- 「情緒級」「情緒クラス」は正式名称ではない。正式には何と呼ばれるか
- 対象を定めているのは法律ではなく通知で、入口が2つあること
- 通級・知的級・特別支援学校との線引きが、どこで決まっているか
- 1学級8人、週の授業時数の半分以上という運用の基準
- 自閉症・情緒障害が、いま特別支援学級でいちばん人数の多い区分になっていること
この記事は、全国から累計1000名を超える子どもたちが通うオルタナティブスクール「NIJINアカデミー」の知見も踏まえて構成しています。在籍している子の中には、情緒級を検討した経験のあるご家庭、実際に在籍したうえで別の学び方を選んだご家庭も少なくありません。
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「情緒級」は、公的な資料には出てこない言葉です
先に、いちばん混乱の元になっているところをはっきりさせておきます。「情緒級」「情緒クラス」「支援級の情緒」は、文部科学省や国立特別支援教育総合研究所の公式サイトに、用語として存在しません。これらは学校現場と保護者のあいだで使われている通称です。
公的資料での表記は、一貫して次のとおりです。
正式名称は「自閉症・情緒障害特別支援学級」
小学校・中学校の中に置かれる特別支援学級のうち、自閉症や情緒障害のある子どもを対象とする学級が、この名前で呼ばれています。学校によっては学級に独自の愛称(「なかよし学級」「ひまわり学級」など)がついていることもあり、これが検索をさらに難しくしています。
自治体によっては、学級の呼び名そのものが違う場合もあります。たとえば横浜市は特別支援学級を「個別支援学級」と呼び、その中に「知的障害」「自閉症・情緒障害」「弱視」の3つの学級種を置いています。お住まいの自治体の資料を読むときは、まずその自治体が何と呼んでいるかを確認すると早いです。
学校教育法の条文には「自閉症・情緒障害」という言葉がありません
ここは、ほとんどの解説記事が触れていないところです。特別支援学級の根拠である学校教育法第81条第2項は、対象を次のように定めています。
「小学校、中学校、高等学校及び中等教育学校には、次の各号のいずれかに該当する児童及び生徒のために、特別支援学級を置くことができる。一 知的障害者 二 肢体不自由者 三 身体虚弱者 四 弱視者 五 難聴者 六 その他障害のある者で、特別支援学級において教育を行うことが適当なもの」
列挙されている5つの障害種に、自閉症も情緒障害も入っていません。自閉症・情緒障害特別支援学級は、第六号の「その他障害のある者」を、文部科学省の通知が具体化したものです。つまり正式名称そのものが、法律ではなく通知に由来しています。
その通知が「障害のある児童生徒等に対する早期からの一貫した支援について(通知)」(平成25年10月4日/25文科初第756号)で、ここで特別支援学級の対象が「知的障害者、肢体不自由者、病弱者及び身体虚弱者、弱視者、難聴者、言語障害者、自閉症・情緒障害者」の7区分として示されました。
対象になるのはどんな子か——通知が定める「2つの入口」
同じ通知の「キ 自閉症・情緒障害者」の項には、対象がこう書かれています。
「一 自閉症又はそれに類するもので、他人との意思疎通及び対人関係の形成が困難である程度のもの
二 主として心理的な要因による選択性かん黙等があるもので、社会生活への適応が困難である程度のもの」
読み飛ばされがちですが、ここには性質のまったく違う2つの入口が並んでいます。
一つ目の入口:自閉症またはそれに類するもの
自閉スペクトラム症など、対人関係やコミュニケーションの面で困難がある場合です。多くの方が「情緒級」と聞いて思い浮かべるのは、おそらくこちらでしょう。
二つ目の入口:主として心理的な要因による選択性かん黙等
こちらは発達特性ではなく、心理的な要因による適応の困難です。通知が例として挙げているのは選択性かん黙(場面緘黙)で、家では話せるのに学校では声が出なくなる状態を指します。
この二本立てを知っておくと、「うちの子は発達障害の診断がないから情緒級は関係ない」という思い込みを一度外すことができます。通知は、心理的な要因による適応困難も、同じ資格で対象に挙げています。
