一回選んだ道を、正解にしていけばいい」ゆうたさん/メルボルン大学在学・高校2年生で不登校を経験
「うちの子は、進路のことをどう考えているんだろう」「不登校を経験した子は、その先どうなっていくんだろう」。そんな気持ちを抱えている保護者の方へ。
進路は、一人で考えるより、少し先を歩く人にぶつけたほうが早く見えてきます。この記事では、2026年9月26日にNIJINアカデミーのメタバース校舎で開いた「進路勉強会」のようすを、編集部がお伝えします。中学生3人が自分の進路と迷いを発表し、高校2年生で不登校を経験した現役大学生・ゆうたさんと、タツロー校長がその場で答えました。
- 夢がはっきりしているまっぴさんクライミングで世界を目指す中学2年生は、英語を学ぶ理由と方法を持ち帰りました。
- 「目標がない」と発表したたけんぴさん将棋アマ四段の中学2年生は、1時間のうちに、人生のとらえ方を自分の言葉で書き換えました。
- 飛び入りで手を挙げたスターさん「休むと不安になる」という悩みを、その場でぶつけました。
- 答えたのは、不登校を経験した大学生ゆうたさんは「僕も実際そうだった」という立場から、三人それぞれに具体的な助言を返しました。
NIJINアカデミーは、全国から累計1000名を超える子どもたちが在籍する、不登校の小中学生のためのオルタナティブスクールです。進路サポートの一つとして、進路について学び、考える場を毎月開いています。今回はその中から、生徒自身が登壇した「進路プレゼン」の時間をレポートします。
「進路勉強会」とは——生徒が発表し、先輩と校長が答える場
進路について考える方法は、話を聞くことだけではありません。司会の先生は冒頭で、こう話しました。自分で情報を得ることも進路の勉強になる。けれど、自分の思いを発表することは、いちばん自分を見つめる機会になる、と。
この日の進路プレゼンは、その考えを形にしたものです。生徒が自分の進路や迷いを発表する。聞いた大人が、評価ではなく、自分の経験をもとにフィードバックを返す。約1時間、メタバース校舎で行われ、YouTubeでも配信されました。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 名称 | 進路勉強会(講演会+進路プレゼン) |
| 開催日 | 2026年9月26日(土)夜 |
| 会場 | NIJINアカデミー メタバース校舎(オンライン) |
| ゲスト | ゆうたさん(世界22位のメルボルン大学に在学。高校2年生で不登校を経験) |
| フィードバック | ゆうたさん、タツロー校長(星野達郎) |
| 発表した生徒 | まっぴさん、たけんぴさん、スターさん(飛び入り) |
当日の流れ
- オープニングタツロー校長がゆうたさんを紹介。会場の緊張がほぐれます。
- まっぴさんの発表クライミングのW杯選手、そしてルートセッターという夢について。
- たけんぴさんの発表「人生の目標がない」という迷いと、三つの質問。
- スターさんの飛び入り好きなことから離れると不安になる、という悩み。
- 記念撮影とメッセージゆうたさんから、子どもたちへの言葉。

ゲスト|高校2年生で不登校を経験した、ゆうたさん
冒頭、タツロー校長はゆうたさんを「相変わらずかっこよくて、イケイケでね」と紹介しました。ゆうたさんは「まあ、そんなんわかってるんですよ」と返し、笑いが起きます。
校長が「ゆうたくん自身も、不登校だったんだよね」と水を向けると、ゆうたさんは「そうですね。高校2年生のとき、学校に行っていませんでしたね」と答えました。そのゆうたさんが、いまは、世界22位のメルボルン大学(オーストラリア)で学んでいます。
ゆうたさんがこの日くり返し口にしたのは、「僕も実際そうだった」という言葉です。警察官や先生になりたいと思って、どちらも諦めたこと。英語を勉強しながら、どこに向かっているのかわからなかったこと。うまくいった話より、迷っていた頃の話を多く語りました。

