開校から2年半が経ち、NIJINアカデミーに通う小中学生の子どもたちは、累計700人を超えました。家からでも質の高い学びを受けられる環境をつくりたくて、メタバース校舎から始まったNIJINアカデミーの学びの場は、日々広がり続けています。
最近では、学びの場は学校や地域を飛び越え、社会全体へと広がっています。今回ご紹介するのは、「AI学習アプリを作りたい」と言っていた一人の男の子が、ついに本物の企業と手を組み、自分のアイディアを“動くアプリ”にまでたどり着いた物語です。
目次
1. アプリを作りたい! ―アイディアが、本物のプロジェクトになった
NIJINアカデミー小学4年生のりゅうとさんは、企業とのコラボイベントで「言語化が苦手な子どもでも、簡単に使えるAI学習アプリを作りたい」という思いを企業の方々にプレゼンテーションしました。
プレゼンテーションの様子はこちらから↓
「アイディアを、本当に動くアプリにしたい」
その願いに応えてくれたのが、株式会社NTTドコモでした。子どもたちの“居場所”を広げる活動に取り組んでいるドコモと、りゅうとさんの「作りたい」という思いがつながり、企業と子どもが一緒にものをつくる「共創(きょうそう)」のプロジェクトが、本当に動き出したのです。
2. NTTドコモとの「共創」がはじまった
プロジェクトを伴走してくださったのは、NTTドコモ コンシューマーサービスカンパニー 第一プロダクトデザイン部で「こどもの居場所開拓アンバサダー」を務める後藤真志さん。
ドコモは「ドコモ未来プロジェクト」として、子どもたちの居場所に出向き、デジタルアートやプログラミングロボット、タブレットでのXR体験会など、ワクワクする学びの機会を届けています。2025年12月時点で、その体験会は全国31か所・のべ約1,300名にまで広がっているそうです。NIJINアカデミーとの出会いも、そんな活動の延長線上にありました。
開発は、週に2回のオンラインミーティングで進みました。りゅうとさんがアイディアを出し、後藤さんをはじめとするドコモのみなさんがフィードバックを返す。子どもと大人が、立場を超えて一つの画面を囲み、「ここはこうしたい」「それなら、こうしてみようか」と言葉を交わしていく。
子どもが“お客さん”ではなく、開発の中心にいる。それが、このプロジェクトのいちばん大切なところだったと思います。

3. りゅうとさんが描いたアプリ「灯(トモリ)」
こうして形になったのが、AI学習アプリ 「灯(トモリ)」 です。
キャッチコピーは「写真からはじまる、考える冒険」。
トモリは、AIを“使いこなす練習”のためのアプリではありません。子どもの「考える力」を引き出すためのアプリです。りゅうとさんと後藤さんが何度も話し合ってたどり着いたのは、こんな考え方でした。
AI時代に必要なのは、答えではなく「問い」。
使い方はとてもシンプルです。
- 写真を撮る ―気になったもの、面白いと感じたものを撮るだけ
- AIが問いを出す ―「これは何か?」ではなく、「どう見える?」と問いかけてくれる
- 正解はない ―答えると、次の問いが変わっていく
- AIがフィードバック ―答えに対して感想を返し、ちょっとした雑学も教えてくれる
写真を撮るとき、人はすでに何かを感じています。「気になる」「ちょっと変だ」「面白い」。その小さな感情から、思考は静かに動き出す。トモリは、その入口にそっと火を灯すアプリなのです。
りゅうとさんがこだわったのは、「誰でも使えること」でした。
うまく書けなくてもいい。すらすら読めなくてもいい。話す言葉が違ってもいい。音声入力や読み上げ、多言語にも対応し、それでも「考えられる」ことを大事にしています。さらに、その子のタイプ(想像が得意な子、よく観察する子、慎重な子)に合わせて問いの出し方が変わり、ニックネームは毎回変わる匿名のしくみで、安心して本音を出せるように設計されています。
「言葉で的確に指示を出せない子は、AIを使えないんじゃないか」――かつてりゅうとさんが抱いた問題意識が、ここにしっかりと息づいています。

4. EDIX東京、企業と肩を並べて登壇
そして2026年5月、東京ビッグサイトで開催された日本最大級の教育の展示会 「EDIX東京(教育総合展)」。全国から2万6千人を超える教育関係者が集まるこの場所で、りゅうとさんはNTTドコモと一緒に、自分たちでつくったトモリのデモを発表しました。

ブースでは、来場した方々がQRコードを読み取り、その場でトモリを体験。写真を撮り、AIから出される“問い”に向き合い、自分だけの「考える冒険」に挑む――。小学4年生が思い描いた世界が、大人たちの手の中で実際に動いている光景が、そこにはありました。
たくさんの大人に囲まれながら、企業の人と肩を並べてプロジェクトを語るりゅうとさん。1年半前の彼を知る私には、その姿が信じられないほど頼もしく見えました。
5. 好きなことが、子どもの世界を広げていく
りゅうとさんは今、小学4年生。小学2年生のころから学校には通っていません。好きなものは、ドラゴンボールや呪術廻戦、マインクラフト。最近は動画編集やトリッキング、体力づくりにも夢中です。
「考えたことを、形にできるのが楽しい。」
シャイで、声を聞くことも顔を見ることもほとんどなかったあの子が、好きなことを入口に少しずつ自信を取り戻し、ついには企業と“共創”し、日本最大級の舞台に立ちました。
子どもたちに必要なのは、自信です。自己肯定感の回復です。ゲームでもアニメでもイラストでも、好きなこと・やりたいことなら、子どもは驚くほど頑張れる。その小さな一歩が、人生を大きく変えるきっかけになっていく。りゅうとさんとトモリの物語は、それをまっすぐに教えてくれました。
トモリは、これからどこへ広がっていくのか。学校や自治体で、あるいは多くの人の手元で、本当に「学び」として受け入れられるのか。誰かの役に立つことができるのか。その答えは、これから実際の現場で確かめられていきます。
NIJINアカデミーは、企業のみなさんと手を取り合いながら、子どもたちの「やってみたい」を社会へとつなげていきます。りゅうとさんの挑戦を、そしてトモリの灯が広がっていく未来を、これからも見守っていきます。


