EDIX東京2026にて、知立市教育委員会とNIJINアカデミーは、不登校支援における新たな取り組みについて発表を行いました。
テーマは、「メタバースを活用した学びと居場所づくり」。
知立市教育委員会 前田健太さんとともに、実際に参加しているご家庭へのインタビューをもとに、“学校復帰だけではない支援”の形について共有しました。

今、自治体が向き合っている課題
知立市でも、不登校児童生徒数の増加は大きな課題となっています。
しかし前田さんは、
「学校復帰だけでは解決しない課題がある」
と語ります。

人とのつながりの難しさ。
学びの選択肢不足。
そして、“安心して居られる場所”がないこと。
知立市として特に大事にしたかったのは、
「学校全欠席に近い子にも、誰かとつながってうれしい、認められてうれしいと感じてほしい」
ということでした。
NIJINアカデミーとの出会い
知立市とNIJINアカデミーのご縁は、ある一人の子どもから始まりました。
知立市の児童がNIJINアカデミーへ通っており、メタバースでの学習活動を出席認定したことがきっかけでした。以前からNIJINアカデミーの取り組みを知っていた前田さんは、
「子どもたちに丁寧に向き合っている印象がありました」
と振り返ります。
そこから、知立市として「学校に行けない子にも、つながれる場所を作れないか」という検討が始まりました。
なぜ“メタバース”だったのか
メタバース空間には、リアルの教室とは違う入りやすさがあります。
- 顔を出さなくてもいい
- 声を出さなくてもいい
- 自分のペースで入室できる
それでも、
- チャットで参加できる
- アバターで交流できる
- 全国の子どもたちと出会える
「誰かとつながる」ことができる場所です。

知立市では、専用フロア「知立市クラス」を設置。担任スタッフも配置し、
- 朝の会
- 帰りの会
- 学習時間
- ホーム体育
- ホームチーム活動
などを実施しています。
さらに、全国の子どもたちと合同で交流できる時間もあり、地域を越えたつながりも生まれています。
「可能性にかけたい」という想い
前田さんが大切にしていたのは、“管理”よりも“可能性”でした。不登校支援では、地域ごと・学校ごとに閉じた環境になりやすく、「外部との交流は慎重に」という考え方も少なくありません。
しかし前田さんは、
「他の子と混ざることで起こるリスクよりも、出会いによって生まれる可能性にかけたい」
と考えていました。
特に、地域が狭いほど、「学校での自分」「地域での自分」というイメージが固定され、本来の自分を出しづらくなってしまう子もいます。だからこそ、メタバースで全国の子どもたちとつながることに意味がありました。
年齢も地域も違う仲間と出会う中で、
- 「こんな子もいるんだ」
- 「このままの自分でいいんだ」
- 「話してみたら楽しかった」
そんな小さな経験が積み重なっていきます。
“学校に戻す”ことだけではなく、“自分に合う人と出会えること”。
前田さんは、その可能性を信じて、知立市として新しい一歩を踏み出しました。
「続かなかったらどうしよう」
EDIXでは、実際に参加している「ひかりんさん」とお母さんのインタビュー映像も紹介されました。最初、お母さんは不安も大きかったと話します。

「週3日の参加が負担になって続かないんじゃないかな」
さらに、民間のオンライン支援は費用面のハードルも高く、
「個人で参加しようと思うと、選択肢から外さないといけなくなる」
そんな中で知立市の取り組みが始まり、
「取り残されてないなって感じられました」
と話してくださいました。

月1回しか登校できなかった日々
参加前は、学校へ行けても月に1回ほど。給食を目当てに登校しても、途中で涙が出てしまい、そのまま帰宅することもありました。
「今後どうサポートしていこうか考え直さないといけないと思っていた時に、このお話をいただきました」
実は、しんどさは幼稚園の頃から続いていたそうです。だからこそ、小さな変化が何より嬉しかったと語ります。
初めて“声”を出した日
2025年10月から参加をスタート。最初は顔出しも難しく、リアクションだけの参加でした。
それでも少しずつ、メタバース空間で人と関わる時間が増えていきました。
そして2026年4月。クラスメンバーの前で、初めてマイクをオンにして声を出しました。

「本当にびっくりしました…!」
とお母さん。その小さな一歩は、家族にとって大きな変化でした。
“オンライン”からリアルへ
メタバースでのつながりは、リアルの一歩にもつながっています。
- 始業式に参加できた
- 給食を食べに行く回数が増えた
- 折り紙クラブにも参加できた
- 遠足や社会科見学にも参加できた
昨年の担任の先生からも、
「以前はお母さんの後ろに隠れていることが多かったけれど、話す機会が増えて前向きになった」
という声が届いています。

さらに、子どもたち自身から、
「知立市のみんなと会いたい!」
という声が上がり、リアルクラス会議「遠足」を企画。遠足のしおりも一緒に作成しました。
当日は、何年も学校行事に参加できていなかった子も参加。
“安心できるつながり”が、リアルの一歩につながっています。
「必ず居場所はある」
インタビューの最後、お母さんはこう語ってくださいました。
「毎日が本当にスモールステップ。でも、必ず居場所はあると思います」
学校に戻ることだけがゴールではない。
子どもが「つながれた」「認められた」と感じられること。
知立市とNIJINアカデミーは、これからも子どもたち一人ひとりに合った学びと居場所を、社会とともにつくっていきます。


