「自分がこんなにやかましい子だとは思わなかった」――気を遣いすぎて消耗していたたっくんが、NIJINアカデミーで自分らしさを取り戻すまで
たっくん(小学4年生)
- 本人
- たっくん・ASD傾向のある2E(ギフテッド)タイプ
- 学校での困り感
- 友達関係のトラブルはなかったが、周りに気を遣いすぎて消耗し、体が痛くなるほどのストレスを抱えていた
- 入学まで
- 学校の授業のペースが合わず「つまらなさ」を感じていたことに加え、発達の特性から「書くこと」への苦手意識も強かった
- 得意なこと
- 算数、プログラミング、タイピング、アニメーション制作
- 現在
- クラス会議での企画立案やプログラミング講座の「先生役」を経験し、現在は「ラジオ体操プロジェクト」の中心メンバーとして活動中
友達もいた。対人トラブルもなかった。それでも学校では、いつも気を張りつめて疲れ果てていたたっくん。ASD傾向のある2E(Twice-Exceptional:発達の特性と、特定分野で高い力を併せ持つタイプ)の子です。
NIJINアカデミーに入学してからは、クラスのリーダー的存在として企画や講座を次々と生み出し、今では仲間を巻き込んでプロジェクトの中心を担うまでに変化しました。今回は、そんなたっくんの変化について、担任の視点からレポートします。
あわせて、「環境が合う」ということが2E・発達特性のある子どもにどんな変化をもたらすのかも、データとあわせてご紹介します。
※本記事は、本人・保護者への直接インタビューではなく、日々の関わりの中で担任が見てきた様子をもとにまとめた観察レポートです。
※記事中の写真は、個人情報保護のため名前の表示部分を加工しています。
- 友達関係にトラブルはなかったが、周りに気を遣いすぎて心身が消耗し、体が痛くなるほどのストレスを抱えていた
- NIJINアカデミー入学後、周りに合わせるストレスから解放され、自分らしく元気に過ごせるように
- クラス会議での「認め合う」関わりの中で、クラスのリーダー的存在に成長
- 「書く」ことが少ない学びの環境が、得意なプログラミング・タイピング・アニメーション制作を生かした学びにフィット
- プログラミング講座の「先生役」として、周りを気遣いながら教える力を発揮
- 「自分がやりたい」だけでなく、「みんなを巻き込む」行動へ ―― 現在はラジオ体操プロジェクトの中心メンバーとして活動中
1NIJINアカデミーの「クラス会議」ってどんなところ?
NIJINアカデミーには、8人制のオンライン学級と、メタバース校舎という「いつでも行ける居場所」があります。たっくんが所属するSUN校舎では、毎週メタバース校舎の4階に集まってクラス会議を開いています。カメラをオンにする子、アバターのまま参加する子、聞いているだけの子。参加のしかたは、その日の調子に合わせて自由です。

クラス会議で大切にしているのは、「何を言っても認められる」空気づくりです。とにかく、その子のいいところを拾い上げること、そんな時の「さばき方」も、マイナスにせずポジティブに変換して伝えることを心がけてきました。
- やりたい企画は、子どもが自分で提案して自分で立ち上げる
- カメラ・マイク・アバター、参加のしかたはその日の調子に合わせて選べる
- 意見がぶつかっても、否定ではなくポジティブな言葉に変換して返す
2「クタクタ」から「やかましいくらい元気」に
気を遣いすぎて消耗していた、学校生活
たっくんは、学校で友達関係のトラブルを抱えていたわけではありません。友達もいましたし、いじめられていたわけでもありませんでした。
けれど、人一倍繊細で、感覚が敏感な子でした。友達同士のちょっとした意見の違いや、その場の空気を「見えすぎて」しまう。それぞれが平和に丸く収まればいいのに、全員に気を配りすぎてしまう ―― そんな困り感を抱えていました。
気を遣い、空気を読み、周りに合わせすぎて、心も体もクタクタになってしまう。最終的には、体が痛くなるほどのストレスを抱えるようになっていました。
学習面でも、困り感がありました。算数は得意な一方で、授業のペースが本人に合わず「つまらなさ」を感じていたこと。そして発達の特性から、「書くこと」に強い苦手意識と辛さを抱えていたことです。
お母さまから見た、以前のたっくん

友達同士の見解や仲裁が見えすぎてしまい、それぞれが丸く収まればいいのにと、全部に気を遣いすぎて苦しくなってしまっていた
一方で、お母さまからは少し違う角度からの困り感も伺っています。「人の気持ちが分からないところがある」というものです。周りの空気は敏感に感じ取れる一方で、一人ひとりの気持ちを正確に汲み取ることには、また別の難しさがあったようです。気を遣いすぎてしまう繊細さと、人の気持ちの理解の難しさ ―― 一見矛盾するようですが、これもまた、たっくんという子の特性の複雑さだと感じています。
入学してすぐ、様子が変わった
