チック症・吃音のある子どもへの理解と、学校生活でできる工夫
まばたきが増える、首を動かす、声が出てしまう、言葉が詰まる――チックや吃音は、本人の意志ではコントロールできない特性です。原因・対応方法と、実際のエピソードをあわせて整理しました。
チックと吃音は別のものです。チックは、まばたきや咳払いなどの動きや声が思わず繰り返し出ること、吃音は、話すときに音を繰り返したり言葉が詰まったりすることを指します。どちらも本人の意志ではコントロールしにくく、育て方が原因ではありません。両方がみられるお子さんもいます。
チック症とは?
チック症とは、神経系の特性により、無意識のうちに特定の身体の動きや声が出てしまう症状のことです。突然で反復的、かつ本人にとって目的のない動作や発声で、遅くとも18歳未満に発症します。
- 運動チック:まばたきが増える、首を動かすなど、体がビクっと動くタイプ
- 音声チック:咳払い、「アッ!」という叫び声など、突然声が出てしまうタイプ
長期休暇明け、かぜをひいたとき、疲れ、睡眠不足などで症状が悪化しやすいと言われています。男の子に多く、家族にチックのある人がいることも珍しくありません。まずは自己判断で諦めず、きちんと検査して診断をつけることも大切です。
チックと吃音の違い
【図解1】チックと吃音の違い 比較表|似て見えるが、起きていることが違う
| 見るところ | チック | 吃音 |
|---|---|---|
| どこに出るか | まばたき、首振り、肩すくめ、咳払い、鼻すすりなど | 話し言葉のなめらかさ(音の繰り返し・引き伸ばし・出だしで詰まる) |
| 出方 | 突発的に、繰り返し起こる | 話そうとしたときに起こる |
| 本人の意識 | 直前に「出そうな感じ」があることが多い。一時的には我慢できるがあとで増える | 言いたい言葉は決まっているのに、音が出てこない |
| 波 | 緊張・疲労・環境の変化で強くなったり弱くなったりする | 同じく波がある。相手や場面によって大きく変わる |
| まわりの反応の影響 | 指摘されるほど意識して増えやすい | 言い直させる・先回りするほど話しにくくなる |
| 家庭での基本 | 気づいても触れない。指摘しない | 最後まで待つ。急かさない・言い直させない |
吃音とは、言葉の一部を繰り返す・引き伸ばす・詰まるなど、意志でコントロールしにくい発話の特性です。チックと同じく、本人の意志で止められるものではなく、育て方が原因でもありません。チックは体の動きや発声が突然出る症状、吃音は言葉の流暢性に関わる症状という違いがありますが、どちらも周囲の理解と安心できる環境が支えになる点は共通しています。
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チック症の分類
【図解2】チックの分類 早見表|言葉の整理
| 分け方 | 種類 | 内容 |
|---|---|---|
| 出方で分ける | 運動チック | まばたき、顔をしかめる、首を振る、肩をすくめる、体をひねる |
| 出方で分ける | 音声チック | 咳払い、鼻すすり、「あっ」などの発声、言葉を繰り返す |
| 複雑さで分ける | 単純性 | 短く、ひとつの動き・ひとつの音 |
| 複雑さで分ける | 複雑性 | いくつかの動きが組み合わさる/意味のある言葉に見える |
| 続いた期間で分ける | 暫定的チック症 | 始まってから1年未満 |
| 続いた期間で分ける | 持続性(慢性)チック症 | 運動または音声のどちらかが1年以上続く |
| 続いた期間で分ける | トゥレット症 | 運動チックと音声チックの両方が1年以上続く |
①一過性チック症
一時的にチックが現れるもので、通常1年以内に消失します。子どもに最も多く見られるタイプです。
②慢性チック症
運動チックまたは音声チックのいずれかが1年以上持続するものを指します。
③トゥレット症候群
複数の運動チックと、少なくとも1つの音声チックが1年以上続く状態です。「慢性チック症」とも言えます。