文部科学省の資料「Ⅷ 情緒障害」は、情緒障害を「周囲の環境から受けるストレスによって生じたストレス反応として状況に合わない心身の状態が持続し、それらを自分の意思ではコントロールできないことが継続している状態」と説明し、その具体例のなかに不登校・ひきこもりを挙げています。いっぽうで、上の通知が入級の要件として書いているのは「選択性かん黙等」であって、不登校そのものではありません。説明のなかには出てくるのに、対象要件には書かれていない——この食い違いが、「不登校だから情緒級に入れると思っていた」という行き違いの正体です。実際にどう判断されるかは自治体によって差があるため、在籍校と市町村教育委員会に確認してください。
通級・知的級・特別支援学校とは、どこで線が引かれているのか
保護者がいちばん混同しやすいのがこの4つの関係です。先に表で整理します。
| 学びの場 | 在籍はどこか | 教育課程 | 自閉症・情緒障害は対象か |
|---|---|---|---|
| 通常の学級 | 通常の学級 | 通常の教育課程 | — |
| 通級による指導 (東京都では特別支援教室) | 通常の学級のまま | 通常の教育課程に加える/一部に替える | 対象 |
| 自閉症・情緒障害 特別支援学級(情緒級) | 特別支援学級に移る | 当該学年と同様の課程が原則+自立活動 | 対象 |
| 知的障害 特別支援学級 | 特別支援学級に移る | 下学年の内容への置き換え等が可能 | — |
| 特別支援学校 | 特別支援学校 | 特別支援学校の教育課程 | 対象に含まれない |
通級と情緒級のいちばんの違いは「在籍」
通級による指導は、通常の学級に在籍したまま、障害に応じた特別の指導を別の場所で受ける仕組みです(学校教育法施行規則第140条・第141条)。指導時間の標準は年間35〜280単位時間(学習障害・注意欠陥多動性障害は年間10〜280単位時間)とされています。
これに対して情緒級は、在籍そのものが特別支援学級に移ります。「籍は通常学級のままで、困ったときだけ情緒級で過ごす」という形は、制度上は通級のほうに近い考え方です。ここを取り違えたまま話が進むと、あとで「そんなつもりではなかった」ということが起こります。
情緒級と知的級は、教育課程がはっきり違います
「勉強は遅れないのか」という不安に、いちばん直接答えるのがここです。福島県教育委員会が文部科学省の資料に基づいて整理しているところによると、知的障害学級では下学年の内容や特別支援学校(知的障害)の内容への置き換え、各教科を合わせた指導などができるのに対し、自閉症・情緒障害学級は「当該学年と同様の課程を原則」とし、必要に応じて基礎的内容を重視したり一部下学年の内容を使ったりできる、という立てつけになっています。
東京都教育委員会はさらに踏み込んで、「自閉症・情緒障害特別支援学級の対象は知的障害のない自閉症等の児童・生徒としています」「教育課程編成の考え方は、小学校及び中学校の教育課程に準ずることを基本とし、特に必要がある場合は、特別の教育課程によることができます」と明記しています。
なお「特別の教育課程」を編成できる根拠は学校教育法施行規則第138条です。教科の内容が学年どおりでも、自立活動の時間が必ず加わります。令和4年の通知は、自立活動の時間が設けられていない場合には教育課程の再編成を検討するべきだとまで書いています。
特別支援学校には、自閉症・情緒障害という区分がありません
特別支援学校の対象は「視覚障害者、聴覚障害者、知的障害者、肢体不自由者又は病弱者(身体虚弱者を含む。)」です。自閉症・情緒障害は入っていません。「情緒級の次は特別支援学校」と考えている方がときどきいらっしゃいますが、制度上はそういう並びになっていません。
1学級8人、週の授業時数の半分以上——運用を決めている2つの数字
1学級の標準は8人
特別支援学級の1学級の児童生徒数の標準は8人です(公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律)。小学校の通常学級が35人、中学校が40人であることと比べると、人数の差は歴然としています。音や人の多さが負荷になっている子にとって、この8人という規模そのものが意味を持つことがあります。
週の授業時数の半分以上は、情緒級で過ごす
