起立性調節障害は甘えじゃない|原因5つのメカニズムと家族の対応

起立性調節障害は甘えじゃない|原因5つのメカニズムと家族の対応
「学校が嫌だから体調不良のふりをしているのでは」——起立性調節障害の子を持つ保護者が、一度は周囲から向けられる視線かもしれません。しかし医学的には、起立性調節障害には自律神経の働きに関わる複数の身体的なメカニズムがあることが分かっています。日本小児心身医学会の情報をもとに、原因とされる5つの要因を整理しました。
この記事でわかること
  • 起立性調節障害の原因とされる5つのメカニズム
  • 「心理的ストレス」と「気の持ちよう」の違い
  • 症状が悪化しやすくなる悪循環の仕組み

起立性調節障害の原因は、ひとつではない

朝、ベッドから起き上がれずにめまいをこらえる中学生と、心配そうに見守る母親
午前に症状が強く出るのは、起立時に脳の血流が保てなくなるためです。

起立性調節障害は、単一の原因で起こるわけではなく、複数の身体的要因が組み合わさって発症すると考えられています。日本小児心身医学会は、その成因として次の5つを挙げています。

①自律神経による代償機構の破綻

人は立ち上がると、重力によって血液が下半身に集まり、血圧が下がりそうになります。通常はここで自律神経が働き、血管を収縮させたり心拍数を上げたりして血圧を保ちます。この調節(代償機構)がうまく働かないことが、起立性調節障害の中心的なメカニズムです。

②交感神経活動の異常(過少・過剰)

血圧や心拍を調整する交感神経の働きが、弱すぎたり逆に過剰に反応しすぎたりすることも、症状の一因とされています。この乱れ方によって、立ちくらみが中心のタイプや動悸が中心のタイプなど、症状の出方に違いが生まれます。

③水分摂取の不足

体内を循環する血液量が少ないと、起立時の血圧低下がより起こりやすくなります。水分摂取が不足しがちな子は、症状が悪化しやすい傾向があります。

④心理社会的ストレスの関与

自律神経は心理社会的ストレスの影響を強く受けます。「体がつらいのに学校に行かなければ」という圧迫感そのものが、自律神経を介して症状を悪化させることがあります。専門機関を受診するOD患者の70〜80%に、何らかの心理社会的要因の関与があるとも報告されています。

⑤日常の活動量低下による悪循環

症状のつらさから体を動かす機会が減ると、筋力が低下し、さらに自律神経の働きも悪化します。すると下半身に血液が過剰にたまりやすくなり、心拍出量や脳血流が下がって症状が強まるという悪循環(deconditioning)が生まれます。動けないから動かない、動かないからさらに調子が悪くなる、という負のループです。

「気の持ちよう」ではない理由

④の心理社会的ストレスが関与すると聞くと「やっぱり気持ちの問題では」と感じるかもしれません。しかしここで起きているのは、ストレスが自律神経という身体の仕組みを介して症状を悪化させるという、医学的なメカニズムです。本人の意思の強さや性格の問題とは異なります。むしろ「甘えでは」という周囲の言葉自体が新たな心理的ストレスとなり、症状を悪化させる要因にもなり得ます。

なぜ思春期に多く、女子に多いのか

起立性調節障害は、身長や体格が急速に変化する思春期に発症しやすいとされています。身体の成長スピードに自律神経の発達が追いつきにくいことが背景にあると考えられています。また、症状の出方には性差もあり、男子に比べて女子の方が1.5〜2倍ほど多いことが知られています。ホルモンバランスの変化が自律神経に影響する可能性も指摘されていますが、詳しい機序は今後の研究課題とされています。

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「甘え」と言われたとき、家族はどう受け止めればいいか

起立性調節障害でいちばん多く聞かれる言葉が「それは甘えでしょう」です。学校から、親族から、ときには本人自身から出てくることもあります。ここでは、甘えに見えてしまう行動が、身体のどのメカニズムから説明できるのかを一つずつ対応させて整理します。