経過としては、小学校低学年で発症し、小学校高学年で症状が最も目立つ時期を迎え、成人する頃には目立ちにくくなることが多いとされています(3分の1程度は成人すると症状が軽くなり、3分の2程度は症状が続くとも言われます)。不安・ストレス・緊張があると、一時的に症状が悪化することがあります。
なお、トゥレット症候群やチック症のある方は、映画監督や国民的アイドルグループのメンバーなど、著名な方の中にも少なくありません。チックがあるからといって、それだけで社会生活が特別不利になるわけではないのです。
チック症の原因
チック症の原因は、まだ完全には解明されていませんが、いくつかの要因が関与していると考えられています。
遺伝的要因
家族にチック症・トゥレット症候群・強迫性障害がある場合、発症しやすくなる傾向があります。神経伝達物質ドーパミンのバランスとの関連が指摘されています。
環境的要因・ストレス
成績のプレッシャーや人間関係の悩み、新しい環境への適応、家庭内の変化などが、チックの頻度や強度を増す引き金になることがあります。
神経生理学的要因
ドーパミンやセロトニンといった神経伝達物質の不均衡が、症状の発生に関与しているとされています。
また、トゥレット症候群はADHD(注意欠如・多動症)や強迫性障害などを合併しやすいことが知られており、成長・発育の様子をあわせてチェックすることも大切です。
学校生活での対応
【図解3】学校に依頼することチェックリスト|何を・誰に・どう伝えるか
| 依頼すること | 伝え方の例 | 相談先 |
|---|---|---|
| 本人に指摘しない・注意しない | 「止めなさい」と言われると増えてしまう特性です | 担任・学年の先生全員 |
| クラスの子への説明の仕方を相談する | 本人が説明してほしいか、してほしくないかを先に確認する | 担任 |
| 音が出る場面での配慮 | テストや静かな時間に別室を選べるようにする | 担任・学年主任 |
| 音読・発表の進め方 | 順番を決めない/読む量を選べる/代わりの形を用意する | 担任・教科担任 |
| からかいが起きたときの対応 | 起きたその場で止める、と先に決めておく | 担任 |
| 疲れたときに抜けられる場所 | 保健室・相談室を使ってよいことにする | 養護教諭 |
| 体調の波を共有する | 強く出る時期は事前に一言伝える | 担任・スクールカウンセラー |
チック症の子どもにとって、周囲の理解が不足していると、症状を恥ずかしく感じ、引きこもりや不安につながることがあります。学校生活で意識したいポイントを4つ紹介します。
周囲の理解を促進する
チックは意志の力で止められないものであることを教師が理解し、否定的な反応や不必要な注目を避けます。クラスメイトへの説明も、からかいを防ぐうえで有効です。
ストレスを軽減する環境をつくる
症状が強くなったときに一時的に休めるスペースを用意したり、呼吸法などのリラクゼーションを教えたりすることで、症状の緩和につながります。
柔軟に対応する
テストの時間延長や別室受験、発表・朗読での配慮、宿題量の調整など、状況に応じた柔軟な対応が助けになります。
家族と学校が連携する
保護者と教師が定期的に情報を共有し、家庭でもリラックスできる環境や余暇の時間を整えることが、症状の安定につながります。
NIJINアカデミーで自分らしさを取り戻した子どもたちと保護者が、自分の言葉で語ったインタビューです。
小1で不登校に|生徒インタビュー「学校っていう場所が、自分には合ってなかったっぽい」かなでさんが見つけた、爽やかな毎日
小6|生徒インタビュー「苦しいんだったらちゃんとみんなに言う」不登校を経験した僕が、そのままの自分でいられるようになるまで
中1の母|保護者インタビューオンラインスクールを選んで正解だったのか――悩み続けた母が見た、娘の変化
チックの治療
チック症の治療には、主に生活指導(認知行動療法)・薬・手術の3つがあります。まずは認知行動療法(ハビットリバーサルトレーニングなど、チックが起こりそうなときに代わりの動作を行う練習)を行い、必要に応じて薬による治療を検討する、という順序で進むのが一般的です。