NIJINアカデミーに入学してすぐ、たっくんの様子に変化が現れました。

自分がこんなにやかましい子だとは思わなかった
本人がそう言うくらい、楽しく元気に過ごせるようになったそうです。人間関係や周りに合わせることへのストレスがなくなり、体の痛みも出なくなったといいます。自分らしく大きな声も出せるし、やりたいこともやれる ―― たっくんが特に気に入っているのは、NIJINアカデミーの「自由さ」だと話してくれました。
お母さまも、体の痛みが出なくなったこと、そして自分らしく元気に過ごせるようになったことを、大きな変化として感じているようです。
授業が「苦」から「楽しい」に変わった学び方
NIJINアカデミーの授業は「書く」ことが少なく、たっくんにとても合っていました。得意なプログラミングやタイピング、アニメーション制作を通して自分を表現しながら学べることが、大きな支えになっています。
その結果、たっくんはほぼすべての授業に出席しています。学校では「苦」だった授業が、NIJINアカデミーでは「楽しい」に変わりました。一つひとつの学びをじっくり考えながら、着実に理解を深めている様子が見られます。
3「先生役」から「ラジオ体操プロジェクト」へ
クラスのリーダー的存在へ
「何を言っても認められる」関わりを重ねる中で、たっくんはクラスのリーダー的存在になっていきました。「たっくんがいたら本当に助かる」「たっくんが引っ張ってくれている」という安心感が、クラスの中に生まれています。
あるクラスメイトは、こんな言葉を残しています。
たっくんがいるから、このクラスでは挑戦できる。失敗しても、挑戦できる
「先生役」としての才能の発見
たっくんは、「やりたい」「発言したい」という気持ちがとても強い子です。その強さを生かして、クラス会議では自らプログラミング講座やデザート作りの回など、みんなが楽しめる企画を次々と立ち上げてきました。
中でも印象的だったのは、プログラミング講座での「先生役」としての姿です。ただ自分の知識を披露するのではなく、周りを気遣いながら教える様子がとても上手で、私たちスタッフも驚かされました。この力は、クラスの中だけにとどめておくにはもったいないと感じており、今後はより広い場での展開も検討しています。
「自分がやりたい」から「みんなを巻き込む」へ
たっくんは、もともと周りへの思いやりを強く持った子でした。ただ、学校という環境が合わなかったために、その優しさをうまく発揮できずにいました。気を遣いすぎることで、優しさが「苦しさ」に変わってしまっていたのです。
環境がフィットしたことで、その思いやりは健全な形で広がっていきました。思ったことを素直に発言し、クラスメイトをフォローする役割を自然に担うようになりました。
そして今、たっくんは「自分がやりたい」だけでなく、「みんなを巻き込む」ところまで成長しています。その象徴が、中心メンバーとして力を注いでいる「ラジオ体操プロジェクト」です。不登校で家から出づらく、運動の機会が減ってしまっている子どもたちに向けて、「自分たちで一緒に運動をやっていこう」と呼びかける取り組みです。
- クラス会議で、プログラミング講座やデザート作りの回を自ら企画
- プログラミング講座では「先生役」として、周りを気遣いながら教える
- ラジオ体操プロジェクトの中心メンバーとして、仲間の健康を考えて行動
自分の「楽しい」を、周りの「健康」につなげる行動へ ―― かつて気を遣いすぎて消耗していたたっくんが、今では周りを支える存在になっています。
【担任の視点】まだまだ伸びしろのあるたっくん

たっくんは、クラス会議やホームルームで、次々と新しい企画を提案してくれる存在です。プログラミング講座やデザート作りの回など、「こんなアイデアがあったか」と驚かされることばかりです。
印象的なのは、プログラミング講座で見せた「先生役」としての姿です。ただ知識を伝えるだけでなく、周りを気遣いながら教える様子には、私たちも気づかされることが多くありました。
そして何より、「自分がやりたい」から「みんなを巻き込む」への成長です。ラジオ体操プロジェクトの中心メンバーとして、周りの子どもたちの健康を考えて行動する姿には、たっくんの優しさが、健全な形で発揮されていることを感じます。
クラス会議で行ったプログラミング講座を全体に向けて展開したり、よりゲーム開発に近い実践的な内容へ発展させたり ―― まだまだ伸びしろのあるたっくん。私たち自身も教師力を上げながら、これからも一緒に挑戦していきたいと思います。
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4なぜ「環境が合う」だけで、子どもはこんなに変わるの?
たっくんの変化は、特別な訓練やプログラムによるものではありません。「合う環境」に移ったこと、それだけです。同じような困り感を抱えるお子さんは、決して少なくありません。
今、不登校の子どもはどれくらいいるの?