10月24日(土)です
ゲストは、不登校を経験し、通信制高校から四年制大学へ進んだ蒼葉レイさん。後半は在校生の進路プレゼンです。オンライン開催、保護者の方だけのご参加も歓迎します。
発表①|まっぴさん「クライミングの選手が、最終目標ではありません」
最初に登壇したのは、中学2年生のまっぴさんです。「緊張します」と言いながら、スライドを使って発表しました。
クライミング歴は4年。ケガや手術を乗り越え、2週間前の公式の全国大会では、昨年の64人中63位から87人中26位まで順位を上げました。そして、選手を引退したあとは世界で活躍するルートセッターになりたい、そのために英語を話せるようになりたい、と語りました。
タツロー校長は、英語を続ける秘訣として「幸せにしたい人を思い浮かべること」を伝えました。ゆうたさんは、もう一歩具体的です。
ゆうたさん「『英語をやりたい』って、正直、大きすぎるんです。『走りたい』と言っているようなもの。でも、その先に何がやりたいかが見えていると、すごくいい。まっぴくんのいいところは、そのゴールがいま見えていることです」
クライミングの英語にしぼって学ぶこと。そして、実際に話してみること。この二つの軸で進めれば夢は叶うと思う、とゆうたさんは締めくくりました。まっぴさんは「すごくいいアドバイスをもらえて、安心しました」と話しています。
まっぴさんの発表と、二人からのアドバイスは、こちらの記事でくわしくお伝えしています。 まっぴさんの記事を読む →

発表②|たけんぴさん「僕は、人生の目標がないです」
続いて登壇したのは、同じく中学2年生のたけんぴさん。将棋歴10年以上、アマ四段の腕前です。けれど第一声は、「僕は目標がないです。人生の目標がないです」でした。
プロ棋士は難しいとわかっている。進路は何も決まっていない。高校を全日制にするか通信制にするかも迷っている。たけんぴさんは、三つの質問を用意していました。将来の目標の決め方。進路が決まっていない今やったほうがいいこと。全日制が苦にならない場合は行ったほうがいいのか。
タツロー校長の答えは、「目標は、決める必要ないよ」。校長自身、人生の目標が決まったのは30歳だったと明かしました。ゆうたさんは「僕、この質問、大好きです」と言い、やりたいことが見つからないときは「こうなりたくない」から逆算する方法を伝えます。
ゆうたさん「正解なんて誰にもわからないし、未来は誰にも見えない。だから、一回選んだ道を正解にできるように頑張ってみればいい。それで駄目だったとしても、それは失敗じゃなくて経験だから」
やりとりの最後、たけんぴさんは自分の言葉でこうまとめました。人生を、巻き戻せない一局の対局だと考えていた。でも、経験することが一局の将棋で、最終的に完成するのが自分の棋風なのだと思った、と。司会が「すごいまとめ方だ」と驚いた場面です。
たけんぴさんの1時間の変化は、こちらの記事でくわしくお伝えしています。 たけんぴさんの記事を読む →

飛び入り|スターさん「休むと、不安になるんです」
二人の発表が終わったところで、予定になかったことが起きました。聞いていたスターさんが、「自分も話したい」と手を挙げたのです。準備したスライドはありません。その場で考えながら、話し始めました。
スターさんは、3Dモデリングや、AIを使ったものづくりに夢中です。やりたい方向は、自分の中である程度はっきりしている。けれど、悩みがありました。創作に向かっているあいだは「自分の将来は大丈夫だ」と思えるのに、休憩したり、別の遊びをしたりして手を止めると、とたんに不安になる。だから、心から休むことができず、疲れがたまっていく。どうやって休めばいいのか、という相談でした。
ゆうたさんは「めちゃめちゃ共感しかない」と答えました。自分も、一日に予定を詰めこんでしまう性格なのだそうです。そのうえで伝えたのは、二つのことでした。
一つは、休み方を変えること。休むときは、いったんデジタルから離れる。人に会って話す、おいしいものを食べる、出かける、体を動かす、音楽を聴く。もう一つは、やることを区切ること。「今日はここまで」と紙に書いておけば、そこまでやったら休んでいい、と切り替えられる。不安な気持ちは持っていていい、とも言い添えました。
タツロー校長は、「こうやって飛び入りできるのがすごい。どこでも生きていける気がする」と声をかけました。聞いているだけのつもりだった生徒が、前の二人の姿を見て、自分から手を挙げる。この場のいちばんの成果は、そこにあったのかもしれません。