からかわれていても、周りがそれを個性として受け止め、本人の自己評価が下がっていないうちは、薬を使う必要は基本的にありません。逆に、本人が「自分はだめな人間なんだ」と感じ始めているなら、それは治療を検討するサインです。
薬による治療が検討される場合、日本やヨーロッパではリスペリドンやアリピプラゾールなどが、アメリカではクロニジンなどが最初に使われることが多いとされています。どの治療が適しているかは個々の状況によって異なるため、専門医との相談のもとで判断することが大切です。
なお、チック症は発達障害者支援法において発達障害に分類されており、特別支援教育を含めた社会的な支援を受けられる場合があります。お住まいの市区町村の窓口で、利用できる支援を確認してみましょう。
学校以外の「居場所」を先に用意しておく
NIJINアカデミーは、午前でも午後からでも参加できるオンラインのオルタナティブスクールです。在籍校の出席扱いになる例も多く、まずは体験会で雰囲気を見てから決められます。
LINEで無料体験会に申し込む保護者への手紙 ― チックは「SOSのサイン」
実際に寄せられた、ある保護者からの相談とその返信を紹介します。5年生になり係や仕事が増え、「疲れた」とため息をつきながら帰宅するようになった頃から、まばたきや首の動きが増えたというご相談でした。
お子さんの症状は、チック症でしょう。今回チックの症状が出ているということは、お子さんからのSOSのサインだと思ってください。学校を休んでも、習い事を休ませてもかまいません。子どもらしく、のんびりしたり遊んだりする時間、お父さんお母さんとゆっくり過ごす時間をつくってあげてください。
親御さんが絶えずイライラしていると、子どもは「自分が愛されていない」「自分が悪いからこうなる」と感じやすくなり、自信を持てなくなってしまいます。反対に、安心できる雰囲気の中では、自分を肯定的にとらえ、いきいきと前向きに生きる力が育っていきます。この機会に、子育てそのものを見直してみるのもよいかもしれません。
吃音のある黒音さんの物語
チックと同じく、本人の意志ではコントロールしづらく、周囲に誤解されやすい特性に「吃音」があります。ここでは、吃音のある中学2年生・黒音さんが、NIJINアカデミーで自分のペースを見つけていった物語を紹介します。
中学1年生の最初の頃、相談室登校を試みたものの先生と合わず、一週間ほどで学校に行けなくなった黒音さん。「まさか自分が不登校になるなんて思ってなかった」と当時を振り返ります。家では、絵を描くことで落ち着きを取り戻していったそうです。
2024年12月にNIJINアカデミーに入学。オンラインでの学びに抵抗はなく、「メンバーがほぼ変わらなくて仲がよくて安心できる」というクラス(通称プラ1)が、挑戦の土台になっていきました。
黒音さんには吃音があり、大勢の前や台本のある場では話しづらい場面もあります。それでも、oVice社への改善提案プレゼンでは自然と声が出せたといいます。
「急になら話せるけれど、台本があると逆に話せない」という自分の話しやすいパターンを理解し、発表・作品・チャットなど、場面に応じて伝え方を使い分けるようになった黒音さん。安心できるオンラインの環境と仲間の存在の中で、「やってみたい」が少しずつ増えていきました。
ニュースから考える ― なぜ理解が大切なのか
チックや吃音は、周囲の理解が欠けると、からかいやいじめのきっかけになってしまうことがあります。実際に報道されたニュースを取り上げながら、NIJINアカデミー校長が解説した動画を紹介します。
【中学校教諭が生徒の吃音を嘲笑】いじめが原因で不登校になったニュースについて解説します
報道された事案をもとに、教育現場での理解不足がどのように子どもを追い詰めてしまうかを校長が解説しています。
YouTubeで見る ↗教師やクラスメイトなど、周囲の大人と子どもたちがチックや吃音について正しく理解することは、特別なことではなく、すべての子どもが安心して学べる環境をつくる土台になります。
新学期にチックが強く出るのはなぜか|9月の緊張と、家庭で減らせる負荷
「夏休みの間は落ち着いていたのに、2学期が始まったらまた増えた」——これはとてもよく聞く話です。チックは、緊張・疲労・環境の変化で強くなったり弱くなったりする波を持っています。クラスの空気が変わり、行事が続き、生活リズムが戻りきらない9月は、その波が大きくなりやすい時期です。
