子どもの発達・学びと暮らしの工夫
「さっき言ったのに、どうして忘れるの?」。授業の指示や支度の順番を忘れる子には、頭の中で覚えながら作業する負担があるかもしれません。ワーキングメモリという言葉を、学校で使える工夫につなげて考えます。

CHAPTER 01「覚えている」と「作業中に使う」は違う
昨日の出来事を覚えていても、「ノートを出して、日付を書いて、問題を解く」という説明を保ちながら動くことは別の課題です。記憶力がよい場面があるから援助が不要とは限りません。
一方、指示を忘れたように見えても、最初から聞こえていなかった、言葉の意味が分からなかった場合もあります。ワーキングメモリの問題と決めつけず、情報が届いた工程から確かめます。
CHAPTER 02口頭指示を、参照できる形で残す
黒板の端に三つの手順を残す、机に今の作業のカードを置くなど、見直せる手がかりを使います。覚えてから動かせるようになるまで待つより、見ながら参加できる形を考えます。
文字が多い一覧が負担になる子には、写真や短い言葉が使えます。読む場所が分からない場合は、今の一つに印を付けます。道具の形式は年齢や本人の希望に合わせて変えましょう。
| 場面・様子 | 確認と工夫の例 |
|---|---|
| 手順の途中が抜ける | 順番を紙に残し、終えた所に印を付ける。 |
| 別の説明で前の指示を忘れる | 伝える情報を区切り、作業後に次を伝える。 |
| メモを見つけられない | 確認する場所を一つに決め、使う場面を練習する。 |

CHAPTER 03「分かった?」より、最初の行動を確認する
うなずいても全手順を理解したとは限りません。「最初に何を出す?」と聞いたり、一緒に指をさしたりすると確認しやすくなります。答えられないことをテストとして責めないようにします。
板書と説明を同時に追うのが難しい時は、作業を分けたり要点の紙を使ったりできるか学校と相談します。家庭でも、話している途中に別の指示を重ねない工夫ができます。
家庭・学校で試すための架空の例
「ノートを出す、三ページを開く、上の図を見る」を一枚に書き、今の行に定規を置く例です。本人が文字を追いにくいなら、ノートとページの写真に変えることも考えられます。
CHAPTER 04訓練だけに期待せず、日常での変化を見る
記憶の課題で成績が上がることと、教室の困りごとが減ることは同じではありません。特定のアプリで必ずADHDが改善するなどの説明に頼らず、学校で参加しやすくなったかを見ます。
支援を使うことは、記憶力を諦めることではありません。メモや予定表を参照する力も生活に必要です。「何も見ずにできた」だけでなく、困った時に確認できたことを評価しましょう。
手がかりを使った後に、置き場所を確かめる
手順表を作っても、教科書の下に隠れたり、ページが変わるたび見失ったりすると使えません。置く位置、見るタイミング、終えた印の付け方まで一緒に確認します。道具を作ることより、授業中に参照できることが目的です。
家庭では「覚えておいて」を減らし、買い物や翌日の持ち物を同じ場所へ残す方法が考えられます。ただし記録する作業も負担になるため、最初は大人が書く、写真を撮るなど援助できます。本人が自分で選んだ確認方法へ、少しずつ役割を移しましょう。
CHAPTER 05学ぶ目的を、宿題の量と分けて確認する
家庭学習では、正解した数だけでなく、何が分かったかを確かめます。本人が説明できた、見本から方法を選べたといった学びもあります。書く量や座る時間だけが成果になっていないかを、学校の課題の目的と合わせて見直しましょう。
毎日の宿題が長時間になり、睡眠や食事、休息に影響する場合は、取り組んだ範囲と援助の内容を担任に伝えます。家庭で教材を増やし続ける前に、理解の確認や量の調整ができるかを相談します。提出形式を変える場合も、先に学校と確認してください。
本人の興味や得意な表現は、学習方法を選ぶ手がかりになります。ただし好きな活動を毎回課題に変えたり、苦手を終えないと楽しめない条件ばかり増やしたりしないようにします。学びと同時に、安心して過ごす時間を守ることも大切です。

CHAPTER 06工夫の成果は、本人の負担から確かめる
試す方法は、一度に増やし過ぎないようにします。最初に本人と困る場面を選び、使う道具、大人が手伝う部分、確認する時期を決めます。できたかどうかを競うのでなく、前より取り組みやすくなった条件を探すための試行です。
振り返る時は、終えた量だけでなく、疲れ方、声かけの回数、助けを求めやすさも確かめます。見た目には成功していても、本人が強く我慢しているなら調整が必要かもしれません。保護者や先生が無理なく続けられるかも含めて考えましょう。
体調の変化や強いつらさが続く場合、工夫を完成させるまで相談を待つ必要はありません。学校、自治体の発達相談、子どもの発達に対応する医療機関などへ、生活への影響を伝えます。対象年齢や予約方法は窓口の公式案内で確認してください。
CHAPTER 07学ぶ環境を選ぶ時に、本人の安心も確かめる
困難を減らす工夫を考える時は、どんな場所なら質問しやすいか、どのくらいの人数なら参加しやすいかも本人と話してみましょう。環境を変えることと、必要な医療の相談は並行して考えられます。学校・学級の選び方を考える参考として、星野達郎による次の動画を紹介します。
「発達障害なら支援級に入れるべき?」は教育的な見解を紹介する動画です。診断や治療を説明する動画ではなく、診断名だけで学級を決めるものでもありません。
Q & Aよくある質問
- Q. 検査の数値が低ければ授業は難しいですか?
- 数値だけで学べる範囲は決まりません。本人の理解や環境、使える手がかりを含めて考えます。
- Q. 復唱を何度もさせればよいですか?
- 復唱だけでは作業中の負担が残ることがあります。見直せる指示と、情報を区切る工夫も検討します。
学びやすい条件を、一緒に考える一歩に
学校以外の学びも知りたい方は、NIJINアカデミーの活動や参加条件を確認できます。医療的な診断・治療の場ではありません。お子さまの希望、学習の進め方、相談できる体制を確かめながら、合う環境を探してみませんか。
REFERENCES参考資料
- 国立特別支援教育総合研究所|ADHDの基礎知識
- 国立特別支援教育総合研究所|ADHDのある子どもの支援
- 発達障害ナビポータル|発達障害者支援センターの相談
- 米国国立精神衛生研究所|ADHDについて知っておきたいこと
本記事は教育・生活上の一般的な情報です。具体例は支援を考えるための提案であり、診断、検査、治療の代わりではありません。医療上の判断は医師へ、支援制度や学校での実施条件は各窓口へ確認してください。参考資料確認:2026年10月25日。