相談の中身は違っても、答えには通じるものがありました。
「英語をやりたい」では走れない。その先に何をしたいのかを決めると、進む方向が見えます。
興味があることは全力で。興味がないことも、とりあえずやってみる。一つひとつが、あとで線になります。
正解は誰にもわからない。駄目だったとしても、それは失敗ではなく経験です。
そのまま話せる場があります
NIJINアカデミーでは、生徒が進路を発表し、少し先を歩く先輩や校長からアドバイスを受ける「進路勉強会」を毎月開いています。まずは個別相談で、お子さんの今をお聞かせください。
ゆうたさんの歩み——「全然別の場所にあったものが、つながる」
この日のゆうたさんの言葉に説得力があったのは、きれいな成功談を語らなかったからです。たけんぴさんに「何でも経験してみろ」と伝えたあと、ゆうたさんは自分の歩みをそのまま話しました。
そして、自分の歩みを例に挙げます。いまゆうたさんは「日本を海外にマーケティングしたい」という目標を持っていますが、そこへ一直線に進んだわけではありませんでした。
最初は、ただ海外に行きたかった。行ってみたら、中国出身の人に「日本人とは話したくない」と言われた。なんだこの野郎、と思ったそうです。そのとき、別の中国人の友だちに相談すると、背景にある歴史や政治のことを教えてくれました。それを面白いと感じて、中国語を勉強し始めます。すると、中国人の彼女ができた。彼女は日本のことが大好きで、「日本なんて」と言っていたゆうたさんに、「日本ってすごいんだよ」と教えてくれたそうです。
帰国したとき、それまで悪いところばかり見ていた日本の、良いところに目が向くようになっていました。SNSでの発信もしていた。英語も話せる。海外の人が日本をどう見ているかも知っている。だったら、この良さをもっと広めたらどうだろう。そうして、いまの目標にたどり着きました。
ゆうたさん「いま綺麗に話したから綺麗に見えますけど、これは全然別の場所にあったものなんです。中国語をやるなんて、思ってもいなかった。でも、やっていったら、ピーッとつながるときが来るんですよ」
嫌な思いをしたことが、学ぶきっかけになった。学んだ先で出会った人が、自分の国の良さを教えてくれた。どれも、計画して起きたことではありません。
ゆうたさんは、香港でカエルを食べた話もしました。おいしかったけれど、見た目がちょっと。もう食べないと思う。それでも、「やったから気づけること」だ、と笑います。14歳まで食べたことがなかったミートソースを初めて口にして感動した、という話も飛び出しました。
一つひとつは、別々の出来事でした。
高校2年生で不登校を経験。「海外に出ないまま終わるのは嫌だ」と留学を決めます。
「日本人とは話したくない」と言われたことをきっかけに、歴史を知り、中国語を学び始めます。
日本が好きな人との出会いで、見え方が変わる。「日本を海外に伝えたい」という目標へ。
不登校の時期があると、保護者の方は「この空白が、あとで不利にならないか」と心配になります。ゆうたさんの歩みは、その心配に一つの答えを示しています。まっすぐ進まなかった時間も、嫌な思いをした出来事も、あとから振り返れば線の一部になっている、ということです。
タツロー校長が語ったこと——「発表することが、未来を切り拓く」
この日、タツロー校長は生徒の話を聞きながら、自分の話をいくつもしました。英語が苦手で、中学1年生のときに英検5級に落ちたこと。人生の目標が決まったのは30歳で、それまでは生きることを面倒に感じていた時期が長かったこと。中学生のころには、死んだら楽なんだろうな、と思ったこともあったこと。大学を選んだ理由は「いちばん楽そうだったから」で、入ってすぐに行かなくなったこと。
格好のつく話ではありません。けれど、校長が先に自分の迷いをさらけ出すから、生徒も「目標がない」と言えます。校長は、損得で人生を決めたことはなかった、とも話しました。高校で部活のマネージャーをしていた経験が、いまの会社の経営に生きている。何がどうつながるかは、あとになってみないとわからない、と。
タツロー校長「こういうところで発表するということが、未来を切り拓いていく感じがしますよね。ここにちゃんと挑戦しに来た、というところが大きいんじゃないかな」

不登校の時期は、無駄じゃなかった——ゆうたさんが子どもたちに残した言葉
高校2年生で、学校に行けなくなったこと。警察官や先生という夢を、諦めたこと。海外でぶつけられた、きつい言葉。ゆうたさんがこの日語ったのは、うまくいかなかった出来事ばかりでした。
けれど、その一つひとつが、いまの目標につながっています。「一個一個が、あとで絶対に線になる」。ゆうたさんの歩みは、その言葉どおりでした。不登校の時期も、遠回りに見えた時間も、無駄にはなっていません。
終わりに、司会がゆうたさんに感想を求めました。
ゆうたさん「みなさん、すごく若いのにいろいろ考えているのが、すごくよかったです。自分を信じて頑張ってくれるといいなと思います。僕は、ちょっと先で待ってます。もう駄目かも、と思うときや、やってみてこれがよかった、ということがあったら、校長や僕に共有してもらえるとうれしいです。自分の人生の主人公は、自分なので」
たけんぴさんには「将来に不安になったら、僕のところにおいで」、スターさんには「わからなければ、いつでも聞いて」。ゆうたさんは、一人ひとりに、この先もつながり続ける約束をして場を終えました。
不登校を経験した子にとって、「その先」を生きている年上の人と知り合えることには、大きな意味があります。話を一度聞いて終わりではなく、困ったときに相談できる相手が一人増える。それが、この場のもう一つの価値です。