増えたこと自体は「悪化」ではない
保護者がいちばん不安になるのがここですが、波があるのはチックの性質そのものです。増えた時期があっても、それが一方向に進むとは限りません。大切なのは「増えた・減った」を毎日数えないことです。数えていると、親の視線が本人に伝わり、それ自体が負荷になります。
家庭で減らせる負荷は3つ
①指摘しない。「また出てるよ」「止めたら?」は、善意でも逆に働きます。気づいても触れない、が基本です。②眠る時間を削らない。疲労は最も分かりやすい増悪要因です。宿題が終わらなくても、寝る時刻を優先してかまいません。③予定を詰めない。9月は行事が重なります。習いごとを1つ休む、週末は何も入れない、という引き算が効きます。
家族で共有しておきたいこと:きょうだいにも「見えても言わない」と伝えておく。祖父母など、たまに会う人ほど指摘しがちなので、会う前に一言お願いしておくと本人が守られます。
受診を考える目安
本人が困っていない段階では、必ずしも治療は必要ありません。一方で、①本人がつらいと言っている ②痛みが出るほど強い ③学校生活が実際に回らなくなっている ④からかいの対象になっている——このいずれかがあるときは、小児科・小児神経科・児童精神科に相談してください。行動療法や、必要に応じた薬の選択肢があります。
学校に行きづらくなってきた場合の声のかけ方は不登校 声かけを、注意の特性が重なっていそうなときはADHD 不登校、対人面のつまずきが目立つときはASD 小学生もあわせてご覧ください。
チックと吃音の違いと関係|併発することはある?
チックと吃音は、どちらも「わざとではないのに出てしまう」ために混同されやすいのですが、あらわれ方が異なります。
| チック | 吃音 | |
|---|---|---|
| あらわれ方 | まばたき・首を振るなどの動きや、咳払い・声が、突然くり返し出る | 話すときに、音をくり返す・引き伸ばす・言葉が詰まって出てこない |
| 出やすい場面 | 話していないときにも出る | 話そうとするときに出る |
| 共通すること | 本人の意志では止めにくい/緊張や疲れで目立ちやすい/育て方が原因ではない/指摘や言い直しをさせると負担になりやすい | |
| 主な相談先 | 小児科・児童精神科・小児神経科 | 小児科・耳鼻咽喉科、言語聴覚士のいる機関、ことばの教室(通級) |
チックと吃音の両方がみられる(併発する)お子さんもいます。その場合も、家庭や学校での基本は同じです。動きや話し方を指摘せず、最後まで聞くこと、安心して過ごせる時間を増やすことが支えになります。どちらなのか見分けがつかないとき、生活に支障が出ているときは、かかりつけの小児科で相談し、必要に応じて専門機関を紹介してもらうと安心です。
まとめ
- チック症は意志の力ではコントロールできない神経系の特性で、育て方が原因ではない
- 一過性・慢性・トゥレット症候群という分類があり、多くは思春期をピークに成人までに軽くなっていく
- 学校生活では「周囲の理解・ストレス軽減・柔軟な対応・家族との連携」の4つがポイント
- 薬による治療が必要かどうかは、本人の自己評価が下がっているかどうかが一つの目安になる
- チックが出てきたときは、子どもからのSOSのサインとして受け止め、休む・のんびり過ごす時間を大切にする
- 吃音など、似たように誤解されやすい特性を持つ子どもにも、安心できる居場所と自分のペースが挑戦の土台になる
特性そのものをなくすことよりも、周囲の理解と、安心して過ごせる環境を整えることが、子どもたちが自分らしく成長していくための一番の支えになります。
Q. チックと吃音は同じものですか?違いは何ですか?
A. どちらも本人の意志ではコントロールしにくい神経系の特性という点は共通していますが、チックは体の動きや発声が突然出る症状、吃音は言葉の一部が詰まったり繰り返されたりする発話の症状という違いがあります。
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