足りると判断されれば、固定の学級には入らないという順番です。
4. その学校に学級が開設されていない場合
さいたま市の例のとおり、在籍者がいなければ学級は開かれません。この場合は、学校教育法施行令第8条にもとづく指定校変更の相談ができる可能性があります。文部科学省は変更が認められる事由として「いじめへの対応、通学の利便性、部活動等学校独自の活動等を理由とする場合のほか、市町村教育委員会が相当と認めるとき」を挙げています。ただし、特別支援学級の設置状況を理由とする変更が許可基準に明示されているかは公的資料で確認できませんでした。「教育的配慮」の枠で相談できる場合があるため、市町村教育委員会に直接確認してください。
5. 定員(1学級8人)の問題
1学級の標準は8人です。定員を超えたときの運用について明記した公的資料は確認できませんでした。ここは自治体に聞くしかない部分です。
6. そもそも最終決定権が保護者にない
すでに書いたとおり、決定するのは市町村教育委員会です。意見を述べる権利は法令で保障されていますが、希望がそのまま通るとは限りません。不服申立ての手続きについては、公的資料で確認できませんでした。納得がいかない場合は、再相談の時期と方法を市町村教育委員会に確認するのが現実的です。
NIJINアカデミーで自分らしさを取り戻した子どもたちと保護者が、自分の言葉で語ったインタビューです。
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入ったあとに効いてくる、3つのこと
週の授業時数の半分以上は、情緒学級で過ごす
令和4年の通知は「原則として週の授業時数の半分以上を目安として特別支援学級において」授業を行うことを求めています。横浜市教育委員会も通知を出し、「一人ひとりの教育的ニーズに応じた学びの保障、自立活動等の充実の観点から、原則として、個別支援学級における授業時間数は目安として週の半分以上を確保する」としています。
「在籍だけ移して、ほとんどは通常学級で」という使い方は、制度としては想定されていません。ここは入級前に必ず確認しておきたいところです。
通常学級で過ごす時間も、在籍校の授業です
文部科学省の「交流及び共同学習ガイド」は、「授業時間内に行われる交流及び共同学習は、その活動場所がどこであっても、児童生徒等の在籍校の授業として位置付けられている」としています。出席や評価の扱いに直結する記述です。
高校進学の扱いは、都道府県によって違います
いちばん気になるところだと思いますが、正直に書きます。特別支援学級に在籍した場合の調査書(内申書)の評定をどう記載するかを定めた、文部科学省の全国統一ルールは確認できませんでした。高校入試の選抜方法は都道府県ごとの「入学者選抜実施要項」で定められるため、扱いには都道府県差があります。
言えることは3つです。第一に、調査書の扱いはお住まいの都道府県の実施要項で決まること。第二に、文部科学省は「障害のある生徒に対する配慮」の実施状況を毎年調査しており、配慮の仕組み自体は全国的に把握されていること。第三に、情緒学級の教育課程は「当該学年と同様の課程を原則」とされている点で、知的障害学級とは条件が違うことです。
参考までに、東京都教育委員会が2026年3月に公表した調査(回答総数4,434件)では、中学校特別支援学級(自閉症・情緒障害)について高等学校への進学が40.9%、特別支援学校高等部への進学が14.3%という数字が示されています。東京都に限った調査であり、全国の数値ではありません。また、この数値が進路希望か進路実績かについては、報告書本体でご確認ください。
年度の途中で移れるかどうかは、自治体に確認してください
通常学級と特別支援学級のあいだを年度途中で移れるかどうかを正面から定めた文部科学省の資料は、確認できませんでした。東京都は「原則として、転学の時期は学年の変わり目です」と書いていますが、これは都立特別支援学校への転学の文脈です。いっぽうで文部科学省は「双方向での転学等ができること…を全ての関係者の共通理解とすることが重要である」としており、入ったら戻れない制度ではありません。具体的な時期と手続きは、市町村教育委員会に確認してください。
「明るくない子どもなんていない。問題児なんてたったの一人もいない」——これは、公立小学校の教員だった星野達郎(タツロー)校長がNIJINアカデミーを設立した原点にある言葉です。就学相談は、その子に何が足りないかを判定する場ではなく、どんな環境なら力を出せるかを一緒に探す場であってほしいと思います。
よくある質問
まとめ
情緒学級に入るかどうかを最終的に決めるのは市町村教育委員会です。教育支援委員会は意見を述べる機関で、医師は診断をしますが就学先は決めません。保護者には意見を述べる法令上の権利があり、「最大限尊重」「合意形成が原則」とされています。法定の期日は10月から1月に並んでいますが、実際の自治体の締切は6月から8月に集中しており、情緒学級だけ締切が早い自治体もあります。就学時健康診断を待っていると間に合いません。
対象の考え方は全国共通で通知の二本立て(自閉症系と、選択性かん黙など心理的な要因)ですが、知的障害の有無を明記するか、診断書を求めるか、その学校で実際に学級が開かれているかは自治体によって違います。そして入ったあとは、週の授業時数の半分以上をその学級で過ごすことが原則になります。
制度の中で合う形が見つかることもあれば、見つからないこともあります。どちらであっても、締切に間に合うように早めに窓口へ連絡しておくことが、選べる幅をいちばん広げます。

就学相談の結果を待つあいだも、次の年度を待つあいだも、子どもの時間は進みます。NIJINアカデミーはメタバース校舎が平日毎日開いていて、途中からでも参加できます。無料説明会では実際の授業をそのままご覧いただけます。保護者の方だけのご参加でも大丈夫です。