これは2022年以降、情緒級の実際の過ごし方をいちばん強く規定している基準です。「特別支援学級及び通級による指導の適切な運用について(通知)」(令和4年4月27日/4文科初第375号)は、こう定めています。
「原則として週の授業時数の半分以上を目安として特別支援学級において児童生徒の一人一人の障害の状態や特性及び心身の発達の段階等に応じた授業を行うこと」
そしてもう一文、見落とされがちですが重要な記述が続きます。
「特別支援学級に在籍している児童生徒が、大半の時間を交流及び共同学習として通常の学級で学んでいる場合には、学びの場の変更を検討するべきであること」
つまり「情緒級に籍を置いて、ほとんどの時間は通常学級で過ごす」という形は、制度としては想定されていません。文部科学省はQ&Aで、この通知は交流の時間を制限する趣旨ではなく「半分以上学ぶ必要のない児童生徒については、通常の学級に在籍を変更することを促す」ものだと説明しています。
なお、通常学級で過ごす時間(交流及び共同学習)は、文部科学省の「交流及び共同学習ガイド」によれば「その活動場所がどこであっても、児童生徒等の在籍校の授業として位置付けられている」ものです。別の学校に行っているわけではない、ということです。
NIJINアカデミーで自分らしさを取り戻した子どもたちと保護者が、自分の言葉で語ったインタビューです。
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自閉症・情緒障害は、いま特別支援学級でいちばん多い区分です
最後に、数の話をしておきます。文部科学省の統計では、平成19年度(2007年度)の情緒障害特別支援学級の在籍者は38,001人でした。それが令和5年度(2023年度)には、自閉症・情緒障害特別支援学級で約196,500人になっています。
同じ年度の知的障害特別支援学級は約164,000人ですから、自閉症・情緒障害は知的障害を上回り、特別支援学級のなかで最も人数の多い区分になりました。特別支援学級全体でも、在籍者数はこの10年でおよそ2.1倍に増えています。
「うちだけが特殊なのではないか」と感じている方に、この数字は少しだけ意味があるかもしれません。情緒級を検討することは、例外的な進路ではなくなっています。
(※平成19年度の統計は分類名が「情緒障害」であり、「自閉症・情緒障害」への名称変更後の数値とは厳密には連続しません。出典:文部科学省「特別支援学級の状況」および文部科学省初等中等教育局特別支援教育課「特別支援教育の充実について」)
「明るくない子どもなんていない。問題児なんてたったの一人もいない」——これは、公立小学校の教員だった星野達郎(タツロー)校長がNIJINアカデミーを設立した原点にある言葉です。情緒級かどうか、通級かどうかという線引きは制度の話であって、その子がどんな子かを決めるものではありません。制度は、合う環境を探すための道具のひとつとして使っていただければと思います。
よくある質問
まとめ
情緒級という言葉は公的資料には出てきませんが、指しているものははっきりしています。正式名称は「自閉症・情緒障害特別支援学級」で、その根拠は学校教育法の条文ではなく、第81条第2項第六号を具体化した文部科学省の通知にあります。対象は、自閉症など対人関係の困難がある場合と、選択性かん黙など心理的な要因による適応困難がある場合の2つです。通級は在籍が通常学級のままであるのに対し、情緒級は在籍そのものが移り、週の授業時数の半分以上をその学級で過ごすことが原則とされています。教育課程は当該学年と同様の課程が原則で、知的障害学級とは立てつけが違います。
制度の骨格が見えたら、次に必要なのは「では、うちの子はどう判断されるのか」「いつまでに何をすればいいのか」という実務の話です。自治体によって申込の締切が大きく違い、就学時健康診断を待っていると間に合わないケースもあります。その部分は別の記事にまとめました。

情緒級も通級も、合う環境を探すための選択肢のひとつです。学校の中に合う形が見つからないとき、学校の外にも選択肢があります。NIJINアカデミーの無料説明会では、実際の授業の様子をそのままご覧いただけます。保護者の方だけのご参加でも大丈夫です。