なぜ、この場で子どもは変わるのか|進路勉強会の三つの特徴
1時間のあいだに、三人の表情と言葉ははっきり変わりました。それは偶然ではなく、この場のつくりに理由があります。
「決まっていない」を、そのまま発表していい
進路の発表会は、決まった夢を披露する場になりがちです。ここでは、迷っていること、わからないこと、不安なことを、そのまま持ち込めます。司会の先生は最後にこう話しました。将来の夢に向かっていることもすごい。迷っていることをきちんと言葉にできることも、すごい力だ、と。
答えるのは、少し先を歩く「元・当事者」
ゆうたさんは、専門家としてではなく、高校2年生で不登校を経験した一人として話しました。親や先生の言葉は素直に聞けない年ごろでも、数年先を歩く先輩の言葉なら届くことがあります。回ごとにゲストが替わるので、子どもたちはいろいろな生き方に出会えます。
校長が、いちばん先に弱さを見せる
大人が正しいことだけを語る場では、子どもは本音を出せません。タツロー校長は、目標がなかった30年間のことも、つらかった中学時代のことも、生徒の前で話しました。だから生徒も、「目標がない」「不安だ」と言えます。
保護者の方へ|この場から持ち帰れること
進路勉強会は、子どもだけのための場ではありません。保護者の方にとっても、わが子と同じ年ごろの子が何を考え、何に迷っているのかを知る機会になります。
| こんな気持ちのとき | この場で見えてくること |
|---|---|
| うちの子は、将来のことを何も考えていないように見える | 「目標がない」と言う子ほど、深く考えていることがある |
| 不登校の時期が、あとで不利にならないか心配 | 不登校を経験した先輩が、その後どう歩いているのかを直接聞ける |
| 好きなことばかりしていて、進路につながる気がしない | 「好き」の先を具体的に描くと、学ぶ理由が出てくる |
| 全日制か通信制か、親が決めていいのかわからない | 「合わなければ変えてもいい」という前提で考えられる |
| 子どもに何と声をかければいいのかわからない | 評価や助言の前に、理由を聞く。そのやり方を実際に見られる |
ご家庭で、今日からできること
- 夢の話を聞いたとき、実現できるかどうかを先に判断しない
- 「やりたいことがない」と言われたら、「こうはなりたくない、はある?」と聞いてみる
- 損か得か、有利か不利かだけで進路をすすめない
- 一度選んだら変えられない、という前提で話さない
- 家族以外の大人に、迷いを話せる機会をつくる
最後の一つは、ご家庭だけで用意するのが難しいものです。進路勉強会のような場を、その機会として使ってください。
タツロー校長が話したように、「消えてしまいたい」と感じる時期を通る子もいます。眠れない、食欲がない、強い落ち込みが続くなど、気になる様子があるときは、ご家庭だけで抱えず、医療機関や専門の相談窓口への相談も選択肢に入れてください。
進路勉強会は、毎月開いています
司会の先生は最後に、こう呼びかけました。今日の発表を見て、自分も話したい、聞きたい、アドバイスがほしい、と思った人がきっといる。来月以降も毎月、進路プレゼンを続けていくので、今日登壇しなかった人もぜひ挑戦してほしい、と。
進路勉強会は、毎月第4土曜日に開催しています。回ごとにさまざまなゲストを招き、いろいろな方向からアドバイスをもらえる機会をつくっていきます。
2026年10月24日(土)19:00〜20:00、オンラインで開催します。ゲストは、不登校を経験し、通信制高校を経て四年制大学へ進んだ蒼葉レイさん。後半は、在校生による進路プレゼンと、タツロー校長も参加する進路勉強会です。一般参加は500円(NIJINアカデミー生は無料)、お申し込みは10月22日までです。 くわしく見る・申し込む →
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よくある質問
まとめ
夢がはっきりしているまっぴさん。目標がないと発表したたけんぴさん。飛び入りで悩みをぶつけたスターさん。三人の出発点は、まったく違いました。
それでも、三人とも、自分の言葉で話し、問い返され、答え、助言を受け取って帰りました。ゆうたさんは「僕も実際そうだった」と語り、タツロー校長は自分の迷いをそのまま話しました。
進路は、決まっている子だけが考えるものではありません。迷っていることを言葉にできる場があり、それを本気で聞いてくれる大人がいる。そこから、次の一歩は見えてきます。
不登校の時期も、迷っている時間も、あとで線になる。少し先を歩く人が、自分の歩みでそれを見せてくれた夜でした。
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