夏休み中は穏やかに過ごしていたのに、新学期が近づくと急に機嫌が悪くなる。学校の話を避ける。夜眠れなくなり、朝は起きられない。「学校に行きたくない」と言う。
こうした変化を見ると、「夏休みで生活リズムが崩れたから」「休み気分が抜けていないから」と考えるかもしれません。
しかし、ASD(自閉スペクトラム症)のある子にとって、夏休み明けは単なる生活の切り替えではありません。
予測しにくい新学期、久しぶりの集団生活、強い感覚刺激、人とのやり取りなど、複数の負担が一度に戻ってくる時期です。
大切なのは、「ASDだから学校に行けない」と結論づけることではありません。
子どもの特性と、今の学校環境のどこにミスマッチがあるのかを見つけ、環境や参加方法を調整することです。
NIJINアカデミーは、2023年の開校以来、不登校や学校生活に難しさを感じる小・中学生を支援してきました。2026年7月時点で、累積900人以上の子どもが参加し、400人以上が在籍しています。
ASDの子が苦手なのは「新学期」ではなく、予測できない新学期かもしれない
ASDの特性の現れ方は一人ひとり異なります。
一般には、相互的なコミュニケーションの難しさ、限定された興味やこだわり、変更への対応の難しさ、感覚の偏りなどが見られることがあります。
そのため、同じ始業式でも、子どもによって負担になる部分は違います。
- 新しい席や時間割が分からなくて不安
- 先生や友達に何を話せばよいか分からない
- 教室の音や人の多さに耐えられるか心配
- 夏休みの宿題を提出できないのが怖い
- 1学期につらかったことが再び始まるように感じる
本人がこれらを整理して説明できるとは限りません。「分からない」「行きたくない」としか言えない場合もあります。
ある一日をたどると見えてくる、学校とのミスマッチ
予定が見えないまま急かされる
ASDのある子は、次に起きることの見通しが持てないと、不安が強くなることがあります。
新学期初日は、持ち物、時間割、座席、担任の話、行事など、普段より予測しにくいことが多い日です。
そこに「早く着替えて」「もう時間だよ」といった声かけが続くと、動けなくなったり、怒ったりすることがあります。
これは怠けているのではなく、何から始めればよいか分からない状態かもしれません。
音・光・におい・人の動きが一気に入ってくる
教室には、椅子を引く音、話し声、放送、照明、給食のにおい、人の動きなど、さまざまな刺激があります。
感覚過敏がある子にとっては、一つひとつが小さな刺激でも、重なると授業内容を聞く余力がなくなることがあります。
周囲からは座っているように見えても、本人は刺激に耐えるだけで精いっぱいということがあります。
曖昧な指示と急な変更が続く
「適当に書いて」「周りを見て動いて」「できた人から次へ」といった曖昧な指示は、何をどこまで行えばよいか分かりにくいことがあります。
予定していた授業が変更されたり、突然グループ活動になったりすると、頭の中で準備していた手順を作り直さなければなりません。
変更そのものより、変更後の見通しが示されないことが負担になる場合があります。
休憩ではなく、最も判断が多い時間になる
休み時間は自由な時間に見えますが、「誰に話しかけるか」「どこにいるか」「どの遊びに入るか」を自分で判断する必要があります。
会話のタイミングや暗黙のルールを読み取ることが難しい子にとって、休み時間は授業以上に疲れることがあります。
一人で過ごしているから寂しいとは限りません。一人になって刺激を減らし、次の授業に備えている場合もあります。
家で荒れるのは、学校で頑張った反動かもしれない
学校では静かに過ごしていたのに、帰宅すると怒る、泣く、何もできなくなる。こうした姿が見られることがあります。
学校で周囲に合わせ続け、家に着いて緊張が切れたために反応が出ている可能性があります。
家で荒れることだけを見るのではなく、その前にどれほど我慢していたかを考えることが必要です。
問題は「ASDの特性」だけではなく、特性と環境の組み合わせ
予定を具体的に知りたい、刺激を強く感じる、曖昧な指示が分かりにくい、一人で落ち着く時間が必要。
予定変更が多い、音や人が多い、全員同じ指示で動く、集団参加を求められる。