「甘え」に見える行動と、身体で起きていること
周囲に「甘え」と映る場面身体で起きていること対応する成因
朝は起きられないのに、夕方は元気になる午前は脳血流が不足し、午後に自律神経の調節が追いつく①代償機構の破綻
立ち上がるとフラつくが、座れば平気起立で下半身に血液がたまり、脳血流が一時的に下がる②交感神経活動の異常
好きなことなら動ける脳血流が保てる姿勢・時間帯なら活動できる症状に時間帯と姿勢の波がある
学校の話になると体調が悪くなるストレスが自律神経を介して症状を強める④心理社会的ストレスの関与
動かないから体力が落ちている活動量低下で筋力と自律神経機能が落ち、症状が強まる⑤deconditioningの悪循環

つまり「甘え」と見えている行動のほとんどは、本人の意思ではなく、立つ・起きるという動作に対する血圧と脳血流の反応で説明がつきます。意思の強さで変えられる部分ではありません。

成因5つを一枚で見る

日本小児心身医学会が挙げる5つの成因
成因家庭で見えるかたち
①自律神経による代償機構の破綻立ち上がると立ちくらみ・頭痛が出る
②交感神経活動の異常(過少・過剰)動悸が強いタイプ/立ちくらみが強いタイプに分かれる
③水分摂取の不足飲む量が少ない日ほど調子が悪い
④心理社会的ストレスの関与登校や行事が近づくと症状が強まる
⑤活動量低下による悪循環休む日が続くほど、起きられる時間が短くなる

家族が今日からできること

「甘え」と言われたときの対応チェックリスト
やることできているか
本人の前で「気の持ちよう」「怠けている」という言葉を使わない
午前と午後で体調が違うことを、学校・親族に仕組みとして説明した
受診して、新起立試験などの検査を受けた(または予約した)
起きられた日・動けた時間帯を記録している(責めるためではなく波を知るため)
午後から参加できる学びの場を、選択肢として調べ始めている

とくに2つめが効きます。「甘えではない」と言い返すより、「立つと脳の血流が下がるので午前がつらい」という仕組みを伝えるほうが、学校にも親族にも伝わりやすく、本人への言葉も変わっていきます。

症状を悪化させやすい生活習慣

自律神経の乱れそのものは体質や成長のスピードによる部分が大きいものですが、日々の生活習慣によって症状の出方が強くなったり弱くなったりすることがあります。原因を理解したうえで、家庭で見直せる部分がないかを確認しておくと、治療と並行した対策がとりやすくなります。

症状に影響しやすい生活習慣
  • 就寝時刻が遅く、睡眠時間が不規則になっている
  • 水分・塩分の摂取量が少ない(血流量の低下につながりやすい)
  • 長時間の同じ姿勢(スマートフォンの使用など)が続いている
  • 朝食を抜く、あるいは食欲不振を我慢して無理に食べている
  • 運動不足により、下半身の筋力・血管の収縮力が低下している

ただし、これらの生活習慣は「原因」というより「症状を強めやすい要因」です。生活習慣を整えても症状がすぐに改善するとは限らず、几帳面な性格の子ほど「自分の生活が乱れているせいだ」と自分を責めてしまうことがあります。生活習慣の見直しは、あくまで治療の一部として、医師の指導のもとで無理のない範囲から取り組むことが大切です。

「メンタルが弱いから」ではない理由

起立性調節障害は自律神経という身体の機能の問題であり、性格や気持ちの持ちようで簡単にコントロールできるものではありません。真面目で頑張り屋な子ほど、周囲の「気の持ちようだ」という言葉によって自分を責めてしまいがちです。原因が身体のメカニズムにあると家族が理解し、本人に伝えることが、回復への第一歩になります。

原因が分からないまま「なぜ動けないのか」を問い続けることは、本人にとっても家族にとっても大きな負担です。メカニズムを知り、責める気持ちを手放したうえで、体調に合わせた過ごし方や学び方を一緒に探していく姿勢が、回復への支えになります。