文部科学省の最新調査(令和6年度)によると、全国の小・中学校の不登校児童生徒数は353,970人と、過去最多を更新し12年連続で増加しています。児童生徒1,000人あたりでは38.6人、およそ26人に1人という計算になります。「学校に行けない」は、決して特別なことでも珍しいことでもありません。
| 学校段階 | 不登校児童生徒数(令和6年度) |
|---|---|
| 小学校 | 137,704人 |
| 中学校 | 216,266人 |
| 合計 | 353,970人(過去最多・12年連続増加) |
出典:文部科学省「令和6年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果」(令和7年10月29日公表)
教室の中に、たっくんのような子は何人いる?
文部科学省が令和4年に実施した調査では、通常の学級に在籍していて、知的発達に遅れはないものの「学習面又は行動面で著しい困難を示す」とされた小中学生の割合は8.8%と推計されました。35人学級であれば、1クラスにおよそ3人。たっくんのように、周りからは「困っているように見えない」子も、この中に含まれています。
小中学校の通常の学級で、学習面・行動面に著しい困難を示すとされた児童生徒の割合(35人学級におよそ3人)
出典:文部科学省「通常の学級に在籍する特別な教育的支援を必要とする児童生徒に関する調査結果(令和4年)」
2E(Twice-Exceptional/二重に特別な)とは?
発達の特性による困難と、特定の分野での高い力を併せ持つ子どものことです。得意な面が困難を覆い隠してしまい、逆に困難が得意を発揮する機会を奪ってしまうため、どちらの面も気づかれにくいという難しさがあります。
国も、この分野への支援を進めています。文部科学省は「特定分野に特異な才能のある児童生徒に対する学校における指導・支援の在り方等に関する有識者会議」を設置し、令和4年に審議のまとめを公表。特異な才能のある児童生徒が、学校の中で困難を抱えやすいことにも触れられています。
たっくんの変化に効いた、4つの環境の要素
たっくんの1年を振り返ると、変化を後押しした環境の条件は、次の4つに整理できます。
- 心理的安全性「何を言っても認められる」空気。意見がぶつかっても否定されないとわかると、気を張る必要がなくなる
- 表現手段の選択肢「書く」以外にも、話す・作る・見せるという出口があること。苦手が学びの入口をふさがない
- 自分のペース授業のペースが本人に合っていること。「つまらなさ」が消えると、集中は自然に戻ってくる
- 役割があること企画を出す、教える、みんなを誘う。役割を持てると、気遣いは「消耗」ではなく「力」に変わる
たっくんの気遣いの深さは、もともと持っていた力でした。それが学校では「苦しさ」に変わり、環境が変わったことで「優しさ」として発揮されるようになった ―― 変わったのは本人ではなく、置かれた場所だったのだと感じています。
5家庭でできる、子どもの「好き」と「得意」を伸ばす関わり方
1. 「気を遣えること」を、短所ではなく力として言葉にする
周りに気を配りすぎて疲れてしまう子に、「気にしすぎ」と伝えると、その子は自分の一番の持ち味を否定されたように受け取ってしまいます。「よく見えているんだね」「みんなのことを考えられるんだね」と、まずその力を認めたうえで、「今日は自分のことだけ考えていい日にしようか」と休ませてあげる。力そのものは否定せず、使う量を調整する関わりが、消耗を防ぎます。
2. 「書く」以外の出口を用意する
書くことに強い苦手さがある子にとって、「わかっているのに書けない」状態はとてもつらいものです。話して説明する、写真や動画にする、タイピングで打つ、プログラムや絵で表す ―― 出口を増やすだけで、「できない子」が「できる子」に変わることがあります。たっくんが授業を「楽しい」と感じられるようになったのも、この一点が大きく効いていました。
3. 得意なことを「誰かに教える場」をつくる
得意なことは、一人で伸ばすよりも、誰かに教える場があると一気に伸びます。教えるためには相手の理解度を考える必要があり、それ自体がコミュニケーションの練習にもなります。家庭でも、「今日その作り方、お母さんにも教えて」と頼んでみるだけで十分です。たっくんの「先生役」としての才能も、そうした小さな場から見つかりました。
4. 保護者だけで抱え込まず、外の場ともつながっておく
同じような特性を持つ仲間や、その子の「好き」を面白がってくれる大人が家庭の外にいると、子どもの世界は一気に広がります。オンラインでも、リアルの教室でも構いません。合う場所が一つ見つかるだけで、たっくんのように短期間で変わる子はたくさんいます。NIJINアカデミーも、そうした選択肢の一つです。
まとめ:変わるのは、子どもではなく環境かもしれない
たっくんは、特別なトレーニングを受けたわけではありません。「何を言っても認められる」場所に移り、得意なことで表現できるようになっただけです。それだけで、体の痛みは消え、「やかましいくらい元気」な自分を取り戻し、今では仲間の健康を考えてプロジェクトの中心を担うまでになりました。お子さんが今つらそうにしているとしたら、それはお子さんの問題ではなく、環境との相性の問題かもしれません。
■ 記事担当
NIJINアカデミー SUN校舎 担任/取材・構成:NIJINアカデミー広報
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保護者の方だけのご参加も大丈夫です