この組み合わせによって負担が大きくなることがあります。
行き渋りが見られると、「少しずつ慣れさせよう」「本人が頑張るしかない」と考えがちです。
しかし、本人の努力を増やす前に、環境を調整できないかを考える必要があります。
学校に相談できる環境調整
- 新学期の予定や教室の写真を事前に共有する
- 一日の流れを文字や図で示す
- 指示を短く、具体的に伝える
- 予定変更を早めに伝え、変更後の流れも示す
- イヤーマフや静かな席など、刺激を減らす方法を検討する
- 休み時間に一人で落ち着ける場所を用意する
- 遅刻、早退、別室、参加する授業を調整する
- 宿題の量や提出方法を本人に合わせる
今の学校環境が合っているかを見る6つの質問
次の質問に「いいえ」が多い場合、本人の努力不足ではなく、環境とのミスマッチが大きい可能性があります。
一日の予定や変更を、本人が分かる方法で確認できるか
音や人の多さから離れて休める場所があるか
曖昧な指示ではなく、具体的な説明を受けられるか
好きなことや得意なことを発揮できる場面があるか
困ったときに安心して相談できる大人がいるか
毎日無理を重ねなくても続けられる参加方法があるか
学校で配慮を受けることで通いやすくなる子もいます。
一方で、学校の規模、時間割、集団の大きさなど、部分的な配慮だけでは変えにくい環境もあります。
学校以外の環境で、できることが見えてくる場合もある
学校に行けない状態が続くと、「何もできなくなった」と感じるかもしれません。
しかし、場所や参加方法が変わると、できることが見えてくる子がいます。
自宅からなら朝の授業に参加できる。カメラをOFFにすれば先生の話を聞ける。好きなゲームやプログラミングの話なら、自分からチャットを送れる。少人数なら作品を発表できる。
これは、学校でできなかったことが本人の能力不足ではなく、環境との組み合わせによって難しくなっていた可能性を示しています。
NIJINアカデミーで大切にしていること
NIJINアカデミーは、不登校や発達障害など、公立学校の環境に合いにくい小・中学生のためのオルタナティブスクールです。
オンラインで自宅から参加でき、最初から一日中参加する必要はありません。
カメラやマイクをOFFにし、授業の雰囲気を確認できます。
興味のある授業や活動から、少しずつ参加できます。
話すことが難しいときは、チャットで気持ちや考えを伝えられます。
ゲーム、プログラミング、創作などから新しい挑戦へ広げます。
ASDのある子すべてにオンライン環境が合うとは限りません。
しかし、移動や教室の感覚刺激を減らし、予定を画面で確認し、自分に合う距離で人と関われることが、安心につながる子もいます。
「学校では参加できなかったから、どこでも難しい」と決める前に、環境を変えたときの子どもの姿を見てみましょう。
まとめ|「この子に何が足りないか」ではなく「環境に何が必要か」を考える
- ASDの子は、予測しにくい新学期に負担を感じることがある
- 感覚刺激、曖昧な指示、休み時間の人間関係も疲れにつながる
- 行き渋りをASDの特性だけの問題にしない
- 学校環境とのミスマッチを確認し、必要な配慮を相談する
- 学校以外の環境で力を発揮できる可能性もある
ASDの子が夏休み明けをつらく感じる背景には、予定変更への不安、感覚刺激、曖昧な指示、複雑な人間関係などがあります。
ただし、問題をASDの特性だけに求めてはいけません。特性と学校環境がかみ合っているかを確認する必要があります。
「新学期に行けるだろうか」ではなく、
「どの環境なら、この子は安心して力を発揮できるだろう」
この問いから、学校での配慮や新しい学び場を考えてみてください。
環境を変えたときのお子さまの姿を見てみませんか?
NIJINアカデミーでは、自宅から参加できるオンラインの説明会・体験を行っています。
カメラOFF、見るだけ、好きな授業だけなど、お子さまに合う参加方法から始められます。
NIJINアカデミーについて見るNIJINアカデミーをもっと知りたい
※ASDの特性や必要な支援は一人ひとり異なります。強い不安、睡眠や食事の大きな変化、継続する身体症状などがある場合は、学校、発達支援機関、医療機関などへご相談ください。