リビングのソファで、母親が中学生の娘の話をうなずきながら聞いている
「甘え」ではなく仕組みの問題だと家族が理解すると、本人への言葉が変わります。

よくある質問

親の育て方や家庭環境が原因ですか?
育て方そのものが直接の原因とされているわけではありません。ただし、心理社会的ストレスは症状の増悪に関わる要因のひとつであるため、家庭や学校でのストレスを減らす環境調整は、治療の一部として大切にされています。
運動不足が原因なら、無理にでも運動させたほうがいいですか?
無理な運動はかえって症状を悪化させることがあります。医師と相談しながら、症状の程度に合わせた軽い運動(毎日30分程度の歩行など)から少しずつ取り入れることが推奨されています。自己判断での激しい運動は避けましょう。

NIJINアカデミーの子どもたちの声

「原因は自分にあるのでは」と自分を責めてしまう子どもは少なくありません。NIJINアカデミーに在籍する中学2年生のパケロンさんも、小学生の頃から人間関係に悩み、体調を崩して学校が苦しくなり、「自分は何もできていない」と自信を失っていた時期がありました。起立性調節障害と同じように、原因が一つに定まらない不調は、本人の努力不足では説明できないことがほとんどです。

パケロンさんは、NIJINの体験会で「オンラインの方が自分のペースを保ちながら人とつながれる」と気づき、合わなかった経験も「自分に必要な環境を知る手がかり」に変えていきました。今では生徒会活動や得意な絵に意欲的に取り組んでいます。原因を正しく理解し、自分を責めることをやめられると、次に進むエネルギーが生まれてきます。

午後のダイニングテーブルでノートパソコンを開いて学習する中学生
体調が上向く午後から学べる形なら、学びを止めずに回復を待てます。

起立性調節障害でもNIJINアカデミーに通える理由

起立性調節障害の大きな特徴は、午前中に調子が悪く、午後から夕方にかけて回復していくという波があることです。この波に合わせて学べる環境かどうかは、本人と家族にとって大きな安心材料になります。NIJINアカデミーが、体調に波のある子どもたちにも選ばれている理由を、いくつかの角度からご紹介します。

いつでも入れるバーチャル校舎

NIJINアカデミーは、oviceというツールを使ったバーチャル校舎を採用しており、決まった時間に教室へ向かう必要がありません。午前中は横になって休み、体調が上向いてきた午後から校舎に入って授業に参加する、といった過ごし方も可能です。「今日は調子が悪いから休む」「今週は少し授業を減らす」といった調整も、専任サポート担任と相談しながら柔軟に行えます。

顔を出さなくても参加できる仕組み

カメラ・音声をオフにしたままの見学参加や、チャット・リアクションボタンでの参加もできるため、体調が万全でない日でも「つながりだけは保つ」という関わり方ができます。声を出すこと自体がしんどい日でも、クラスの雰囲気を感じながら、無理のない範囲で参加できる点は、体調の波がある子にとって大きな支えになります。

少人数制と1:1専任サポート担任

8〜10人程度の少人数制クラスに加え、1人ひとりに専任サポート担任がつきます。教員経験や不登校経験のある信頼できる大人が伴走し、日々の体調に合わせて無理のないペースを一緒に考えてくれるため、「今日はどこまで頑張ればいいのか」を一人で抱え込まずに済みます。

出席認定率9割以上という実績

在籍校や教育委員会と連携し、NIJINでの学習状況が出席として扱われるケースがあります(最終判断は学校によります)。希望する生徒の9割以上が在籍校の出席認定を得ている実績があります(2025年4月時点、株式会社NIJIN公式プレスリリースより)。「学校を休むこと」への不安を、少しでも軽くできる材料のひとつです。

定期テストがなく、自分のペースで学べる

NIJINには定期テストがなく、担任の所見によるポートフォリオ評価で成長を可視化します。体調によって学習のペースが一定でなくても、無理に周囲と競わせる仕組みではないため、本人の状態に合わせて学びを続けやすい設計になっています。

原因を知ったうえで、学びも止めない選択肢を

心理社会的ストレスへの配慮は、治療の一部でもあります。体調に合わせて無理なく学べる環境も、選択肢のひとつとして知っておいてください。